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ただのかぞくあい

哲也と鹿島は下水道を出るために、歩いていた。哲也は腹部が大きく裂け、大腸の一部と何かの臓器が覗かせていた。

早くこの下水道から出なければ、あの化け物の巣にセットした時限爆弾が爆発してしまう。


「あともうちょっとで出口です。テツさん、頑張ってください!」

鹿島は哲也を励ましながら歩く。哲也はもはや返事も出来ないほど、息も絶え絶えだった。



 下水道の出口の光が遠くに見えた頃、2人の後を足音が1つ。その足音に気づいて振り返ると、そこには黒く、蠢いた人影が見えた。

その正体を哲也は瞬時に理解した。あの髪型、あの服装、あの背格好。それが自身の”元”娘であると。もはや、黒く、不気味に蠢く様は、異形にしか感じられないが。



哲也は手に持っていた散弾銃を”元”娘に向ける。まず両足を撃った。”元”娘は足の骨が砕けたようで、奇妙な倒れ方をする。次に腕、そして残りは全て頭と胸に撃ち込んだ。


静音(しずね)ぇ...ごめんなぁ...」

哲也は泣きながら、弾倉が空になった散弾銃のトリガーを引き続けていた。四肢は砕け、頭は欠落し、胸が穿(うが)たれていても、まだ”元”娘は動こうともがいていた。

鹿島は残っていた火炎瓶に火を点ける。



「待て...」

鹿島が投げようとした火炎瓶を、哲也は奪う。

「テツさん、何を!?」



「お前は...出口に向かって...走れ...」



「テツさん?」



「お前には...まだ家族が...居るだろ...う。お...前は家...族のと...こへ行...け。俺も...家族の...元に行..くだけだ...

...」

死にかけとは思えないほどの力で哲也は、鹿島を突き飛ばす。



「静音...天国で...家...族3人..仲良く暮ら...そうなぁ...」



もがいているそれに火炎瓶を持ちながら、近づく。

「パパも...一緒だ...からなぁ...」



「テツさーん!」

鹿島は大声で制止しようとしたが、無駄であった。哲也は”元”娘とともに火炎瓶によって火だるまになる。



燃えながらも鹿島の方を振り返った哲也は、じゃあなと口を動かすと、娘とともに火の海に消えていった。

鹿島は泣きながら駆け出すと、もう振り返らなかった。



 鹿島が下水道から飛び出た瞬間、地面が大きく揺れる。巣に設置した時限爆弾が爆発したためだった。爆発はその熱と火によって下水道内の全ての生き物を灰にした。

爆発の衝撃により、下水道は形を保てず、一瞬で瓦礫の山と化す。


「テツさん...」

瓦礫の山を見ながら、鹿島は先輩の名前をつぶやくのだった...

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