20.冷たい三日月3
20.冷たい三日月3
空中ブランコに乗った後、きぐるみ達のショーを見たり、他のアトラクションに乗ったりして。
お昼はパーク内のファーストフード店で済ませて。
それからまたアトラクションに乗って。
時間が経つのなんてあっという間だった。
コーヒーカップ馬鹿みたいに回して目を回したり。
お化け屋敷で無駄に騒いだり。
ムカツク奴だけど、聡といると、なんだかすごく楽しかった。
「あ、見て。このネックレス可愛い」
空が暗くなって、至る所がライトアップされ始めた頃。
たまたま通りかかったお土産やさんの前で、思わず足を止めた。
「ネックレス?」
私の見つめていたネックレスを、隣から聡も覗き込む。
それは、三日月の形をした、ゴールドのネックレス。
先端には、小さなトルコ石が埋め込まれていて、なかなか見ない組み合わせについつい惹かれてしまったのだ。
「ね?可愛いでしょ」
じっとネックレスを見ている聡に問いかける。
お前には似合わねえよって笑うだろうと思ったから、そうやって真剣にそのネックレスを見ている聡が、少し意外だった。
「聡?」
なかなか動かない聡のワイシャツを軽く引っ張る。
すると聡はぱっと顔を上げて。
「おねーさん、この三日月のネックレスちょうだい」
そう言った。
・・・はい?
聡に呼ばれた若い店員が店の中から出てくる。
「聡?」
私のことは軽く無視して、その店員に五千円札を一枚渡す聡。
店員はおつりをとりにレジの方へいき、戻ってくると、千円札一枚と小銭をいくらか聡に渡した。
「袋にお入れ致しましょうか?」
「あ、このままで結構です」
ありがとうございましたという声を背中に受けながら。
また聡に腕を引っ張られる私。
もう空はすっかり暗くなっていて。
おおきな時計台は、もうすぐ八時を指そうとしていた。
「聡?」
呼びかけても止まらない。
「聡?」
「最後にあれ乗るぞ」
「あれ?」
今向っている方を見る。
そこには、何色もの光でライトアップされた大きな観覧車がゆっくりと回っているのが見えた。
「観覧車?」
私がきくと、
「最後には観覧車って。お決まりだろ?」
聡は振り返って笑いながらそう言った。
******
もうすぐ閉園ということもあり、だんだんと人の少なくなっていくドリームパーク。
昼は込み合っていたレストランも、ガラス窓の向こうに見える席はがらりとすいていて。
だけど観覧車のところまで来てみると、若い男女で酷く込み合っていた。
聡と私が、観覧車待ちの列の最後尾に並ぼうとしたとき、
「聡ー!尚美ちゃーん!」
列のずっと前の方から声がして、見ると光太先輩と裕子、そして亜理沙と祐樹先輩が手を振っていて。
私達はその四人の所へ割り込ませてもらった。
「なんか久しぶりー」
そう言って笑う光太先輩。
その言葉に、裕子たちも笑う。
「なんかはぐれちゃったね」
そう言ったのは亜理沙で。
まだ真相に気が付いていない様子。
そんな亜理沙のに、そ知らぬ風に相変わらず爽やかな笑顔を浮かべている祐樹先輩。
うん。
なにはともあれ、それぞれ結構楽しかったみたい。
大きな観覧車はいくつもコンテナがあって、順番はすんなりとまわってきた。
まず亜理沙と祐樹先輩が乗って、次のコンテナに裕子と光太先輩が乗り込んだ。
私たちにまわってきたコンテナはうすい青色で。
「足元にお気をつけ下さい」
ドアを押さえながらの係りの人の言葉を聞きながら一歩中に足を踏み入れた。
身を少しかがめて、私の跡に聡も乗り込む。
その時
――尚美!――
「へ?」
名前を呼ばれたような気がして、ドアの向こうを振り向いた。
だけど私の知っている人は誰もいなくて。
「どうかしたか?」
「ううん・・・なんでもない」
不思議そうな顔をする聡。
コンテナのドアは、静かに閉められ、チェーンが掛けられた。