6 黒の国25‐4後編
双子の内のカルマは双剣を、レキィは杖を構える
カルマが走り、プラティウスの木刀と打ち合った
木刀はまるで金属のように硬く、双剣による刃の攻撃にも傷一つついていなかった
「うそだろ、それ本当に木なのかよ」
「あぁ、我の国で取れた世界樹の破片から作られたレジェンドクラスの刀だ。 そこいらの剣では傷一つつかないぞ」
「レジェンド…。 僕の双剣デイライト、サンセットと同じレアリティか」
武器のレアリティ、そのレア度に応じて効果や性能が全く違うらしい
種類はノーマル、レア、ハイレア、ロード、伝説、幻想、神話、滅亡などがあるらしい
まぁ世界によって違うらしいけどね
この世界での最強と呼ばれる武器のレアリティは滅亡級で、一振りすれば世界が終わると言われている
実はこう言った武器は神様よりもさらに上位の存在、大神様が持っているらしい
母さんも見たことがないって言ってたっけ
「じゃ、あたしたちも戦いましょう」
レキィさんは杖をアスラムに向ける
「ええ、リディエラ様が見ている中で、恥ずかしい戦いはできません!」
アスラムは武器用にカスタマイズされた大槌を肩に負う
「スターライトレイ!」
レキィさんが先に仕掛けた
空から降り注ぐ光のレーザーがアスラムを襲う。 それを優雅に避け、レキィさんとの間合いを詰める
「アースインパクト!」
槌を振り下ろすと部屋全体が大きく揺れた
「うわわ」
僕を含め、何人かが尻もちをつく
レキィさんも倒れたけど、カルマさんはしっかりと大地を踏みしめた立ってる
「いたたた、お尻打っちゃった」
まだ揺れが続き、立てずにいるレキィさんに槌を振り下ろすアスラム
「ヤバ!」
レキィさんに直撃したかに見えたけど、間一髪でカルマさんが受け止めた
「サンセットスマッシュ!」
カッと光る双剣に目がくらみ、まともに攻撃を受けてしまった
「くっ、やりますね」
「だてに勇者の称号を持ってたわけじゃないからね」
この二人、魔人になる前は勇者だったらしい。 なるほど、この強さも納得だ
「カルマ、少し抑えてて!」
「オッケーレキィ、任せろ!」
立て直したアスラムと打ち合うカルマさん。 その間にプラティウスさんがレキィさんに迫ろうとするけどカルマさんがそれをさせない
「よし溜まった! いくよカルマ! セイントフォース!」
天を覆いつくす眩しい光
視界全体が真っ白になって何も見えない
やがて目が慣れ、四人の姿が見えてきたときにはプラティウスさんが倒れて戦闘不能になっていた
「申し訳ありません、主上…」
「いえ、あなたはよく頑張ってくれました。 ゆっくり休んでください」
アスラムはどうやら無傷みたい。 それにしてもなんて強力な魔法なんだろう
一歩間違えればこのフロアが吹き飛んでたよ
「あら、あれを回避するなんてどんな反射神経してるのよ」
レキィさん、悔しそう
「精霊は目がいいの。 ここからは私の本気をお見せしますね」
アスラムの目、怖い。 ちょっと怒ってるみたいだ
「ガルガンチュア」
手を地面に付けると、巨大なゴーレムが立ちあがる
「マッドグニアス」
ガルガンチュアの横にもう一体巨大なゴーレムが立ち並んだ
「「げっ」」
二人同時に変な叫び声をあげてる
「メテオフィスト!」
二体のゴーレムによるガトリングのような拳が降り注ぎ、土煙が収まった後、双子はガニ股で倒れていた
「うーくそっ! 僕らが負けるなんてぇ!」
「悔しいわねカルマ…。 また鍛えなおしましょ!」
「そうだねレキィ」
仲の良い兄妹だね
「いよいよ今度こそ私の番ってわけね!」
黒い少女が前に出た
「あたしはレベルが違うわよ! なんてったってリーダーだからね!」
「はいはい、代理のね」
「代理でもリーダーだもん! 強いもん!」
代理? どういうことだろう?
「あたしたち、もともと九魔人なのよ。 本当のリーダーは今ここにはいないわ」
なるほど、だから代理なのか
「さぁ無駄話はここまでよ! あたしは黒のアクニス! 八魔人最強と名高い漆黒の魔人よ!」
なんというか、この子、少しお馬鹿なんじゃないかと思った
決めポーズが、その、なんというか、馬鹿っぽい
「何よその目は! あ! 私のこと馬鹿にしてるんでしょ! そうなんでしょ!」
あ、それは分かるのか
「やっぱりぃいい! もう怒った! 最初っからクライマックスで行かせてもらうわよ!」
アクニスちゃんの全身に魔力が行き渡るのが分かる。 いや、それだけじゃない。 これは、神力?
神様から感じる力をアクニスちゃんからも感じた
「ゴッドバースト!」
何この力…。 まるで本当に、神様みたいな…。
「今更ビビッても遅いのよ! 最強であるあたしがあなたたちを終わらせたげるわ!」
これはまずい、全員で行っても勝てるか分からないな
「大丈夫ですリディエラ様、力を合わせれば壊せない壁なんてありませんよ!」
テュネの言うとおりだ。 僕には信頼できる仲間がいる
きっと、勝てる!
「みんな! 行くよ!」
「「はい!」」
アクニスちゃんがゆっくりと歩み始める。 歩いているだけ、それなのに姿が揺らぎ、まるで実態がつかめない
それに、どう見ても歩いているのにその速さが異常だ
目の前にまで迫ったかと思えば後ろにいたり、横を通り抜けたり
「じゃ、攻撃させてもらうわね」
アクニスちゃんが手を前につきだし、デコピンをした
パーンと良い音が響き、それと同時に衝撃が僕らを襲った
「うぐ、威力が、桁外れだ」
「脚撃! 飛翔鷹!」
エンシュの蹴りがまともにアクニスちゃんの腹部にめり込んだ
いや、今蹴ったのは…。 壁?
「な、に…」
エンシュの蹴りは壁にめり込んでおり、アクニスちゃんの姿は掻き消えていた
「エンシェント~、ヘルフレア~」
フーレンがアクニスちゃんの姿を捕らえ、魔法をぶつける
しかしこれも不発に終わった
「あれ~? 消えました~」
「無駄無駄。 あたしってば最強すぎて攻撃しなくても勝てそうじゃない」
攻撃しなきゃ勝てない気がするけどどうやら僕らを嘗めてかかってくれてるみたい
そこが攻撃のねらい目だ
「インパクトロック!」
「火炎式、鳳凰の風!」
テュネとクノエちゃんによる同時攻撃
これは少しかすったみたいだ
「おっと、危ない危ない。 でも私に攻撃をかすらせるなんてやるじゃない!」
いまだ!
「ホーリーウォール!」
僕は小さめの結界でアクニスちゃんを閉じ込めた
「んえ!? 閉じ込められたじゃない!」
その結界の上からエンシュに抱えられ飛び上がったアスラムとフーレン
「ガイアフォール!」
「ハルマゲドン!」
二人の最大魔法がアクニスちゃんに向かって落ちる
「ちょちょちょちょっと待ってよ! こんなのずるいわよ!」
慌てるアクニスちゃん。 でももう遅い
二人の魔法が思いっきりアクニスちゃんに直撃した
「ぐぇえええ!!」
効いてて恥ずかしくなるような悲鳴が聞こえ、ボロボロになったアクニスちゃんが出来上がった
「う、ぐ、やるじゃない。 私をここまで追い詰めたのはあんたたちで二人目よ!」
ガバッと起き上がると、こちらにビシッと指を向けた
そのアクニスちゃんの姿が揺らぎ、消えた
「え!?」
驚いていると、僕以外の仲間が倒れ、いきなり戦闘不能になっていた
「あとはあんただけね」
アクニスちゃんは戦闘不能に近く、真っ赤になっている
「あたし、追い込まれるとさらに強くなるの」
僕は杖を振って攻撃したけど、あっさり避けられた
あと一撃、後一撃だけでも与えられれば倒せる、のに
「無駄よ無駄無駄、あんたの攻撃、止まって見えるくらい鈍いんだもん」
「そう? でも僕にだって奥の手はあるんだよ?」
僕の奥の手、これは一回しかできない
でも今がその使い時だ
「神の威光」
「な!」
僕の体に光の衣が巻き付く
アクニスちゃんはその光に目がくらんだ
「終わりだよ!」
速い、自分でもアクニスちゃんより圧倒的に速く動けるのが分かった
「く、目が…。」
「てい!」
最後の攻撃は杖でコツンと頭を叩くだけの弱いものとなった
「あふん…。 あたし、負けちゃったのね」
悔しいというよりもすがすがしい顔をしているアクニスちゃん
「いいわ、先に進みなさいな。 言っとくけど、最後に待ち構えるのはあたしたちのリーダーよ。 とんでもなく強いんだから覚悟しなさいよね!」
八魔人を無事倒し、次の階層へ進んだ
長くなってすいません




