福岡防衛戦 1
もうまもなく九州編が終わります!
でもまだ続くのでよろしくお願いします!
「と、いうことで明日も仕事です。フフフ、社畜社畜始末書始末書貴様ら全員社会の歯車だぁっ!」
「「「「(遂に狂ったかっ!)」」」」
都城で戦闘があったその日の夜、九州福岡基地司令官室には聖釘部隊が集められていた。
中国沿岸、対馬との相次ぐ通信途絶はCaCaOの影響であるとの予想から、福岡沿岸に聖釘部隊と駐留部隊を配備し迎撃、防衛する作戦の要請だった。
「まぁ、とりあえず今日は早く休んでください。明日はちょっと大変ですよぉ、もしくは暇ですよぉ。いつ来るか分からないんですからね、フヒヒヒヒヒ。」
司令官勇田は最近の仕事量とストレスの所為で精神を少しやられていた。
聖釘部隊の面々はそれを無視して各々の部屋に帰っていった。
翌朝、食堂にて。
「むぅ、魔力が全快までいってないなぁ。どうしよ。納豆ウマー。」
「僕もです。今日戦闘あったらきついですね。納豆好きなんですよー。」
「私もよ。昨日結構使ったからね。久しぶりに納豆。」
「俺は全然使ってないから満タンです……火採さん、俺の魔力を口移しでゴホハァッ!」
「キモいぞ灯。ま、今日は来ない可能性もあるんだろ?納豆。」
「納豆食ってるからってCaCaOのこと納豆って言わないでください……。まぁ、今日は来ない可能性があるとは言っていましたが……これは僕の勘ですが、今日来ると思います。」
「靴木もそう思うか。実は俺もそう思う。勘、だがな。」
「私もよ。何か嫌な予感がするの。」
「……そうか。やはりそうか。」
この勘は歴戦の勘といえるもので、駐留部隊のベテランの中にも少し難しい顔をしている者がちらほらと見られた。
「でも、魔力がないと《雷帝の天啓》が撃てないしなぁ。」
「そんなあなたに朗報です。」
「ふむ、朗報か……って勇田お前いたのか!」
「居ましたよー最初ッから。で、魔力が足りないそこの貴方!こちらの商品をご覧下さい!」
言いながらポケットから出したのは液体の入った瓶だった。エナジー飲料のようなパッケージには『魔力全快!マリョクビタンZ』と書いてある。
「なんだこのうさんくさいエナジードリンク。ただでさえ勝手にゴディバとか使ってんだからこれ以上パクリはやめろよ。」
「そう言う貴方こそメタ発言はやめてください!そういうの嫌いな人もいるんですから。(げふん)こちらの商品はですねぇ、なんと一本飲むと魔力が全開するという疲れた朝にもってこいの商品なんですよ!」
「オイ、それ絶対やばい奴だろ。一本で魔力全体なんて聞いたことないぞ。」
「まぁ、軍の研究チームが最近作った試作品ですからねぇ。ただ、今日はつかっといた方が良いんじゃないですかぁ?」
「うーん……まぁ、背に腹は代えられんか。よし、もらおう!」
「一本700円になりまぁーす。」
「金取るのかよ!」
「冗談です。ほい、十本。」
テーブルの上に小箱ごと置かれたマリョクビタンZの使用上の注意をよく見る聖釘部隊の隊員達。見るからにうさんくさい。
「なんか脳にちょっと刺激を与える事で魔力生成が促されるとか何とか書いてありますね。」
「脳って……大丈夫か、これ。」
「飲むしかないでしょう?私は飲むわよ。」
火採は箱を開けて一本取り出すと、パキッと栓を開けて口をつける。ちょっとためらったものの一口飲むと抵抗はなくなったのか一気に飲み干した。
「味はエナジー飲料だけど炭酸が入ってないのね……んッ、これは……ぁんッ!」
「……オイ勇田、逃げるな。」
「司令官、俺……感激しましたッ!」
「……飲みたくなくなったんですが。」
ドン引き&怒り&感激の聖釘部隊。
対して勇田は何故か余裕の表情である。
「まあまあ、大丈夫ですよぉ。魔力は充填されたんですから。」
「ほんとだ。すごいわ、これ。」
火採は素直に驚いている。顔色も悪くはなく警戒も少し和らげた。
「うむ……そんな悪いもんでもないようだし、飲むか。」
「そうですね。」
「じゃ、俺も。」
ゴクゴクゴクゴク
「「「プハー」」」
後はご想像にお任せします
『聖釘部隊、出撃する!』
『と言っても待機ですけどねー』
そんなことを言いながら他の小隊と共に沿岸地域に出撃する。
小隊を等間隔に沿岸に配置し、その後ろに聖釘部隊が構え、いつでも戦闘地域に出撃できるようになっている。
待機中は各々だらだらしている。いつまで続くか分からないこの待機に、日頃の疲れの癒しを求める者もいた。
例えば……
『久しぶりに観る日常系アニメは最高だな。』
『何のためにクルセイダーにモニターがついているのか考えてください!』
『うーん……ごちうさ?』
『あぁ~!心がガンガンするんじゃぁ~!』
他にも
『あ゛あ゛あ゛あ゛ぎも゛ぢい゛い゛ぃ゛ぃ゛』
『おい、灯。お前なにやってんだ?』
『ごじに゛づげる゛だい゛ぶの゛ま゛っざーじぎでずぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛』
『……欲しい。』
などなどである。
……
…………
気配にいち早く気がついたのは組町だった。
『来るな……しかしなんだこの異様な気配は?』
『分かりません。ですが、準備しておいた方が良さそうですね。』
『ああ。』
同時刻、司令室。
「ソナーに反応あり。おそらくブラックサンダー級CaCaOであると思われます。」
「数は?」
「数は……」
「……?」
「数は約二百体です。」
司令室を沈黙が支配する。
沈黙を破るのは司令官である勇田だった。
「わかりました。小隊長以上の全機及び聖釘部隊に通信をつないでください。」
いつになくきっちりとした声でそう指示する勇田に操られるように、全員が指示通り動き出す。
「こちら九州福岡基地司令官、勇田です。これより敵の情報及び作戦を伝達します。よろしければ応答を。」
やがて全機から応答が返ると勇田は現在の状況を説明する。
「現在確認されているだけでも、敵の数は二百体程度。相当苦しい戦いになることが予想されます。」
『に、二百体!?そんな……機械の故障じゃないんですか!』
「残念ながら複数のソナーがアクティブ、パッシブ共に同じような結果を出していることから、故障ではないと判断されます。」
『そ、それでは……』
『撤退……ですか?』
「その件についてはこれより説明します。」
ふぅ、と短いため息をつき、全員を注目させる。
撤退か、戦闘継続か。
この数から観るにこちらは劣勢。いくら中の下のブラックサンダー級であっても数は多いし、駐屯兵では一体倒すのにも苦労する。
なので、多くの人々は撤退だと予想した。
しかし――
「現状況をふまえ、これより九州福岡基地全勢力をもって迎撃にあたります。」
予想外の戦闘続行に衝撃が走る。
『馬鹿なっ貴様部下を殺す気か!』
『自分はいざとなったら逃げられると高をくくっているのだろう!』
『司令官、先ほどの作戦、撤回してください!』
通信機から溢れる不平不満苦情クレーム……その声を制したのは今まで沈黙を貫いてきた聖釘部隊隊長、組町だった。
『だまれ臆病者共!!』
そう一喝して、話を続ける。
『勇田も何か考えがあって作戦を提案したんだ。それを聞け!!』
通信機から声が消える。そして勇田の声がまた通り始める。
「皆さん、ありがとうございます。ではまず、今回の作戦を提案した理由を説明します。
と言っても理由は至極簡単で単純です。市民を守るため、それがこの作戦の根本にあります。我々日本皇国軍のもとになった組織、自衛隊のことは皆さんご存じだと思います。自衛隊の使命は国民を守ること。この国を守ることです。
では、我々はどうでしょう。我々は何のために戦っているのでしょうか?
世界からCaCaOを滅するため?それも然りです。しかし、それだけでしょうか?
我々は武力を攻撃に使っているわけではありません。それを自覚していただきたい。我々は武力を、その力を、守るために使うのです。それは自衛隊から続く我々組織の使命です。
我々は部下を守るために戦うのではなく、市民を、国民を守るために戦うのです。
ですから皆さん、生きるために戦うことをやめてください。我々は軍人です。守るために戦いなさい!
……長々と失礼いたしました。むろん今作戦には、私も司令官機で出撃します。以上です。」
長い演説が終わって、緊張した面持ちで反応を待つ。
『了解した。』
『良いだろう。その覚悟、気に入った。』
『仕方ないですね。』
先ほどとはうって変わって賛成の意見が場を占める。
それを聞いた勇田はしっかりと決意をした。
「それでは作戦を決行します。総員、心してください」
こうして、過去最大数のCaCaOとの戦い、『福岡防衛戦』が始まった。
いろいろ考えさせられる話でした。
まだ続きあるんですけどね。
頑張ります!