東部撤退戦 二
全話の続きです。どうか、よろしくお願いします。楽しく読んでいただけると幸いです。評価つけてもらえるともっと幸いです。
「ハアアアアアアッ!」
糸巻、は液状化した腕から出る触手を、防ぎ続ける。通常装備では超ゴディバ級の触手を斬ることはできず、ただただ防戦を強いられていた。
「(もうすでに刃もぼろぼろだからなぁ。トンズラできればいいんだが……殿をつとめるって言っちゃったからなぁ。)」
糸巻のクルセイダーはもうすでにぼろぼろだった。少しずつダメージをため込んだ末の結果だ。
もうこれ以上の戦闘は難しい。糸巻は、覚悟を決めた。
「クッソがァァァァァァ!」
片腕を犠牲にして触手を受け流し、加速。力学操作魔術を繰り返し発動しさらに加速。
ジグザグに移動し距離を取ってその分加速する。
「オオオオオオオオオオッ」
多大なるGが掛かり、肋骨が何本か折れ、内臓も損傷し血反吐を吐きながらも加速を続け、ギリギリの所で方向を一直線にCaCaOに向けた。
「死ねッ!」
超硬質ブレードがCaCaOのコアのある体の中心部に吸い込まれていき、硬い何かが砕ける感触を感じた。
東部方面隊関東基地より西方約50キロ地点。
「司令官!東海から応援が到着しました!」
「東海?おい、まさか……」
大きな音を立てて軍用ヘリが20機ほど編隊を組んで飛んでくる。そのまま開けた場所に次々と着陸していった。避難地点として援軍の到着も予想し相当広大な土地を確保していたが、それでも数機ずつ交代で荷を降ろしていくことしかできなかった。
最初のヘリコプターから輸送トラックの間を縫って茶髪の優男が歩いてくる。
今一番来て欲しいはずの応援に上総は顔をしかめた。
「久しぶりですね、上総司令官。」
「……九字桐か、ああ。」
「そう顔をしかめないでくださいよ。理由は分からないでもないですが。」
「ふん、ぬかせ。臨むところだろう、『聖骸布部隊』隊長のくせして。」
聖骸布部隊、東海支部に常駐する東部方面特別独立部隊の一つ。
別名、 死神隊。
「どうせなら東北のが良かったんだが、仕方ない。」
「掃除屋共ですか。あいつらは生ぬるい。ここの解答係共と同じですよ。」
「貴様、今何か言ったか。」
上総の目が変わった。
「いや、お気に触ったのならすみません。で、その聖剣部隊は今どこに?」
「あいつらなら……」
ちょうどそこに部下が走ってきた。
「お話中の所申し訳ありません。聖剣部隊が今、到着しました。」
「何ッ!無事か?」
「そ、それが……靴木一等兵が重傷、他は軽傷、ただし糸巻大尉がまだ戦闘を継続している模様!」
九字桐はにたにたと笑う。
上総は唇をかんだ。
5分後、聖骸布部隊は熾天使級装備を持って、出撃した。
火採は後悔していた。
「(隊長は、死ぬつもりだ。あのときはそんな気無かっただろうけど、結局そう思うに決まってる。)」
靴木にはすでに折檻済みだ。というか負傷の50%は火採からのダメージだった。
「副隊長、大丈夫ですか?」
スタスタと後ろから歩いてきたのは五番機の曲輪だ。
「ああ、曲輪ちゃん。大丈夫よ、隊長はちゃんと帰ってくる。今までもなんかそう言う人だったから。」
「とても信頼されてるんですね。もしかして、恋人……」
「じゃないわ。でも……いや、なんでもないわ。」
火採は寂しそうに笑った。
曲輪には何も言えなかった。
「おい、九字桐。」
「ハイ、なんでしょうか司令官」
聖骸布部隊出撃後、無線通信にて。
「てめぇに重要な任務を与える。耳かっぽじってよーく聞いとけ。超ゴディバ級との戦闘時に糸巻が居たら救助してやってくれ。」
「ええ、もちろん」
九字桐はニタリと笑った。
「できたら、ね。」
無線には聞こえない声でそう言った。
「さっきの九字桐って人、一体何者なんですか?」
上総と九字桐の会話を端から見ていたであろう部下の問いに上総は少し声のトーンを落として答えた。
「ああ、奴を見るのははじめてか。あれでも聖骸布部隊の隊長だよ。ただ相当なクソったれだ。いや、性格というかなんというか……あいつ、キレると手に負えねぇんだよ。」
「でも、なんか途中ニヤニヤ笑ったりして……気持ち悪いって言えば悪いですけど、そんな感じでしたよ。」
「ああ、あれはイライラしてんのさ。あいつは気に入らないことがあるとニタニタ笑いやがる。聖骸布部隊が死神隊って呼ばれてんのは残虐だからじゃねぇ。」
「え?違うんですか?」
「ああ、あいつら……というか九字桐はキレるとすべてにおいてやりすぎる。結果CaCaO討伐では一回も打ち漏らしたことがない……。が、周辺被害も馬鹿にならない。渥美半島と知多半島を島にしたりな。」
上総は戦場の方向を睨み、短く息をついた。
「絶対に敵を殺す死神。仲間をも巻き込む死神。それが死神隊と呼ばれる由縁だ。」
あと一回で東部撤退戦は終わります。でもまだまだ続くのでよろしくお願いいたします。読んでいただきありがとうございました。