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6 黒の国6

 サリーシアに着いた

 翼の白い人は本当に天使みたいだ

 鷹のように力強そうな翼の人もいる

 空に飛び上がったり降りて来たり、何人かで大きな荷物を空中運搬している姿も見受けられた


「この国の~街は~山をぐるりと囲むように広がってまして~。 さらに~山の頂上には翼人族の~祖神を祀る~神殿があるんですよ~」


 フーレンが珍しくまともなことを教えてくれた

 確かに山に沿うように街が形作られている

 山の頂上へと向かう道もいくつかあり、参拝者と思われる旅人や翼人族が昇っていた 

 ちなみにここの神殿、自らの足で登らなければならないというルールがあるので翼人族の人も翼をたたんで昇っている


「今日はここで宿をとりましょう。 先はまだ長いですので」


 クロハさんはそう言って宿を探してくれた

 彼女は旅慣れているのかな? やけに手際がいいね

 それにしてもここで宿をとれるのはありがたい。 ここに着くまでずっと野宿だったもんね

 

「ひとまずお食事にでも行ってきてください。 明日にはここを発ちますが、その前に少し会いたい人もいるので私はその要件を済ませてきます」


 なるほど、クロハさんは昔武者修行をしてたらしいし、この国にも来たことがあったのか

 話しを聞くに、会いたい人と言うのはこの山での修行中にお世話になった空中殺法の達人のところらしい

 空中殺法と聞くとプロレスを思い出すけど、どうやらそう言った派手な感じのものじゃなくて、 本当に宙に浮いて戦う技術らしい

 何それ見たい

 と言うわけで僕もついて行くことにした

 行くのはクロハ姫とハクラ姫、それに僕とエンシュだ

 テュネたちには先にご飯を食べてもらってあとで僕たちの分も買っておいてもらうことにした

 幸いテイクアウトのお店も多いのでその辺は任せておこう


「ついてこられましても特に大したことはありませんよ? あの人は変な人ですからご迷惑をおかけするかもしれませんし」


「変な人?」


「はい、その、何というか…。 頭のネジが2本ほど抜けてるような人でして…。」


 それはそれで逆に興味がわいてきた

 

 とった宿からしばらく歩いた町外れ

 そこにボロボロの、家と言うには小さすぎる小屋があった

 扉をたたくと、パコッと扉が外れてしまい、クロハさんが慌てた


「うわーーーん!! ドアがぁああ!!」


 中から小さな影が飛び出した

 見た目は翼人族なんだけど、背丈は僕より少し低いくらいで、どこからどう見ても小さな女の子だった


「オラの家を壊したのは誰よさ!」


 怒ってる姿は子供がむくれてるみたいですごく可愛い

 

「ま、いいや、ちょうど邪魔だと思ってたし」


 あれ? 今怒ってたはずなのに急に機嫌が直って今はニコニコしている


「オラに何か用かえ? あ、セールスならお断りするよさ。 まぁ付けてくれる物によっちゃ考えてやらんこともないし。 むしろ何かよこすといいし。 ほれ、よこせ」


 いきなりハクラ姫の荷物をあさり、中からクッキーを引っ張り出して食べ始めた


「あ! 私のおやつが…」


 あっという間にクッキーを食べ終わると、満足したのかやっとこっちの顔を見た


「なんじゃい、クロハか。 オラのとこに来たってことは、またオラの夜伽の相手をしてくれるってことだな?」


「ちょ、何を言ってるんですかメセロさん、変な冗談はやめてください」


 メセロと呼ばれた少女は今度は僕やハクラ姫を見る


「おお! 精霊様がいるじゃないさ! なになに? オラとイチャイチャしたい感じ?」


 何を言っているのか分からないけど相当ぶっ飛んだ人だ 

 ハクラ姫の顔も引きつっている


「そっちの白い子、いいねいいね。 クロハの妹だよね? じゃぁさっそく布団を用意し…」


 そう言いかけたところでクロハ姫の拳骨が炸裂した


「いい加減にふざけるのをやめてください!」


 すると、メセロさんは目に涙をいっぱいに溜めて鳴き始めた


「うわぁあああん! クロハがいじめたぁあああ!!」


 うぅ、何て激しい人なんだろう

 まるで嵐だ


 しばらく泣いてようやく泣き止んだ

 見た目通りの子供っぽい性格。 でも、彼女はすでに500歳を超えているそうだ

 彼女は翼人族の中でも長命な極楽鳥族らしく、この少女の姿ですでに大人だという

 これで…。 大人…

 

「で、そっちの精霊様はどうしたのさ?」


 僕とクラハ姫でこれまでのあらましを伝えた


「なるほどなるほど、黒族ねぇ。 聞いたことはあるよ。 でも最後の目撃例が数千年くらい前だし、オラもどこにいるかまでは知らんし」


 意外と真面目に答えてくれた

 さっきと全然雰囲気が違う。 やっぱりさっきはふざけてたんだ


「それで、その情報が妖怪族の国にあると思われ、私たちは向かっているのです」


 そういうエンシュの顔を見て、メセロは顔を真っ赤にした


「ちょっと、ちょっとちょっとちょっと! こっちの精霊様は、サラマンダー様!? うそうそうそ、めちゃくちゃタイプだし! ねぇねぇサラマンダー様、女の子に興味はない?」


「は?」


 エンシュが固まった。 というか僕らも固まった


「オラのお嫁さんにさ、なってくれない?」


 しばらく思考停止していたエンシュは我に返った


「ななな何を言ってるんですか! 女性同士でなど!」


「おんやぁ、サラマンダー様は愛のカタチが一つだけではないと知らないご様子だねぇ」


 あ、ダメだこの人、あれふざけてたんじゃなくてマジなやつだったんだ

 エンシュに迫ってくるメセロさんをクロハ姫が叩き伏せた


「うわぁああああ! またクロハちゃんが殴ったぁああああ!!」


 こっちも素なのか…


 メセロさんを落ち着かせてクロハ姫は話を戻した


「と言うわけで、私たちは武者修行の旅に出たわけなのです」


「そっかそっか、まぁなんにせよ元気そうでよかったよさ。 とりあえず、空中殺法の技術はクロハの中にしっかりと刻み込まれてるみたいだし。 そっちのハクラちゃんにも教えたいけど、う~ん、向いてないかもだし」


「向いていない? ですか?」


「そ、これって向き不向きがあるの。 ハクラちゃんはちょっと難しいかもだし。 クロハはその特性上しっくりきただけで、本来この武術はオラたちみたいな翼を持つ種族しかできないんさ」


 なるほど、そういう戦い方もあるってことなのかな


「ま、だからこそハクラちゃんにしかできない戦い方ってのもあるんだと思うし。 そうだね、オラの古い知り合いが仙人の国にいるから、そこで習う方がいいよさ」


 仙人の国かぁ。 僕も今の問題が片付いたら行ってみよう


 あとは一通りこれまでの話や世間話を交えてメセロさんと別れた


「元気でね。 たまには顔、みせに来るといいし!」


 嵐のような人だったけど、良い人なのは間違いない

 今度この国に旅行に来たらまた会うとしよう。 エンシュは嫌な顔をしてたけどね


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