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バレンタイン戦役  作者: 龍田蔦々
剣の散り様
3/11

東部撤退戦 三

東部撤退戦も最後です。でもこれからも続きます。

「CaCaO、見えました。」

「おお、見えた見えた。聞いたとおりの大きさだなぁ。」

九字桐は動じない。元よりそういう性格だった。

「戦闘準備。さっさと仕留めるよ。」

「「「「了解。」」」」

最上位、熾天使級の武装は巨大銃剣だ。

全員で銃剣の照準を連動させ、一点のみをねらう。

「自動照準でカバーできないところは手動であわせてね。」

「全員の照準、終わりました。しかし、何者かが戦闘継続中です。」

「ん?ああ、解答係(フラガラッハ)の糸巻だね。うーん、ちょっと待ってあげようか。」

「た、隊長。」

違う隊員が震えた声で九字桐を呼ぶ。

「ん、なんだい?」

「あ、あれは…あの動きはなんですか!?」

そう言って戦闘が行われている方向を指した

九字桐がそちらを見ると、そこにはまさに光のような速さで移動する隻腕のクルセイダーがあった。

「ふふ、糸巻。運命への解答(フラガラッハ)を完成させてたんだ……。」

九字桐がそう言った直後、隻腕のクルセイダーはCaCaOの懐で動きを止めた。

「あれは……通常装備のブレードですか!?」

「ふーん、通常装備で超ゴディバ級の皮膚を貫くなんて、さすがは糸巻だ。だけど……。」

九字桐は嗤った。



「はっはははは。どうよ、俺は生きて、お前は死ぬんだぜ、お嬢さん!」

糸巻は目を見開いてそう叫び、さらに深くブレードをねじ込んだ。

CaCaOの眼から生の光が消えていく。

その光景をしっかり見届けるとブレードを腹から引き抜こうとする。

しかし、抜けない。

「?こいつ、死んでるよな……。」

コアも破壊した、眼から生気は失せている。なのにブレードを離そうとしない。

「せーのぉ、フンッ!」

思い切り力を込めて引き抜くと、ブレードの切っ先は折れてしまった。

「……サーモカメラ、オン」

糸巻が距離を取り、サーモカメラを起動すると、CaCaO体内の中心部に球形の熱源を確できた。

「おいおい、自己再生するってのかよ。」

CaCaOの自己再生機能はコアの破壊と共に失われるはずである。しかしこの超ゴディバ級はその定説を打ち砕き、まさに不死とも言える復活を成し遂げたのだった。

「やっぱりそうか。最悪あるかもなーとは思っちゃいたが……超ゴディバ級、俺の力じゃ及ばないか。」

魔力も尽き、体もボロボロ、精神的にも疲弊している糸巻に、もはや戦う力は残っていなかった。

糸巻はポケットから酒を取り出し、静かにCaCaOに語りかけはじめた。

「おい、てめぇ」

CaCaOの眼に生気が戻る

「お前、はなっからこのつもりだったのか。」

CaCaOは答えない。

「集団の中の(リーダー)を叩こうっていう、そういうつもりだったのか?」

CaCaOは答えない。

ただ、糸巻きを睨み続けた。

「そうか、いい眼をしてる。敵に対する、いい眼をしてる。」

CaCaOの背中にあるとげが、まるでロケット砲のように次々と空へと打ちあがる。

「ほう、奥の手か。わざと残してやがったな。だから靴木も無事だった。リーダーを確実に殺して集団の指揮をバラバラにした方が効率がいいと考えたんだろ。」

着弾まで残り50秒。

「だが、それは間違いだ。」

糸巻は酒を飲み、操縦桿に手をかけた。

何か思いを託すように、隻腕で折れた剣を振り上げる。

「俺が死んでも、意志を継ぐ奴がいる。どうせ、次の隊長が選ばれる。人間社会ってのは、そんなに単純じゃねぇ。」

糸巻はニタリと笑った。

「今回はお前の負けだ、お嬢ちゃん。俺が負けたんじゃない、俺たちが勝ったんだ。」

手に持った剣を力の限りに投擲する。

その瞬間、とげは着弾した。


糸巻大尉、戦死。



九字桐は高速で飛来した物体を寸分違わぬタイミングで、綺麗に受け取った。

「折れた剣とは……なかなか粋じゃないか、糸巻。こういうのは嫌いじゃない。」

九字桐はその託された思いを、その予想通りの思いを、地に刺した。

「隊長、あのCaCaOはコアが破壊されてもなお自己修復をするようです。」

「予想できたことさ。その点、糸巻は愚かだった。」

「どう、なさりますか?」

部下のとまどったような問いに対して、九字桐は 壮絶な笑みを浮かべながらこう言った。

「どうもこうも、コアごと滅却するしかないだろう。」

その鬼気は、無線越しでもなお伝わるほどだった。

「照準はもう合わせているね。」

「「「「は、はい!」」」」

「だったら後は……思いっきり奴にぶち込んでやるだけだ!」

九字桐は鬼気に染まった眼で照準の向こうのCaCaOを見据えるとありったけの殺意を手に込めた。

「総員、撃てェェェェェェッ!ブッ殺せェェェェェェェッ!!」

紅桔梗(べにききょう)の強烈な弾丸が、何度も、束となってCaCaOに降り注いだ。


超ゴディバ級CaCaO コードネーム《ブエル》、消滅


行方不明者 35名

死者 47名

損害 基地魔術シールド、クルセイダー1機、各種パーツ多数、その他基地内備品多数、基地西部消滅。


東部撤退及びCaCaO撃滅戦、終結


この戦いは最小被害で終結した対超ゴディバ級撃滅戦として歴史に名を残した。

東部撤退戦完結しました。でもまだ貼り付けてある伏線は追々回収します。まあまだプロローグみたいなものですが、これからもよろしくお願いします!

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