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バレンタイン戦役  作者: 龍田蔦々
九州急襲編
5/11

聖釘部隊の新人 二

現代編第二話です。ここでいろいろ分かったりします。今度設定集も出したい……。

「何でしょう、隊長。」

入隊の翌朝、組町は特別待機室に靴木を呼び出した。

組町はウォーターマットの上で十八禁抱き枕を抱いてごろごろしていた。

靴木が来たと分かると、ごろごろするのをやめて体育座りし直した。十八禁抱き枕は抱いたままだが。

「今日呼び出したのは、お前に任務があるからだ。」

「任務、ですか。」

「……まあいい。実際にはお前にではなく聖釘部隊に対する任務なんだがな。」

組町はそこまで言うと、隣に置いてあった封筒を靴木に差し出した。

靴木がそれを受け取ると組町は話を再び続けた。

「お前は知っているだろうが、今日は九州福岡基地駐屯部隊の新兵入隊式だ。その式典が終わった後、特別講義を受け持つように、ということになってな。まあとんだお門違いだとは思うが、上の意向には従わないといけないから渋々引き受けた、ということだ。な、司令官。」

「ま、まあ……そう言うことですねぇ。」

「!?」

靴木が驚いて振り向くとそこには幽霊……ではなく恐ろしいほど生気に満ちあふれていない女性の姿があった。

「はは、言いたいことは分かりますよ……『こんな奴ら絶対適任じゃないだろ』って思ってるんでしょう?申し遅れました、私この基地の司令官、勇田です。あ~胃が痛い、胃が痛い。」

勇田はそこまで言うと特別待機室から去っていった。

「……司令官、何しに来たんですか?」

「さあな、勇田はいつもあんな感じだ。さて、続きだが、特別講義といってもそう難しいことはない。ただ今までの基礎基本を教えるだけだ。教えることの分担は資料に書いてある。式典は昼からだから、それまでに熟読しておけ。」

「了解しました。他には?」

「以上だ、帰って良いぞ。」

組町はシッシッと追い払うように手をふると再びごろごろし始めた。

靴木が部屋を出ようとしたとき、組町が不意に言った。

「あまり火採をいじめるなよ。私は、怒ると面倒らしいからな。」



普段ほとんど使われていないだだっ広い会議室の開閉式の壁ぶち抜いて、さらに大きくなった会議室には大勢の新兵達がつめかけていた。

「ふ、結構集まったな。どうやら操縦士だけでなく整備士も集まっているようだ。まあこれも私の美貌あってこそだが。」

「うるせぇロリガキッ!も、もちろん火採さんあってこそですよ!」

「く、靴木君、殺気は抑えないと新兵達ビビッてるビビッてる!」

「別に!殺気なんて!出して!ません!ちゃんと!してください!」

聖釘部隊はグダグダだった。

そもそも講師として適任でないと言うことは、各々が百も承知であり、すでに諦めていた。

「では、組町隊長、よろしくお願いします。」

「うむ、任された。」

司会の駐留部隊隊長にバトンタッチされた組町は壇上に上がった。

「ご紹介にあずかった、聖釘部隊隊長の組町だ。」

そう言うと会場から大きな拍手があがった。

それを満足そうに見回した後、手元の資料に目を移し講義をはじめる。

「ふむ、まずは基本中の基本からだ。これは人類ならば誰でも知っていることだな。私が今から講義するその内容であり、長く長く続くクソみたいな現実の名前だ。」

組町は後ろの黒板に大きくそれを書いた。

「このクソみたいな戦争を、人類は『バレンタイン戦役』と、そう呼んでいる。」



「そもそも事の始まりは二十年前のアメリカだ。今世紀最大の発見であり災厄とも呼ばれる、人類とCaCaOとの最初の接触は『原罪』と呼ばれている。」

「最初の方は人類の魔力を使わない兵器でも何とかなったんだ。『原罪』の翌年に起こった『横浜上陸事件』では横浜を焼け野原にしながらも何とか撃退に成功している。」

「当時多く出現していたのは低レベルのブラックサンダー級だとされている。まあ規格ができたのもここ五年くらいだから良くは分からないんだがな。」

「しかし、人類が戦えば戦うほどCaCaOは進化していった。今じゃあ超ゴディバ級なんていうものまで出るくらいだからな。われわれは遂に魔力兵器まで使わなければならなくなったわけだ。」

「ここで作られたのが天井とかいうクソ女が提案したヒト型対C魔力機甲《クルセイダー》。奴が考えたにしてはまだまともな方ではあるが……大体あいつ頭オカシイんだよ。くっそ、考えるとイライラしてきた……あーもう!……寝るわ。はい後はじしゅーね。」



「ウチのロリガ……隊長が申し訳ございません。ここからは隊長に代わって私、灯が講義を引き継ぎたいと思います。で、えーっと……クルセイダーの話でしたね。で、クルセイダーですがその前に火採さんの魅力をぐぼへらはァッ!」



「ご紹介にあずかりました、聖釘部隊の火採です。あら、楽になされてください。そう緊張せずに、さっきみたいな事はおいたが無ければしませんから。」

「で、クルセイダーの話でしたね。クルセイダーは天井博士の開発した人類が今現在保持する唯一の対CaCaO兵器です。エネルギーは魔力石から供給される魔力で、動力の基本は機械工学を基本としています。」

「クルセイダー用兵器は十種類に分かれています。上から熾天使(セラフィム)級、智天使(ケルビム)級、座天使(スローンズ)級、主天使(ドミニオンズ)級、力天使(ヴァーチュズ)級、能天使(パワーズ)級、権天使(プリンシパルティーズ)級、大天使(アークエンジェルズ)級、天使(エンジェルズ)級。そして、日本初の超ゴディバ級上陸事件後に開発された、各特別独立部隊長の専用装備『外典(アポクリファ)』。」

「これらの武器を使いCaCaOを倒すのが我々の使命です。それ以上でも以下でもない。それを忘れないでください。」

「それ以上の心得については靴木君、よろしくお願いします。」



「では、よろしくお願いします。」

「戦いの心得、ですが……まず『ルールを守る』ことです。」

「ルール、といいましたが、上官の命令というわけではありません。」

「合理的、論理的判断に基づいた生き残るためのルールです。」

「新兵の皆さんには、CaCaOとの戦いに不要なモノ一切を、捨てていただきたい。」

「僕が伝えることはそれだけです。後は教官に教えていただいてください。」



こうして聖釘部隊の特別講義は幕を閉じた。

この講義は、いろんな意味で新兵達の心に刻みつけられた。

「ん?終わったか……。じゃ、帰るかな。ベットで眠りたい。あと抱き枕も欲しい。」

「火採さん、この後お食事でもいかがですかぁ?」

「靴木君……。」

「(イライライライライライライライライラ)」

こうして二日目は終わる。

波乱は見えざる所で始まろうとしていたが。



「あの、上海と連絡が取れないのですが。」

「あ?定期連絡が来ないのなんていつものことだろ。」

「まぁ、そうですけど……なんか違う気がするんだよなぁ。香港も連絡つかないんです。」

「そう気にすることないって。大丈夫だ。」

「そう……ですよね!」

お読み下さりありがとうございました!何か意味深な終わり方。フラグたてまくって次回三話です!

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