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一億玉砕  作者: 黒猫
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第壱話「初陣」

「そんなところに寝ていたら死ぬぞ!!」

貝塚中尉に手を借りて起き上がった。

俺はまだ生きていた。



20XX年某日

日本国憲法大幅改正。

国軍を創立。

自衛隊を国軍の傘下に。

日本国軍予算大幅増額。

徴兵制度制定。


クロネコミクスのせいで日本も立派な軍事大国になってしまった。

毎年、高校3年生男児は国軍による厳しい身体検査を受け、合格者は予備役に就く。

不合格者は筆記試験を受ける。合格者は戦場ではなく、司令部勤務の軍人としてなど後方で

天皇陛下に尽くす。

両方共落ちたら3年生をもう一度やり直す。

つまり、かつての隣国と同じように国民男児は全員、兵役に就くことになる。


自己紹介はまだだったね。

俺の名前は黒猫隼人。

首相と同じ名前なのだ。

去年まで高校生だったのだが、体育成績クラス平均以下の俺が兵役に就くことになった。

役者志望だったのだが・・・

これも国民の義務なのだ。

いけない!自己紹介している暇じゃなかった。

入隊式があるんだ。じゃあね!!



一人で自己紹介をしていた俺は、ダッシュで駐屯所に向かった。

ゲートが見えてきた。

「パスを見せてください」

アサルトライフルを持った兵士1名と女性自衛官が急ぐ俺の前に立ちはだかった。

「ほい!」

ポケットから素早くだし、素早く突っ込んだ。

兵舎の前にはすでに新兵が並んでいた。

その横には一等兵クラスの兵士たちが並んでいる。

見分けなら付く。新兵たちは隊列がぐちゃぐちゃだからだ。


荷物をベットになげ、帽子を深々とかぶり兵舎を飛び出し、隊列に加わった。

10秒もしないうちにお偉いさんが姿を現した。

「気をつけ!敬礼!!」

新兵大隊の連隊長を務める加藤という上官が叫んだ。

横の先輩たちはビシッとかっこいい敬礼。

俺たち新兵はバラバラ。

焦って帽子を飛ばしてしまう奴もいる。

連隊長は新兵たちをしばらく睨みつけていた。

「なおれ!」

新兵たちは、いち早く気をつけの体形に戻った。

お偉いさんは、周囲を見渡した。

しばらくし、お偉いさんがしゃべりだす。

「えー。諸君。おはよう。いい朝ですね。」

校長先生ですか。

俺は、心の中で突っ込んでしまった。

心の中で笑っていると、また喋り始めた。

「私は、諸君たちが所属する黒猫首相直属陸軍特殊作戦師団"ブラックキャット"の師団長だ。」

ブラックキャット?

黒猫首相の名前を英語にしただけ・・・

いや。俺の名前を英語にしたっていう解釈もできるのか。

「早速だが、チャイナドラゴンが呉港を襲撃、占拠した。」

それなら、知っている。

今朝のテレビでやっていたし、朝刊にも載っていた。

それがどうしたのだろう。

「奪還は我が師団が行うことになった。」

無茶だ・・・無茶すぎる。

訓練なしに戦闘するなんて映画じゃあるまいし、不可能だ。

「えー。呉港周辺奪還作戦に参加する分隊は各分隊の分隊長に報告してある。

 特に報告を受けていない分隊は射撃訓練を受けて後続部隊として出発してくれたまえ」

そう言うと、朝礼台から降りて、止めてあった運転士付きジープに乗り込んだ。


「よし。第6分隊は第2訓練所にて射撃訓練を行う。」

第6分隊は俺の分隊。

言い直そう。俺が所属する分隊。

1分も経たないうちに訓練所についた。

意外と広い。

サイドアームから、重機関銃まで揃っているようだ。

俺は突撃兵なのでM8カービンを使うこととなった。

M8とは、わかった方もいるだろうがM4の後続銃。

「よし。高橋。撃ってみろ」

通信兵の高橋に向かって、中尉は言う。

高橋は構えたが、一向に弾が出てこない。

「高橋。銃の撃ち方もわからないのか。」

中尉は、厳しい目つきで高橋を見る。

「いいか。安全装置を外さないと弾は出ない。」

ズガーン。

中尉は、実践してみせた。

高橋は、しばらく喋ることができなかった。

「よし。じゃあ黒猫。撃ってみろ」

俺は、中尉がしていたことをそのまま真似し、

腰撃ちで発砲した。

「ばかやろう!腰撃ちで当たるわけがないだろう。腰を低くして、ちゃんとサイトで狙え。」

やってしまった。早速「ばかやろう」と言われてしまった・・・


3時間後

「よし。乗車!」

分隊員たちはハンヴィーに乗り込んだ。

先頭に機銃搭載のハンヴィー、2台目に軽装甲車両、3台目に後ろがオープンのハンヴィー。

オープンのハンヴィーは戦闘よりも輸送に特化したハンヴィーだ。

それから、4台目は俺たちが乗っている。乗っている車両は3台目と同じく、オープンハンヴィー。

5台目も6台目も同じくオープンハンヴィー。

その後ろは機銃搭載のハンヴィー。

この説明だけで何回ハンヴィーといっただろうか。

途中で機甲師団と合流し、全10台の車列が出来上がった。


広島県呉市に入ると、いたるところにパラシュートがたたんで置いてあった。

どうやら、敵落下傘師団がここら辺に降下したのだろう。

不意に、分隊長が喋りだす。

「自己紹介がまだだったな。俺は貝塚だ。階級は中尉。よろしくな」

いきなり話し出すからほかの戦闘員たちも戸惑っているようだ。

「じ、自分は高橋耕平といいます!!か、階級は二等兵!兵科は通信兵です!」

いかにも真面目そうな高橋が緊張しながら自己紹介した。

ほかの戦闘員たちも次々に自己紹介をした。


「え、えーと俺は・・・」

中尉がこっちを向いた。

「えーと、自分は黒・・・」


ドガーン


自己紹介をしていたら爆発音が前の方から聞こえた。

「敵だ!」

第5分隊長が叫んだ。


ズガーン


第7分隊が乗るハンヴィーにRPG-9が直撃した。

「クソッ!降りるんだ!早く!」

貝塚中尉が言った。

銃弾が飛び交う中、車両の影に皆、身を隠した。

貝塚中尉は、身を隠しながら運転席を見に行った。

どうやら、運転手の安否を確認しに行ったようだ。

貝塚中尉は、運転席をチラッとみてすぐこちらに戻ってきた。

どうやら、ダメだったようだ。


「うげっ!!」

首を撃たれた戦闘員が倒れこむ。

「斎藤!負傷者だ!」

貝塚中尉は斎藤上等兵に叫んだ。

すると、さすがは経験者。斎藤上等兵はすぐに応急処置を行った。

「黒猫!名前は!?」

貝塚中尉は下の名前を聞いてきた。

なんでこんな時に・・・

「隼人です!」

自分の名前を大声で叫んだ。

「よし。隼人二等兵!あの機銃を使うんだ!」

貝塚中尉は無人になった最後列のハンヴィー搭載の機銃を指差して叫んだ。

「了解です!」

俺は、頭を下げて機銃に向かった。

「RPG!!!」

誰かが叫んだ。

「うわぁっ!」

RPGのロケットが俺の近くで爆発した。

その拍子に俺は吹き飛んだ。

何が起きたのかわからなくて、俺は放心状態になっていた。

「そんなところに寝ていたら死ぬぞ!!」

貝塚中尉に手を借りて起き上がった。

俺はまだ生きていた。

防弾チョッキを見ると、何かの破片が刺さっていた。

まさに間一髪だった。


(第壱話終)


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