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素手技特化の異世界転生者  作者: NM
第一章 疑われて
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第2話 「ギルドには」

 ギルドを目指し街路をのんびりと歩き続ける。幸い、街の至るところに案内板があるようで万が一の事態は避けられそうだ。

 しかし――


 「目線が気になる…」


 すれ違う人々から、なにやら不審な眼差しを感じる。まるで、怪しい人物が街中を堂々と歩いてるかのように。

 一部は獲物を狙う狩人のようにも思える程の険しさが伝わってくる。


 なにかしてしまったんだろうか、転生して1時間ほどでなにかをやらかしたとは重いたくないのだが。

 身に覚えのない冤罪を被せらているような不安を抱えながらも目的地を目指すが、その足取りは少し重い。


 「そこのあなた」


 再び歩き始めて15分ほどして後か不意に声が掛けられる。自身に掛けたのかは分からないが、無視をする理由など微塵もないので素直に振り返ることにする。


 振り向くと目線の先には蒼く美しい色の髪を優雅になびかせながらも何処かおしとやかな雰囲気をかもし出している、そんな少女が佇んでいた。

 少女は白くスカート部分が少し短いローブのような服とヘアピンのような髪飾りを身に着けており、手袋をはめた左手には辞書のようなものが握られている。


 同い年、いや年下だろうか。少女は振る舞いこそ大人びていたが反して見た目は幼げだ。


 目先の美少女にすっかり見とれてしまっていた柏尾だったが、返事をする前に先に美少女が言葉を続ける。


 「先ほどららこの付近を徘徊しているようですがいかがなさいました?」


 「――実はギルド…情報屋のような店を探しているんだけど、知らないかな?」


 疑問を疑問で返してしまったがしょうがない。この世界のことは何一つ知らないし分からないので、情報を得ない限りはこの少女との会話も成り立たないだろう。

 最も、質問に答えてもらった後も話が出来るかはまた別問題だが。


 「えっと、ギルドですね。この先の道を確か…」


 「いや、分からないならいいんだ。ありがとう」


 彼女は難しい顔で考えているようだが、どうやら彼女自身も何処かへ向かう最中のようなので早めに話を切り上げようとする。

 すると少女は頬を少し膨らませ、


 「いえ、分かります。ご案内いたしましょう、そうします」


 「え?あ、ありがとう」


 「いえいえ、お気になさず。丁度私もギルドに用があったのを思い出しましたので」


 最後のほうはやけくそ気味だったよな様な気がするが、突っ込んではいけない。

 折角案内をしてくれるというのだ、お言葉に甘えない手はないだろう。加えてとびきり美人な少女と一緒に街を歩くなんて滅多にないことだろう。元の世界ではそんな機会は一度もなかった、悲しいことに。


 「では、行きましょうか」


 「は、はい」


 段々少女の言葉遣いが荒くなってきている気がする。これ以上荒くなったら、出会って間もないが早速キャラ崩壊しそうだ。

 下手な返答は良くない気がして、何故か柏尾自身も敬語になってしまった。


 そうして、少女の道案内が始まった。



 

 ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○




 ――街を見渡しながら歩き続けて20分くらいたった頃だろうか


 不意に少女が立ち止まる。急停止した少女、後に続いていた柏尾は思わずぶつかりそうになるがギリギリの距離で止まることが出来た。

 目の前の少女の視線の先には民家四つ部分ほどの建物があった。

 どうやら目的地に到着したようで、


 「ここがギルドです、情報も多分ここで入手できると思います」


 「わざわざ案内までしてもらって、わるかった」


 「わたし自身もギルドに用があったのでお気になさらず、ついでに案内したまでです」


 とは言ってくれているが実際用なんてなかったのだろう。本人はあくまで自分の為と言うが会話のところどころに優しさが見え隠れいて、連れてきてもらってなんだが、申し訳なくなってしまう。

 

 人助けをこのように毎回してるのであれば、勘違いする輩も絶対に居るだろう。

関心しながらも優しすぎる少女を見て不安になってしまう。


 「まずは、この街のルールみたいなものや職はどうやって就くのかのを聞いてみよう…」


 「…わたしは受付に用があるのですが、あなたも目的は同じのようですね。こっちです、ついてきて下さい」


 「あ、ああ…」


 小さい声で囁いた独り言を聞かれていたようで、少女は互いの利害が一致した上で提案を出し、それに応じた柏尾を横目に右奥のカウンターに向かって進み始める。

 

 ギルドは酒場と繋がっているようで、まだ日が沈んでいないのに大賑わいだった。

 彼女はこのギルドの顔なじみのようで行きかう人物にたびたび挨拶を交わしている。通りすぎる人々の格好は剣士や魔法使い、狩人、僧侶を連想させる。

 

 自分も騎士や魔法剣士になって国家所属の騎士になれたりするんだろうか、内心緊張と好奇心でいっぱいになっていた。


 「あら、シルムちゃんじゃない~。どうしたの、依頼受けに来たの~?」


 「――あ、エルヴィールさん!」


 受付窓口から声が掛かる。

 ここに来るまでにお互いの名前すら語らずにいたのだが、今少女の名前を知ることが出来た。

どうやら長い蒼髪の幼い少女の名前は、シルムというらしい。

 そしてカウンターの奥に居る紫色のサイドアップの女性はエルヴィールという名らしい。

 これからお世話になるなら、覚えておいて損はないだろう。

 などと、考えていると、


 「わたしの用事は後回しで構いません、先に彼の話を聞いてあげてください」


 「彼?――ああ、後の人ね、わかったわ。…見慣れない格好だけど、依頼を受けに来たの?」


 「い、いや、実はこの街に来たばかりで右も左も分からない状態なんだ。出来れば基礎から教えてほしい」


 「基礎…ね、ここがどこだかくらいは分かるわよね?」


 唐突に受付嬢と話すことになり、慌てて返事を返す。言い方が不審かつ図々しいくらいに大きな要求になってしまったが、何も分からなければどうしようもない。

 要求を聞いた受付嬢エルヴィールは眉をしかめて質問を返してくる。


 「いや、分からない。違う国から来たんだ、この国の文字の読み方も分からない」


 「違う国から…ね、まあいいわ詮索は良くないしね。でも、他国から来て文字も読めないとなると大分遠くから来たようね」


 かなり胡散臭い柏尾の返答に何かを察したのか、エルヴィールはそれ以上は聞いてこない。

 実際どの国から来たか、なんて聞かれたら答えられないので早めに話を進めてもらえるのは有難い。


 「とりあえず街の説明をするわね。ここはエイセム国領土の東に位置する街、国の中心核となるところ、つまり王都よ」


 「お、王都…」


 話によると、大陸には四つの国があって、各地特有の種族が国家を築いているとのこと。つい最近戦争が終わったらしいが現在地のエイセム国と北のルーグエルは戦争には加わっておらず、西のヒズアードと南のケルコアス、そして魔族の介入により痛み分けで戦いに終止符が打たれたらしい。

 

 終戦により両陣営は少なからずも損害がある為、南の国家ケルコアスは魔族に同盟を結びつけることにした。

魔族側もそれを承諾した。四国の中でも技術が飛び抜けて高いケルコアス国からの同盟協定の話を持ち出されて断る国家などないのだ。

 

 そうして南の国家ケルコアルスは魔族との共存協定を結び、地方の特有種族と魔族が共に暮らす同盟国となった。

 予断だがケルコアスは一部の人々にとっては楽園らしい。柏尾自身も行ってみたかったりする。


 現在の四国は少し前よりは大分落ち着いたとのことなので、国同士の争いごとはしばらくなさそうだ。

 なかでもエイセムは比較的治安の良い街が多い国家だそうなのでなので住み心地は良さそうだ。


 とんでもない所に呼び出されてしまったのかもしれないと、最初は思った。柏尾の王都のイメージはガツアゲするチンピラがたくさん居たり、貧民街に足を踏み入れたら無事に帰って来ることが出来なかったりしそうなので恐ろしいと思える。

 他の国の王都はもしかしたらわるいかもしれない…。

 などと考えたりする。


 「エイセムに来たって事は、西か南からの入国者だと思ってたんだけど、文字が読めないならその他の地方から来たって事になるわね」


 「そうなんだ、もっと別の国から来たんだ。かなり遠くの国からな」


 「でも遠くに他の地方…あったかしら、地図には書いてないくらい小さな国かしら」


 難しそうな表情をして考えるエルヴィール。

受付嬢にしては若く、可憐である彼女はおそらく年上でそんなに年は離れていないだろう。

 真剣に考える彼女を見て、不純ながらもまったく違うことを考えてしまう。

 すると横の少女――シルムが会話に混ざる。


「地図にも載ってない国から来たってことですか?」


 「そうなるかな、実際ここが何処かわかってもどうすれば良いかわからないくらいなんだ」


 「まあ、魔族だって何処から来たのかだって分からないんだし、人間が地図上に載ってない国から来たとしても不思議なことじゃないわ」


 更に怪しまれるかと思ったが、先駆者の魔族様のおかげで疑いはすぐに晴れそうだ。最も何を疑われているかは分からないのだが。


 「色々と分かったよ、ありがとう。後はこの先どうするかだが…」


 転生した世界の背景は分かったが、問題はこれからだ。

 文字が読めないのは受付嬢に訳して貰えばなんとかなりそうだ。しかしギルドに登録するには登録料が必要なのだ。

 まずは、ギルドを通さず受けられる仕事を探さなくてはならない。

 

 「仕事もそうですけど、まずはその格好をなんとかしたほうがいいとおもいます」


 「格好?」


 少女が柏尾の服装を指摘する。そこまでおかしい衣装なのだろうか、疑問に思うがそこで街中の住人視線と繋がった。

 だが、おかしい理由とは繋がる気がしない。


 「この格好は変なのか?」


 「変というよりその格好は――」


 「――ここかっ!」


 蒼髪の少女が言葉を繋げるより先に大きな音を立ててギルドの入り口のドアが開かれる。

 そして入ってきた男は告げた――


 「街中で不審な人物が女性を連れて行ったと通報があった、犯人はこのギルドに入っていったとの目撃情報があった。その男は貴様だな?悪党!!」


 そういって柏尾を指差したのであった――







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