東部撤退戦 一
どうも、はじめまして。こういうのもはじめてなんで何が何だか分かりませんが。とりあえず、これからがんばります!
「北北東、距離30にCaCaO確認!まもなくシールドと接触します!」
「モニターを出せ。クッソなんで衛星は、レーダーは感知しなかった!聖剣部隊に出撃準備を通達しろ!」
日本国防衛軍東部方面隊関東基地司令官、上総は大声でどなった。もとより声の大きな上官だったため、大声を出すと窓が揺れた。部下は毎度毎度この大声に耐えなければならなかった。これは400人を収容する前哨基地の司令官としての責任と誇りから来ている。
「モニター出しますッ」
シールド付近の無人機からの映像が映し出される。そこには驚愕の光景が広がっていた。
今まさにシールドを突き破らんとするCaCaOは見たこともないほど大きかったのだ。
通常の5倍はあろうかという巨体の背中には無数のとげが生え、丸太のような腕は途中で液体状になりシールドを浸食していた。
「なんだ……これは。」
「シールド浸食率、50%、60%、70%……突破されました!」
「聖剣部隊、出撃準備完了です!」
部下の声は上総の耳には入っていなかった。頭の中に『撤退』の2文字が渦巻く。
「司令官、司令官!」
「はっ、聖剣部隊に通達。座天使級の武装を許可する!撤退戦だ、心して臨め!」
撤退戦という言葉に部下たちは驚いた。まさかこの豪快な司令官がここで撤退に踏み切るとは思いもしなかったからだ。
上総はこのCaCaOのことを知っていた。
世界でも数体しか確認されていない幻の凶悪CaCaO、『超ゴディバ級』。ローマ、シドニー、マイアミ、ロサンゼルスなどの大都市は超ゴディバ級によってすでに地図上から消えていた。
聖剣部隊には時間稼ぎを指示したが、正直長く持つとは考えていなかった。
「お前ら、情報だけ持ってとっととトンズラするぞ!聖剣部隊でも長くは持たん。できるだけ多く逃げるために急げ!」
さらに大きな声で渇を入れて上総はじっとモニターを見た。モニターには奮戦する聖剣部隊の姿が映っていた。
「(この基地を放棄し、後方の都市の住民に避難勧告を出すのが最優先だ。ここで撃滅できなくても、複数部隊で戦えば可能性はある……。今は民間人被害を少なくすることだけを考えろ!)」
上総は覚悟を決めた。
「クッソ、全然効かねぇじゃねぇか!」
「ギャーギャーわめかずに砲撃に集中してください、隊長」
隊長、と呼ばれた男は「わーったよ、火採。」といいながらを照準を合わせた。
ヒト型対C魔力機甲《クルセイダー》。人間がCaCaOに対抗することができる唯一の手段。
その18メートルの巨体を動かす東部方面特別独立部隊『聖剣部隊』隊長、糸巻はすでにほとんどを理解していた。
「(敵は超ゴディバ級。この基地にある最上級武器、座天使級を使ったとしても倒すことは不可能。おさえるだけで精一杯だ。これは撤退戦。ならば我々は時間をできるだけ稼ぐのみ。)」
座天使級はマスケット銃型で、砲撃を主とし、近接戦闘能力に欠いている。通常は近接戦闘役とチームを組んで戦うのだが、今回は下がりながら撃つといった戦法しかとれない。
「隊長!このままで良いんですか!我々も反撃しないと……」
「いーんだよ靴木、こりゃあ撤退戦だ。どんだけ抑えてられるかが勝負なんだ。てきとーな所で散開すりゃあ被害も最小限に抑えられる。」
「ですが隊長――」
「ギャーギャー言ってんじゃねぇ!死ぬぞ!」
それだけ言うと糸巻きは強引に無線を切った。
「隊長がそんなこと言えるんですか……」
「るせぇ、火採。別回線に割り込むな。」
(威勢がいいのは良いんだが……)
「隊長、四番機が敵に近づいていきます!」
「マジか!靴木の野郎……俺が奴を引きつける。」
「ですがそれでは……」
そう言って二番機が遮るように前に出た。しかし、
「忠告はありがとう、だが行く。」
一番機は容赦なく二番機の腕の付け根に銃口を向けた。
「……はぁ、仕方ないですね。」
火採は眼鏡をクイッと直すと、照準が表示されたモニタを見て、笑った。
「靴木君には、後でお仕置きですね。」
「二番機火採から三番機壱岐、俺について援護を頼む。俺が奴につっこんで気を引く。奴が俺の方にきたら援護中止、散開して退路を確保。残る五番機曲輪から八番機倉居は四番機から奴が離れたところを見計らって救助に向かえ。ついでに靴木の野郎を止めろ。それじゃあ、開始!」
各機が砲撃をやめて陣形を組み直す。
糸巻が改めて四番機を見るとシールドは今にも破られそうになっていた。
「靴木の野郎……ギリギリじゃねぇか。ただ、シールドがまだ破られてねぇのはどういうことだ?うーん……まあ……いっか。」
そう言ってテキトーに納得すると二番機と三番機を引き連れて勢いよく駆けだした。
「よっしゃぁ、てめぇら覚悟しとけよ!」
糸巻はそう叫ぶとモニターに武装一覧を表示する。
「照準に時間かかるし銃だと面倒だな・・・・・・。近接戦闘用武器は……基本装備の超硬質ブレード、か。長さは……脇差しくらいだな。扱いやすそうだ。」」
超硬質ブレードを二振り逆手に持つと、さらにスピードを上げて走り出す。
目標はCaCaOの露出器官の中でもっとも脆弱な部分、眼。
「本命はこっちだろうがお嬢さんッ!」
「た、隊長!逃げてください!こいつは――」
「るせぇぇぇぇ!」
大きく地面を蹴って跳躍、脚部の魔力ブースターから変換なしの魔力を直接噴射したそれは通常以上の位置エネルギーを獲得する。ただこれだけでは超ゴディバ級には足りない。
「力学的エネルギー保存則って知ってるか?」
「グルルルル」
糸巻が高く跳躍したのを見て、CaCaOは腕を顔の前で組み、防御しようとした。
「それってさ、魔術は適応外なんだぜ!」
そう言うと魔法陣が現れ、機体が一瞬のうちに消えた。そして――
「グギャアアアアアアアアアアア!」
防御のタイミングが遅れたCaCaOの片眼は、真っ赤に塗れていた。機体は急加速しすでにそこにいたのだった。
「力学操作魔術、CaCaOにはわかんねぇか。」
糸巻は剣を眼から抜くと急いで後方へ飛び退いた。
「(クッソ、魔力消費も体への物理的負担もハンパねぇなこりゃ)」
CaCaOは怒りと興奮のこもった眼でモニター越しに糸巻をにらむ。
「よっしゃ、お嬢さんがやっと振り向いてくれたぜ。火採、壱岐お前らは予定通り退路の確保をしてくれ。ついでにマーカーを置いてくれると助かる。」
「そ、それはつまり……」
「ふんっ、そうさ」
糸巻はニヤッと笑った。
「殿の殿は、俺に任せろ。」
読んでいただきありがとうございます。正直相当短いと思いますが、時間の都合上こんな感じです。へっぽこですみません。これからがんばります。