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ただのしょうげん

「君が青葉あおは 隆平りゅうへい君だね?」

ベッドに寝ている少年に、哲也は再度声を掛けた。


「俺の名前は高梨、こっちは鹿島だ。俺たちは刑事をやっているんだ。」

哲也は警察手帳を見せる。


「それで、実は今ある事件を捜査していてね。もしかしたら、君が見た人が事件の犯人かもしれないんだ。」


「辛いと「あいつは人間なんかじゃないっ!」

哲也が喋っている途中に、隆平は遮るように大声を出した。


「あいつは、”あれ”は人間なんかじゃ...ない。」


「”黒男(クロオトコ)”だね?」

哲也がその名前を出すと、隆平はビクッと肩を揺らした。


「君は何を見たんだい?」


「あいつは僕が見たとき、猫を喰ってました...」

「ああ、あんなところに行くんじゃなかった...」


「あいつは...あいつは...それを見ていた僕に、猫の首を投げつけてきて...」


「あいつは、目なんかなくて、黒くて、体中が蠢いていました。」


隆平は見るからに顔色が悪くなっていく。

額には脂汗が浮き出始めた。


「それで...僕は逃げ出しました...」

「ただ、それだけです...」


「そいつを見た場所は?」



「たしか、三丁目のコンビニを過ぎた辺りの路地でした...」



「それで、他には覚えていることはないか?」



隆平はぶんぶんと首を大きく横に振る。



「近くにマンホールはあったかい?」



「確かあったと思います...」



「そうか。ありがとう。辛いところ、無理に話をさせてすまなかったな。」

そう言うと哲也は椅子から立ち上がった。



「じゃあ、これで失礼させてもらうよ。」


病室を出ようとする2人に、隆平は声を掛ける。

「刑事さん、あいつは本当に人間なんでしょうか...?」


「さてね。それは分からないが。」

「必ず、捕まえてみせる。」

「それが俺たちの仕事だ。」

そう哲也は言い残し、哲也と鹿島は病室を後にする。



2人が病院を出たときには、辺りは既に暗くなっていた。

「テツさん、やっぱり、今回の事件と何か繋がっていそうですね。」


「ああ、猫殺しが人殺しになるなんて良く聞く話だ。近隣で不審な動物の殺しがないか調べてみよう。」

2人が話をしていると、哲也の携帯が鳴る。携帯には課長の名前が表示されていた。


「もしもし、はい、高梨です。」



「もしもし、テツか。そっちはなにか収穫があったか?」



「ええ、どうも少年の言う猫殺しの犯人と、今回の犯人は何か関連がありそうです。近隣で動物の不審死がないか洗ってみようと思います。」



「そうか。こっちは新しい情報が入ったぞ。」



「新しい情報ですか?」



「ああ。今までに現場で採取された虫なんだがな。今まで何を食べていたか調べるためにDNA検査をしていたんだが、全部の事件で採取された虫にある共通点が見つかったんだ。」



「それは何ですか?」



「全ての虫から、同じDNAが検出されたんだ。染色体を調べたらXX、つまり女だ。」



「犯人は女ですか?一体どういうことでしょうか。」



「それは分からない。一応、DNAから前歴がある人間を調べたがヒットしなかった。」


哲也はその後、課長と2、3やりとりをすると携帯を切った。


「テツさん、今回の犯人って女なんですか?」

鹿島にも内容は聞こえたのか、哲也に質問を投げかける。



「決めつけるのは、早いな。先入観で捜査すると痛い目を見るぞ。だが、何かしら犯人に繋がっているのは確かだ。」


そう言いながら鹿島と哲也は車に乗り込むと、署に帰るためにハンドルを回した。

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