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世界掴む手のひら  作者: ケー/恵陽
三、この小さな村から始まる反逆
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ちょっと短いですが。

 家主が居ない家の中を眺めて、考える。董に片付けろと言ったのはそのままの意味だろうか、と。その可能性は高いが、本で埋もれたこの家にはどうも普通とは違う本が埋まっているように思える。

 秦から彼の両親はオエバとブロウクの研究をしていたと聞いている。

 ざっと見渡した限りでも、新しく有名な本もあれば古すぎて触りたくない本もある。

 そのままの意味のようにも思えるがどちらにしても片づけは必要だろう。董は溜息を一つ吐くと、分類していこうと本の山に手を伸ばし始めた。研究書もいくつかあるようだ。神殿の関係者だったのだろうか。

 簡単に分類をし始めたが、どうやっても片付かない紙の束に段々憎しみすら抱いてきた。これではただ本を移動させただけだ。それでもやり始めたことを止めるわけにはいかず、もくもくと分けていく。

 その中で一冊の童話に目を引かれたのは、何か天啓があったのかもしれない。

 董はその童話を知らなかった。秦から色々と教えてもらったお話は多岐にわたるし、自分に関わるものも多かった。ブロウクという存在はひたすら悪として語られるのだと思っていた。それなのに今董の手にある童話にはブロウクとオエバが手を繋いでいる表紙がついていた。

 タイトルはかすれて全部は読めない。それなのに董は何故か目が離せない。表紙を捲ると、短いお話が始まる。


 ぼくは力がつよいんだ。

 おもいものもはこべるし、大きなどうぶつだってたおせる。

 だけど いつもひとりだ。


 ぼくはつよい。

 ぼくは力がつよい。

 みんな ぼくをたよりにする。ぼくはおもいものをはこんで、大きなどうぶつをたおす。みんながはこべと言ったらはこぶ。たおせと言ったらたおす。

 たよりにされている。

 だけど いつもさみしい。


 ある日 おんなのこがやってきた。

 ぼくはおんなのこと、はなしをした。


 おんなのこのはなし。

 ぼくのはなし。

 みんなのはなし。

 うみのはなし。

 そらのはなし。

 せかいのはなし。

 あらそいのはなし。

 そして ぼくとおんなのこのはなし。


 ぼくは力がつよい。それだけがじまんだ。

 おんなのこはせかいのいたみをしっていた。

 なにもできないぼくを、おんなのこはたよった。

 ふたりでかんがえた。

 かんがえて、みんながなかよくなれるように力をつかうことにした。

 あらそいのないせかいにしようときめた。

 

 ぼくは力がつよいんだ。

 おもいものもはこべるし、大きなどうぶつだってたおせる。

 せかいをへいわにだってできる。

 だから もうさみしくない。

 おんなのこもいっしょだ。

 だから もうひとりじゃない。


 そこで、お話は終わる。

 董は何故か自分とセトを重ねた。力が強い自分のこと、そして世界の癒しと呼ばれるオエバのこと。

 秦からもこの童話のような話は聞いたことがない。もしかしたら知らなかったのかもしれない。探せば他にも自分に関わることが出てきそうで、董は暫し部屋を散らかすことになった。

 いくつかだが面白い発見があった。童話に関しての考察を見つけたのだ。それは秦の字ではなかったから、おそらく彼の両親の見解をまとめたものだろう。

 それに習うならば、ブロウクとオエバは対となる存在だ。それはなんとなく董でもわかっていた。けれど一緒に居てはいけないものだと思っていた。そうではない、と考察文が記されている。

 オエバとブロウクが共に手を携えて世界を思うことで、平和の道が拓けるのだという。ただそれが、具体的にどういうことかはよくわからなかった。

 他に、もっと、と本の山を漁る。探せばこの場所は宝が眠っていそうだった。


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