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ただのりらいと

 ”黒男”に佳奈(かな)が襲われた事件から翌日、佳奈は市内の病院に入院していた。

一緒に襲われた佳奈の父である(たけし)は助からなかったが、佳奈は幸いにも哲也と鹿島の活躍により、命を拾ったのであった。



佳奈が寝ているベットの横で、哲也は椅子に座っている。

佳奈が起きたのを見計らい、哲也は佳奈に話しかける。


「やあ、調子はどうだい?」



「いえ、あまり...」



「そうか。いや、当然か...」



「昨日のことがまだ夢のようで...お父さん...」



「君のお父さんを救えなくて、すまない。」



「いえ、刑事さんのおかげで助かりました。あのままで居たら...」

佳奈は身震いする。





                       ぐちゅ




「刑事さん、あの...あいつは死んだんですか?」




「ああ。今頃、司法解剖している頃だろう。」



「そっか。良かった。」

佳奈は涙ぐみながらもホッとしたような表情を見せる。





                        ぬちゅっ  ぐちゅ





「難しいかもしれないけど、あいつのことは早く忘れた方が良いと思う。」




「今は...忘れるのは難しいです...お父さんのこともありますし...」



                        

                        

                         ぬちゅ  にゅちゅっ




「ゆっくりでいいさ。時間はたっぷりあるさ。」



「ええ、そうですね...頑張ります。」



「じゃあ、そろそろおいとましますかね。」

哲也は椅子から立ち上がり、横に居た佳奈の母親に頭を下げると病室を出て行く。



「お母さん、私、頑張れるかな...?」

その言葉を聞いた佳奈の母は、佳奈の頭を優しくなでた。



――ちょうど哲也が病院を出たとき、哲也の携帯が鳴った。

それは、不吉な知らせをもたらすものであった。

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