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バレンタイン戦役  作者: 龍田蔦々
九州急襲編
4/11

聖釘部隊の新人 一

プロローグも終わり、やっと現代です。これからが本番です!

東部撤退戦から二年後、西部方面隊九州福岡基地内、特別待機室。

「なーなー、暇だなー。(ともし)ーなんかしろー。」

そう言ったのは西部方面特別独立部隊『聖釘部隊(せいていぶたい)』隊長、組町(くみまち)だ。幼い体をソファーの上に精一杯伸ばし、美しい金髪を後ろでまとめた美少女である。しかしその容姿とは裏腹に、暇だ暇だと少年漫画を読み散らかしていた。

そして呼ばれた方、副隊長の灯は違うことに夢中だった。

「火採さぁん、何か御用はあっりませんかぁー?」

顔を完全にユルユルにしながら若干気持ち悪い猫なで声で火採の機嫌を伺っている。

「んー、じゃあちょっとチョコレート系のお菓子を買ってきてくれないかしら。急に食べたくなっちゃって。」

火採は読んでいる雑誌から一度も顔を上げずにテキトーにそう言った。

「りょーうかいいたしましたぁ~」

そう言うと全速力で部屋を出て、ここから25キロも離れたコンビニに走るのだった。鬼畜の所行だった。

本格的に暇になった組町はもぞもぞと火採の方に動いて後ろからのぞき込んだ。

「んーこの服なんか可愛いな。」

「あら、そうですか?」

「うん。ってか敬語はやめてくれ。そっちの方が年上なんだぞ。」

「あんまり年上って言わないでください……いいんですよ、こっちの方が慣れてますし。」

火採はそう言うとページをめくった。

「むぅ、ならいいが……お、これも可愛い。」

「隊長、ロリータ系がお好きなんですか?」

しばらく他愛もない雑談が続く。

しかしその時間は唐突に終わりを告げた。

「火採さん!」

そう言って息を切らしながら勢いよく部屋に飛び込んだのは灯だった。

「?」

「ハァ、ハァ……買って……きました。」

「紛らわしいッ」

「るせぇロリガキ!さ、火採さんご所望のチョコレートです。」

「ありがと。」

「ンフオオオオオオオオ」

とても気持ち悪いのだった。

「早かったわね。走ったの?」

「ええ、クルセイダーでちょっと。」

「なんでお前はそんなことにクルセイダーを使ってんだ!ああ、また仕事が増える、始末書が増える……。」

「あんたの分の仕事やってるの俺でしょうが!」

「「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」」

その時ドアが開けられ、キリッとした声が響いた。

「靴木軍曹、ただいま到着しました!……で、この状況はどうすればいいですか?」

特別待機室内に沈黙が流れた。



「靴木軍曹、歓迎する。私は聖釘部隊隊長、組町だ。よろしく頼む。……そんな『軍はこんな幼い子さえも入隊させ、さらに隊長にまでするのか』という目線はやめろ。お前とは同い年だ。」

「は、失礼しました」

その態度に組町は苦い顔を隠せない。

「もう少し肩の力を抜かないか……。幸い、ここの基地はそんなに出動もない。CaCaOは中国やらが討伐するからな。網から漏れたちっさいのを倒すだけだ。」

「そう、ですか……。では、何かすることは……」

「無い。まあその辺でゆっくりしててくれ。今ついたばかりで疲れも溜まってるだろう?なんなら私がとってやろうか、その溜まったモノを……。」

「いえ、ご心配には及びません。では荷を置いてトレーニングをしてきます。部屋は分かるのですが、トレーニングルームはどこでしょうか。」

組町は真顔になった。

灯はそもそも見ていなかった。

火採は笑っていた。

「……。基地内を案内しよう。火採、頼んだ。」

「分かりました。」

火採と靴木は共に部屋を出た。

灯は組町の八つ当たりの対象にならざるを得なかった。



「久しぶり、靴木君。イメチェンした?」

「お久し振りです。変わらず何よりです。」

「ふふ、年食ったけどね。ここが食堂よ。」

すでに昼食の準備をしているらしく、周囲にはおいしそうなにおいが漂っていた。

「今日はカレーですか。」

「みたいね。あ、ここが第一倉庫よ。あなたもだいぶ変わったわね。昔はもっと……」

「……。」

廊下には靴音だけが残る。

さらに二つ後の部屋に差し掛かったところで、靴木が口を開いた。

「火採さんは何も変わりませんね。」

「いいえ、いろいろ変わったわよ。」

「変わってませんよ。」

靴木はひどく忌々しそうに言った。

「あなたは何も変わっちゃいない。前よりも弱くなったくらいだ。」

「え?」

「昔ならここで僕は殴られていました。火採さんは、あなたはどうやら腑抜(ふぬ)けてしまった!」

「……。」

「……大きな声を出して申し訳ございません。ここからは僕だけで大丈夫です。ありがとうございました。」

靴木は早足で歩いていく。火採はその肩をつかんだ。

「変わらなきゃ……変わらなきゃいけない?」

火採は靴木の背をじっと見つめる。

「変わらなきゃ、より強くなれない。強くないと、あいつらとは戦えません。」

靴木は振り向かずにそう言った。

そしてそのまま、歩き去った。



一人と靴木退室後、特別待機室にて。

「あそこでマジレスするか?こんな可愛い私がせっかく妖艶に色気を振りまいてやったというのに……。」

「あんたのそれはただの下ネうぐッ」

「またチョークスリーパーホールドを極められたいか、ああん?」

「もう極めてるうがががががqあwせdrftgyふじこlp……。」

「最初から大人しく黙って技を食らえばそれでいい。」

「……よくねぇ(バタリ)」

聖釘部隊、新しい部隊が出てきましたがこれからじゃんじゃんキャラが出てきます。そして実は、今作の主人公は靴木君です。あの東部撤退戦でひたすらボコられただけの靴木君です。これからどう成長していくのか、とても楽しみです!

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