6 黒の国25‐4中編
「僕は紫のアトロン、こっちは神獣シームルグさ」
嘶くシームルグ
つぶらな瞳が意外とかわいい
「さぁシームルグ、戦っておいで」
アトロン君がシームルグを一撫ですると、シームルグが強化されたのが分かった
すごい速さで空を飛ぶシームルグ
その全力の突進をフーレンは受け止めた
あれ? フーレンってこんなに強かったっけ?
「え~い」
軽々とシームルグを投げ飛ばした
「シーくん!」
アトロンがシームルグの傍らに寄り添う
ダメージはあまり受けていないみたいだね
「よし、シーくん、行けるね?」
「クルルルルルル」
あ、だめだ、すごく可愛い
鳴き声が可愛すぎる
モフモフしたい
「大魔法、ブラックアウト~」
何やら小さくて黒い丸いものがフーレンの杖から放たれた
その動きは鈍く、当たっても大したことがないように見えた
「なにこれ? ハハ、シーくん、蹴散らそう!」
シームルグが黒丸に突進していく
それが当たった瞬間、黒丸が一気に膨れ上がってシームルグを包んだ
「シーくん!」
包まれたシームルグはそのまま出ることができず、やがて力尽きた
「シーくん、ありがとう、よく頑張ったね」
アトロンはシームルグを撫でて介抱する
「シーくんが負けちゃうとはね。 僕の負けだよ」
紫のアトロンはどうやらシームルグに力を与えるのが力だったらしい
「次はわたくしですわね」
黄色いローブを着た黄髪の背の高い女性
髪はカールがかけられており、まるで異国のお姫様みたいだ
「わたくしは黄の魔人ディアンナですわ。 お手柔らかにお願いしますわね」
「では次は私が。 リディエラ様、見ていてくださいね!」
エンシュは張り切っているみたいだ
「わたくし、暴力は嫌いなのですが、フロアを守護する者としては仕方ありませんね」
ディアンナさんは優雅に歩く
手を前にかざすと何やら空間が開いた
「ディメンジョンウォーク」
その中に入ると姿が消えてしまった
「一体どこに?」
エンシュがキョロキョロと探すけど本当にこの世界から消えたかのように気配すらない
「ディメンジョンカット」
急に声がしてエンシュの背中に向かって腕が伸び、ナイフがつきたてられた
間一髪で避けるエンシュ
「危ないですね。 それにしても気配が全くないとはどういった」
言葉の途中でまた切り付けられそうになる
「ディメンジョンシュート」
今度は様々な方向から魔弾が飛んで来る
これは厄介そう
エンシュには対抗手段が蹴りしかない
いくつかは撃ち落としたけど、落としきれなかったいくつかが直撃した
「クッ、どうやって対抗すれば…」
腕がまた後ろから伸びてきた
「そこだ!」
エンシュは腕をつかむ
「何ですの!?」
空間から引きずり出されたディアンナさんはそのままエンシュの一撃をまともに受けて倒れた
「うー、わたくし接近戦は苦手ですのに」
戦闘不能になったけど元気そうだ
「もう、ディアンナさんまでやられちゃうなんてー!」
黒い少女がプリプリ怒ってる
「ごめんね、アクニスちゃん」
「じゃぁ次は、ラフィナのばん」
今度はちっちゃな女の子、僕と同じくらいかな?
その手足は桜色の甲殻に覆われている
髪は左右に結ったツインテールで桜色
恰好は子供用の寝間着?
ボロボロのぬいぐるみを抱っこしてる姿がなんだか愛らしい
「ね~、誰かこの子を預かっておいてくれる?」
ラフィナちゃんがぬいぐるみをシュウエンさんに預けた
大丈夫? 燃えない?
「じゃ、本気で行くね」
ラフィナちゃんがぴょーんとジャンプして着地すると、地面から大量のスケルトンとゾンビが湧きだした
さらに空中には大量のレイス
まるでレイスプリンセスのエルナリア姫みたい
でも能力的には明らかにこっちの方が上っぽい
「ラフィナ、頑張るね!」
大量のアンデッドが動き、ひしめき合いながらこちらに向かってきた
「ここは僕が行くよ!」
僕はいきなり浄化用最大呪文を解き放った
「ホーリーランド」
一気に殲滅されるアンデッドたち
これにはラフィナちゃんもかなり驚いてた
「う、うぅ、そんなのできるなんて聞いてないよ~」
泣きじゃくりながら次のアンデッドを召喚している
今度のアンデッドは大きい。 まるで巨人のようだ
「うっうう、頑張って、ね」
アンデッドたちに声をかけると張り切ってこっちに走って来た
「ホワイトブレイド」
僕は光の剣を作り出した
僕だって戦えるってことを見せなきゃね
「聖なる盾!」
今度は小さな結界を空中に出現させて足場にした
そこを駆けて大型アンデッドの合間を縫って光の剣で斬りつけていく
アンデッドに効果のある剣だから大型アンデッドは段々と弱っていき、倒れた
「ふぇえん、また倒されちゃいましたぁああ」
泣きじゃくってる
今度は時間をかけてアンデッドを呼んでるみたい
「こ、今度こそ! 大怪人、コトキレノシニクニヌシ!」
グズグズに腐った体に長い髪、カタカタと不気味に動く体とあらぬ方向へ向いた頭
髪を振り乱して向かって来る姿は正直かなり怖いです
「アンデッドフィナーレ」
白い光がコトキレというアンデッドを包み込んだ
「げ、あのアンデッドって相当強いやつだったわよね?」
一瞬で灰になったコトキレヌシ
「あ、ああ、コトちゃんがぁああああ!!」
大泣きするラフィナちゃんはしょぼくれて七人の後ろに下がっていってしまった
「く、いよいよ私の番ってわけね」
黒い少女は身構えた
「まてまて、僕らを忘れてない?」
「そうそう、アクニスちゃんはリーダーなんだから最後だって」
「ごめん、忘れてた」
「「え? マジで?」」
双子のことを本当に忘れてたみたいだ
「まぁいいや。 僕は金のカルマ! 双子の魔人さ!」
「まっいっか。 私は銀のレキィ! 双子の魔人よ!」
金と銀に輝き始める双子
この二人、どこか懐かしい感じがする
「ここは私が行きます!」
アスラムが名乗りを上げた
そっか、アスラムなら人数の差を埋めれるもんね
前に出たアスラムは植物の戦士を召喚
それもかなり強力そうな戦士だ
意思があるようで、アスラムと会話を交わす
「主上、我を呼んでいただき光栄です」
「ええ、リディエラ様に勝利を捧げるため、精いっぱい頑張りなさい」
「はっ!」
植物戦士の名前はプラティウスと言うらしい
背中に硬そうな木で出来た武器をいくつか持っている
アスラム、プラティウスと双子との戦いが始まった




