表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/464

6 黒の国25-5

 95階層

 最後の休息部屋と書かれている

 ここでゆっくり休めるみたい

 食べても食べてもなくならない料理やおやつ、ちょっとしたゲームのできる遊び場、ふかふかのベッドが人数分、水洗トイレも完備されてて至れり尽くせり

 結構広くて使用人と思われるお姉さんたちまでいる

 彼女たちはマッサージや身の回りの世話をしてくれるみたい

 クノエちゃんなんかトイレに行こうとしたらお姉さんの一人がついてきて拭いてくれようとしていた

 必死で止めて何とか恥ずかしい事態は避けれたけど、それを除けば非常に快適な空間だった

 ちなみに何度も言うけど僕ら精霊は排泄しません。 一昔前のアイドルを地で行けます


「さて、十分な休息も取れたし、次の階層へ行こう。 もう少しで攻略できる。 みんなで力を合わせて絶対クリアしよう!」


 一斉に気合を入れて気を引き締め、次なる階層へと階段を昇った


 96階層

 白と黒の部屋

 そこにいるのはクロハ姫とハクラちゃん!?

 でも、前階層で会ったハクラちゃんやこの世界のハクラちゃんと雰囲気が全然違う

 なんというか大人っぽくて、いつもニコニコしているこの世界のハクラちゃんとは似ているようで似てない


「私はクロハ童子」


「その妹、ハクラ童子じゃ」


 ハクラ童子の話し方、古風なお姫様みたいだ

 それにしても、童子? 何だろうそれ


「聞いたことがあります。 鬼人はごくまれに童子と言う存在にランクアップする個体がいるのだとか、この世界で有名だったのはシュテン、イバラキ、ホシグマなどですね。 いずれもすでに亡くなっていますが、鬼ヶ島に名前が残っていたはずです」


 テュネがそう教えてくれた。 今度行ったときにでも見てみよう

 それにしても、別世界のクロハ童子やハクラ童子が成れてるってことは、この世界のハクラちゃんも成れる可能性があるんじゃないかな?


「我ら姉妹を超えて先に進んで見せなさい」


 うん、クロハ童子の方の性格はこの世界のクロハ姫と同じみたいだ

 ハクラ童子を守るように前に出てる

 姉妹は刀を抜いた


「黒刀、八咫」

「白刀、因幡」


 使ってる刀は違うね。 でも神力を感じるってことは神刀なのかな?


「始めに私たちの刀の能力を言っておきます」


 え? なんでだろう?


「そうしなければわらわたちの方があまりにも有利じゃからな」


 なるほど、つまり明かしても問題ないほど強いってことなのかな?


「八咫は疑似太陽を出現させることができます。 そのまま太陽をぶつけて攻撃させることもできますが、空中にとどめて相手の体力をじわじわと削ぐこともできます」


「わらわの愛刀因幡の能力は数えじゃ。 数を数えながら振れば振るほどより速く、重く、鋭くなる。 百を超えれば神速じゃ」


 ふむふむ、確かに太陽なんて出されれば防ぎようがないかも

 それに神速の剣技、こっちもかなり厄介そうだ


「では、参ります」


「鬼式剣術、黒乱の舞い」

「鬼式剣術、白静の舞い」


 クロハ童子は激しく、ハクラ童子は穏やかに剣舞を繰り出す

 対するこちらはクノエちゃんとテュネだ

 

「攻撃の奏、激情のロンド」


「九尾式剣術、五行行脚(ごぎょうあんぎゃ)


 テュネは激しい剣による舞いを、クノエちゃんは五つのエレメントによる剣術をそれぞれ繰り出した

 クロハ童子の剣舞はテュネの舞いと打ち合い、火花が散る

 ハクラ童子とクノエちゃんの打ち合いは若干クノエちゃんが押しているように見える。 でもハクラ童子は余裕の笑みを浮かべている


「八咫鏡」

「因幡の白兎」


 童子姉妹が刀の能力を解放したみたいだ。 あれ? さっき言ってた能力と違うんだけど

 八咫鏡はクロハ童子が刀で円を描き、そこから出現したキラキラと輝く鏡で、相手であるテュネを移している

 ハクラ童子の因幡の白兎は、複数の兎を出現させている


「ただの鏡で何ができるというのですか?」


 テュネは構わず鏡を割ろうと剣を振るったが、その攻撃がそのままテュネに反射した

 一方のクノエちゃんはというと


「う、兎!? こんなかわいいの切れるわけないじゃない!」


 クノエちゃんの方はピョコピョコと跳ねる兎たちを躱しながら苦戦しているみたい


「反射、ですか。 なら鏡を避ければいいだけのこと!」


 鏡に攻撃が当たらないよう立ち回るけど、自在に動く鏡はすぐにテュネの前へとかざされる


「ちょっと! 兎を盾にするなんて卑怯よ!」


 よく見ようよクノエちゃん、その兎、幻だよ

 よく見ると兎たち、ハクラ童子やテュネたちの足をすり抜けてるんだよね


「クノエちゃん! その兎、幻だから!」


「え?」


 クノエちゃんは刀で兎の一匹をつんつんとつつく


「もう! 本物かと思ったじゃない!」


 プリプリ怒りながらハクラ童子への攻撃を再開した


「かかりおったなうつけめ!」


 ハクラ童子が刀をカチンと弾くと、兎たちが一斉にクノエちゃんへととびかかった


「幻で翻弄しようっての? そんなの分かってればどうってこと、ぐぅ!」


 クノエちゃんが兎たちに蹴り上げられた

 幻じゃないの!?


「この兎たちは確かに幻じゃ。 しかしな、相手に攻撃するときだけ実体を持つのじゃよ」


 何その反則能力。 クノエちゃん圧倒的に不利じゃない


「攻撃時に実体化、それなら!」


 クノエちゃんは兎たちがまた蹴りを入れようと迫った瞬間、刀のミネで叩き落とした


「攻撃する瞬間に叩けばいいってことよね? みねうちだから死んでないわよ」


 確かに、兎たちは目をまわして倒れてるだけみたい


「ほぉ、白兎をすべて倒すとは、なかなかにやりおる。 じゃが、わらわは既に百振りを終えたぞ」


 と言うことは、今ハクラ姫は…。 神速の剣技を使えるようになってるってこと?


「関係ない! 倒して見せるわ!」


 僕らでも目で追えないほどの動きでクノエちゃんに剣技を放つハクラ童子

 それなのに、クノエちゃんはその動きに反応していた

 ん? 目が、まるで猛獣のように光ってる


「九尾流体術奥義、神獣化」


 なるほど、神の力には神の力ってわけか

 神獣化によってクノエちゃんの動きはハクラ童子にも引けを取らないほど速く、力強くなっていた


「なんじゃと! これに対応しきりおったか!」


 それだけじゃない。 どうやらクノエちゃんの方が速いみたい

 ハクラ童子が押され始め、やがてクノエちゃんの刀がクリーンヒットして倒れた


「ハクラ!」


 クロハ童子が駆け寄る

 戦闘不能になったハクラ童子は嬉しそうだ


「姉上、この者、もっと強くなりますよ。 将来が楽しみなほどにです」


「なら、今のうちに潰しておきましょう」


 うわっ、怖っ! ものすごく怒ってるよクロハ童子


「解放、八咫烏召喚」


 刀を天にかざすと、そこから三本足の烏、八咫烏が飛び出した

 そして八咫烏がその足に持っていたもの、それは先ほど言っていた疑似太陽だった


「燃やしつくしてあげるわ」


 八咫烏はテュネとクノエちゃんに迫り、二人の体力をじわじわと奪っていく


「くっ、これは、何という熱量…。 普段の私でも受けきれるか…。」


 本当に太陽だよこれ、僕らもじりじりと体力が減っていってる


「氷結式、永久凍牙!」


 クノエちゃんの剣技が八咫烏を攻撃するけど、ひらりとかわされてしまった


「無駄よ。 おとなしく焼き尽くされなさい」


 さらに熱量が増す

 僕は全体に回復魔法をかけ続けてるけど追いつかない。 このままだと魔力がなくなって終わり

 ポチちゃんを召喚してもこの熱に耐えれそうにないし、ゴーレムたちもすぐに壊されてしまうだろう

 大いなる水も見た感じすぐに蒸発しちゃいそうだし、これまで手に入れたアイテムじゃ対抗できそうにない

 でも、クロハ童子の八咫烏による太陽は本来の太陽ほどの熱量はない


「流水の奏、激流のアッチェランド」


 これによってあっさりと決着がついた

 たゆたう水がテュネのハープから吹き出す

 それが太陽へ降り注ぎ、強大な爆発を吹き起こした

 その爆発に巻き込まれ、クロハ童子、クノエちゃん、テュネは戦闘不能となってしまった


「くっ、まさか自滅覚悟でそのような戦法を取るとは、うかつでした」


 クロハ童子は悔しそう


「姉上、また二人で強く、なりましょうぞ」


 童子姉妹はうなずきあい、僕らの健闘をたたえた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ