がーる・とーく・とぅるーす!
こんばんは、辺 鋭一です。
なんとか一週間で投稿できました。
では早速、行ってみましょう。
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「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ……」
「……おーい。そろそろ戻ってこーい」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だ……」
「……ああもう、また物理的手段でリセットしなきゃダメかしら……?」
「これは夢だこれは夢だこれは夢だ。……そうだ、これは夢なんだ。だったら早く目を覚まさなきゃ……!」
「……ええと、首の後ろ側を右からななめ38°の角度で薙ぎ払うように――」
「さあ、非日常に塗れた夢から覚めて、日常溢れる現実世界へ、I can fly!!」
「――ちぇすとーー!!」
「――ぐぎゃふ!?」
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「……さて、やっと落ち着いたところで話を始めましょうか。まずは雨水君、質問を好きなだけどうぞ」
来客用の机を挟んで僕の対面のソファーに座る会長は、首をさすっている僕にそう促してきた。
正直、聞きたいことが山のようにあるので何から聞けばいいかわからなくなってくるが、とりあえず一番気になることを尋ねてみた。
「じゃあまず問一。……会長は何者ですか?」
「さっきも言ったけど、吸血鬼の女の子よ♡」
無駄にかわいらしさをアピールしている点には一切触れないことにして、次の質問に移る。
「……じゃあ、どうして太陽の光を浴びても平気なんですか? 吸血鬼という種族が伝承通りの存在なら、日光に弱いはずですけど?」
「――あー、その話は少し複雑になっちゃうのよねぇ……。ちょっと説明が長くなるけど、良いかしら?」
会長にそう言われ、僕は時計を確認した。
もうすでに気が付いていたことではあるが、気絶しているうちにホームルームの時間は過ぎてしまっている。
そのことについては『担任の先生には、私の仕事を手伝ってもらったから出られなかった、って連絡しておいたから、悪いようにはされないはずよ』という会長からのお言葉があるので、そこまで心配はしていない。別に授業をさぼったわけでもないのだし。
生徒会役員であるというだけで僕はかなり信頼を置かれているし、その信頼を裏切るようなことも今までしたことはなかったから、少なくとも先生や同級生からは変な目で見られることはないだろう。
そして、今回の原因ともなった仕事については十分余裕をもって取り組んでいるため、今更一日位潰れても問題はない。
家に帰るのが遅くはなるが、それも後で『生徒会の仕事があるから遅くなる』という連絡をすればクリアできる。
とりあえず会長の『ちょっと長い説明』を聞くぐらいの余裕はある。
ならば、
「……ええ、大丈夫です。時間は十分ありますから、詳しく教えてください」
「そう。だったら説明をはじめるわ」
そう言うと会長は目を瞑り、何事かを考えるそぶりをする。
おそらく、説明のために文章を頭の中で整理しているのだろう。
いつもはふざけた言動を繰り返している会長だが、生徒会長という役職をこなすのに十分な能力は持ち合わせているのだ。
もっとも、それを職務だけでなく悪戯に悪用することが多々あるのは、困りものだが。
そんなことを考えているうちに言葉の整理を終えた会長は、目を静かにあけると息を一つ吐き、またすぐに吸って新鮮な空気を肺の中に満たしてから、言葉を紡ぎ始める。
「まず大前提として、吸血鬼という種族についての説明からしていくわ」
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「吸血鬼という種族の生態については、物語などの伝承の通りと見てくれて概ね間違いはないわ。夜に生き、様々な動物の姿を取り、霧と化し、人を襲い、血をすする。吸血行為によって眷属を増やし、人を魅了する美貌と魔眼を持ち、不老不死で不変の存在。反面、十字架や信仰の力に弱く、にんにくを嫌い、聖水を恐れ、流水の上を渡れず、招かれなければ他者の空間に入れず、銀によって傷つき、何より太陽の光で身を焼かれる。殺すには棺桶の中で眠っているときに杭を心臓に打ち込むしかない。――そんな化物が、私たち吸血鬼よ」
最後の言葉を自嘲気味に言い放った生徒会長は、しかしすぐにいつも通りの笑顔に戻ると、
「……でもね、それらの特性を全て持つのは、純粋な吸血鬼だけなのよ」
「――純粋な、ですか?」
というか、純粋じゃない吸血鬼って何なんだ?
「そう、純粋な吸血鬼。って、こんなこと言うと人権団体とかに怒られちゃいそうだけどね。……私たち吸血鬼の一族も大分前からは自由恋愛が認められてきていてね。人間をはじめとして、様々な種族と結婚して、子を成すことに寛容になったのよ。そうなれば当然、代を重ねるごとに自然と吸血鬼の血は薄まっていくことになった。それと同時に吸血鬼の特徴が現れる度合いも、その人がどれだけ吸血鬼の血をひいているかに比例して、減っていったの……」
「……じゃあ、会長は――」
「そう、中途半端な吸血鬼同士の間に生まれた、同じく中途半端な吸血鬼。だから日の光を浴びても平気だし、吸血衝動もほとんど無いわ。ちょっと日焼けしやすいぐらいね。……まあその分利点の方もほとんどなくて、せいぜいが血を飲んでから少しの間身体能力が跳ね上がるくらい。吸血鬼としての力がほとんどないから眷属を増やすことも不可能に近いしね。だから、私にかまれても吸血鬼になったりはしないわ、安心して。……ああ、もちろん不老不死でもないから、私は今見た目通りの年齢よ。さすがにニンニクとかは苦手だけどね。吸血鬼以前に女の子として」
『中途半端』という言葉を使う時の会長は、なんだかとてもつらそうだった。
きっとその生まれのせいで、僕みたいな普通の人間には想像もできないような辛い目にあってきたのだろう。
だが、その後の冗談を言うような口調から察するに、もうその問題は会長の中で『終わって』いるようだ。
まあ、終わっている話なのにいまだに表情を曇らせる程度にはきつい話らしい。
――が、正直僕には何の関係ないどうでもいい話だと思うので、華麗にスルーすることに決めた。
大体、僕に対しての説明中にどうでもいいことを思い出して考え込むなんて、失礼だ。
今は僕の身に起こった不可解な出来事について話しているのであって、わき道にそれて会長の嫌な思い出にまで触れる意味はない。
僕の役職は『庶務職』。その役割には、会長の補佐も含まれている。
そして、目の前にいる会長はとにかく気が多い。
普通に仕事をしていても、すぐに他の事を考えだして気が散ってしまい、仕事が止まってしまう。
僕は会長がそうならないようにいつも目を光らせ、会長が気を取られそうなものを排除し、気がそれそうになったら仕事の話を持ちかけ、時には物理的な手段を用いて会長に仕事をさせてきた。
今回も今までと同じだ。
会長が他の事に気を向ける前に僕が動き、会長に説明義務を思い出させる。
たったそれだけのことができないのでは、現生徒会の庶務なんて勤まるわけがないのだから。
だから僕は、いつも通りに行動する。
まずはコホンと咳払いを一つして、
「――では、次の質問です。どうしてここで血を飲んでいたんですか?先ほどの説明の通りだとすれば、会長は血を飲まなくても大丈夫なんですよね? だったら、生徒会室で真昼間から飲まなくても良かったんじゃないんですか?」
この質問は、どうしても聞いておきたいものだった。
なぜならさっき会長は、『吸血衝動はほとんど無い』と言ったのだ。
『ほとんど』ということは、『少しはある』という事でもある。
場合によっては、会長の吸血衝動がいきなり起こることも覚悟しておかなければならない。
そう言う場合に備えて、いつどんな場合において条件が満たされ、血を欲するようになるのかという事だけは確かめておかなければならない。
「……そのこと、どうしても聞きたい……?」
「ええ、ぜひ聞かせてください」
やはり答えにくい質問だったのか、会長は眉を顰めて考え込んでしまった。
そして少ししてから僕の方を見て、
「事の全容を放す前に、この世界の一般常識から話して行くことにするわ」
「……ええ、どうぞ。その方が話がしやすいのならば、そのようにしてください」
しかし、ただでさえ人外な吸血鬼の生態に、一般常識が何のかかわりがあるのだろう……?
「まず私たちが今いるこの国、日本では、大まかに四つの血液型で人を分けているわ」
「ええ、A、B、O、ABの四つですね」
「そう。そして、日本においてのそれぞれの血液型を有する人口の割合は、A型40%、O型30%、B型20%、AB型10%、という数値で大体落ち着いているそうよ」
「まあ、ごくまれにRh-という特殊な血液型を持つ方がいるそうですけどね」
それぞれの血液型において、その99%がRh+という型に分類にされる。さらにはそれぞれの血液型で輸血できる血液型とできない血液型がはっきり決まっているし、何よりRh-の人にはそれぞれの血液型のRh-の血液しか輸血できないという特徴があるため、Rh-の血液型を持つ方はリストに登録されているらしい。
ちなみに、一番数が少ないAB型のRh-を持つ方は、日本において数千人に一人だそうだ。
「――そう、今回の事件の発端は、まさにそのRh-の血液なのよ」
その言葉を聞いた時点で、僕はとても嫌な予感を覚えていた。
思い切り眉をゆがませた僕の様子を一切気にすることなく、会長は演説を続ける。
「たとえばそう、日本において少数派であるAB型の、しかもさらに希少なRh-型の血液が、長期間冷凍保存されていて廃棄される直前ということで私の元に回ってきた場合、AB型の血液が好物である私はいかにして興奮を抑えたらいいかわからなくなっても仕方がないと思うのよ」
「………………………………………………ええ、そうですね……」
「それは知っての通り、とても貴重な血液よ。当然飲む時・場所・場合は良く吟味して、最高のシチュエーションでじっくり味わって頂くのが、この血を提供してくれた方に対する礼儀だと思うでしょう?」
「……………………………………………………………………………………………」
ほら、思った通り話がどんどん変な方向に流れていく……。
「さて、それではどんな状況で飲むべきかという難問に対し、私はひどく悩んだわ。寝ても覚めても考えるのはいかにおいしく血を頂くか、という事のみ……。いくらでも考える時間があれば私自ら手配して最高の状況を創り出すことも可能だったけど、生憎その血液が私の物となったということが判明したのはつい三日前の事……。しかもおいしく飲めるのは届いた日の丸一日のみ……」
「…………………………ヘェ、ソウナンデスカー」
「結局私は悩みに悩みぬき、何も思いつかないまま今朝、その血液のパックをクール宅配便で受け取ったわ」
「無駄なところで庶民的ですね。どこかの通販ですか?」
僕のツッコミにも一切耳を傾けず、会長はやたらとオーバーなしぐさを伴って話し続けている。
「そして、キンキンに冷やされたそれを手に取って眺めていたとき、私の頭の中にふと声が響いたのよ。その声曰く――」
――これ、日光浴しながら飲んだら最高に気持ちよくね?
「神からの啓示を無視するわけにはいかないでしょう? だから私はそれに従い、日光を浴びることができて、なるべく人目につきにくい場所である生徒会室で血を飲むことにしたのよ!!」
「あんた大馬鹿野郎だな!!」
思わず罵倒してしまった僕は悪くないと思う。
……ついでに、ちょっとすっきりしたのも普通の事だろう。
キャラが多少変わっても仕方ない仕方ない。
というか、もう少し吸血鬼としての自覚を持ってほしい。
なんで吸血鬼が日光浴だよ。なんで吸血鬼(異端者)が神の啓示受けちゃうんだよ。
「大体、どうして生徒会室なんですか!? 確かにここにはほとんど人は来ませんし、窓の位置から考えてもお昼に良い日差しが入りますけど、だからと言って誰も来ないわけじゃないんですよ!? 生徒会室に用がある一般生徒が来る可能性だってありますし、何より生徒会役員だったら会議とかが無くても時々来ることがあるでしょう!? 現に僕がここに来たわけですし!」
「まあ、その通りではあるんだけどね……。でも、あの時間なら一般生徒なら用があれば生徒会室じゃなくて各委員のクラスへ直接行くでしょうし、もしここに来たとしてもノックの一つはするでしょう? あなたみたいにノックなしで飛び込んでくるなんて、考えもしなかったわ」
「……ぐぅ……」
確かに無礼なふるまいであったことは事実だから、そう言われると反論できない。
会長がここでやっていたことは、非常識ではあるが違法なことではない(血液の入手先を考えなければ)。
しかも、僕から見れば非常識極まりない事であっても、会長本人からすれば生きるのに必要な事、栄養補給なのだ。
今回の問題は、極論すれば『会長がパンを生徒会室で食べていたところに僕が飛び込んできて大騒ぎした』と、そう言う風にとらえることもできるのだ。
これがお酒とかタバコとか危ないクスリとかならともかく、ただ単に飲み物を飲んでいただけなのだから、吸血を必要とする種族である彼女に対して『飲むな』と強く言うことはできない。
「……ああそれと、私の場合は吸血衝動はかなり薄い、っていうか、飲んだ血をおいしく感じる程度よ。だから定期的に飲まなくても生きていけるし、禁断症状とかの類は一切出てこないわ。私にとって血液は、いわば嗜好品なのよ」
「だったらおとなしく自宅で飲んでてくださいよ……」
もう反論する気力も失せつつあった。
嗜好品に対してなんで危ない橋を渡るんだよ……。
「……まあ、ここで血を飲んでいた理由はわかりました。では次の質問です。――なんで、この学校に通っているんですか? 会長の学力はかなりの物です。そこは不本意ながらも認めます。ですが、だったらなぜごく普通の学校であるこの学校に在籍し、さらには吸血鬼だってことがばれる危険を冒してまで、生徒会長をしているんですか?」
僕の質問に、会長は少しだけうつむき、目を閉じる。
数秒後、ゆっくり目を開いた会長は、真剣な目で僕を見て、
「……確かに、私には吸血鬼が集められる専門の学校に通う、という選択肢もあった。でも、あそこは私には合わないって、見学に行って思い知ったわ。だから私はこの学校に来たの。ここなら、私を受け入れてくれると思ったから……」
「ここならって、ここはどこにでもあるようなごく普通の学校ですよ? 確かに設備もしっかりしてますし、雰囲気も悪くないです。でも、日本中探せば同じ条件の学校はいくらでもありますよ。……なんで、数ある学校の中でここを選んだんですか?」
実際に通っている僕が言うのもなんだが、この学校は設備は少々いい物の、それ以外はごく普通の、特徴が無いのが特徴とも言えるような学校だ。
入学案内などのパンフレットを見ても、書いてある文章はありきたりであり、他の学校の説明文の無難なところを切り取ってきたようなことしか書いていない。
特に部活動に力を入れているわけでもなく、目立った成績を出している部活も無い。
学力に関しては中の上ぐらいで、受験クラスなんてものは存在しない。せいぜい学年の途中で理系と文系に分けられるぐらいだ。
唯一の特徴と言えなくも無い物は卒業後の進路における就職の割合が少し多いことぐらいであり、内訳は大学進学(またはその準備)が7割ほどで、残りは就職となる。
噂を信じる限りでは、生徒会長は進学組だという。しかもかなりの難関校らしい。
どう考えてみても、この学校が会長にふさわしい物だとは到底思えなかった。
そんな僕の疑問を理解できるのだろう会長は、とても言いにくそうな顔で僕に尋ねてくる。
「あー、知りたい? どうしても?」
「どうしても知りたいです。教えてください」
というか、さっきから会長は妙なところでもったいぶっているが、実際には大したことは言っていない。
だから、この疑問の答えだって大したことはないのだろう。
「……後悔、しない……?」
「しません」
「……絶対?」
「くどいですよ会長。僕は絶対に後悔しません。だからさっさと理由を話してください」
何故だか今回に限り会長は異常に食い下がってきたが、ついに観念したのか大きく息を吐くと、ぽつぽつと話し始めた。
「……あのね、落ち着いて聞いてね? この学校は、貴方が思っているより普通じゃないの」
「……普通じゃない? どういう事ですか?」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
自分が普通じゃないのを棚に上げて、僕の通う学校まで巻き込もうというのか。
「……この学校はね――
――私を含めた全生徒の約四割が、ニンゲンじゃないの」
「……………………え?」
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「――つまり会長の言ったことをまとめると、この学校は人外たちが人間社会に馴染むための施設として、理事長である反川 太刀氏が作り上げた教育機関兼実習施設であり、様々な種族の人外たちが人間たちとのふれあい方を学ぶために在籍している、と。つまりはそう言う事ですね?」
「ええ、あってるわ。ちなみにその性質上、おおっぴらに自分が人間じゃないと触れて回るわけにはいかないから、基本的に皆自分の種族を隠し、人間として生活しているわ。それと、こんな施設はここだけじゃなくて、世界各国に全部で100ほど散らばっているわ。まあ、日本にはここだけだけど」
「そして、それらの人外たちを導き、無茶なことをしないように監視する役割を秘密裏に担うために、歴代の生徒会には必ず一人は人外が紛れ込んでいる、と」
「そうよ。ちなみに先代の生徒会役員は、会長と書記がこっち側の人だったわ」
「……すいません、ちょっとそこの窓から外に飛び出してきて良いですか?」
「やめなさい。さっきから話を少し進めるたびに雨水君がそうやって錯乱するんだから、そのたびにビンタかまして正気に戻す私の身にもなりなさい。いい加減掌が痛くなってきたわ」
そう言って会長は真っ赤になった掌を僕に見せてくる。
だが忘れないでほしい。
僕の頬も同じぐらい、いやそれ以上に真っ赤になって腫れ上がっているであろうということを。
「大体、雨水君は私の事吸血鬼だって疑ってたんでしょう? それってつまり、人間以外の存在がいる、って信じてたってことでしょう? だったらなんで私が正体をばらしたり、他にも私みたいな人がいるってわかったときにそんなに取り乱すのよ?」
「そんなの、一切信じてませんでしたよ。僕はただ、会長のいつものいたずらだと思ってました」
「……じゃあ、なんであれだけ執拗に質問を繰り替えしたのよ? どう考えても私の正体を暴こうとしているようにしか思えなかったわよ?」
呆れたようにそうのたまう会長だったが、全くもってわかっていない。
「確かに正体を暴こうとしていたのは事実です。ですが、僕はその正体が『人間』であると信じ切っていましたし、先ほどまでは人外なんてものは存在しないと確信していました。日常を愛する僕の身近に人外という非日常が存在するということを信じたくなかったから、予測と現実が違うということを証明したかったからこそ、真実を求めたんですよ」
「……で、その結果がこれ、と?」
そう言ってニヤッと笑った会長の口元から、大きな八重歯――吸血鬼の牙が見えた。
僕はそれを見て深く、深く息を吐き、
「何と言うか、幽霊の存在を否定する材料を集めている過程で本物の幽霊と友達になってしまったような感覚と言うか……、宇宙人は存在しないということを決定する会議で宇宙人の賛同を得ているような気分というか……」
「なんだかよくわからない例えだけど、とりあえずシュールな光景ね、それ」
わかってくれるんだったら僕を非日常の世界に引き込まないようにしてほしかったです。もう遅いですけど。
「……とりあえず、話を戻して質問の続きと行きましょうか。それで、この学校にはどれくらいの種類の人外たちがいるんですか?」
「どれくらい、っていわれてもねえ……。とりあえずいっぱいいるわよ。例えば有名どころを挙げていくと、一反木綿に猫又、片目の隠れた髪の毛妖怪に付喪神各種、あと鬼や人狼なんかもいたりするわね」
数多くの妖怪や怪物の名前を挙げていく会長だったが、僕が気になったのはその中の一つだけだった。
――『鬼』――
これについてはとても嫌な予感がする。
……というか、心当たりがありすぎるのだ。
なんといっても、そのまま名前にその文字が入ってるし。
「……あの、会長。いま言った『鬼』についてですけど……」
「あら、鬼の子に興味があるの? 今この学校に在籍している鬼は一人だけだけど、かなり有名な人よ。誰だかわかる?」
ええ、わかりますとも。
だって、つい少し前にぶつかりましたもの。
――と、そんなことを言おうとした瞬間に、生徒会室の扉から『こん、こん、こん』という音が響いてきた。
どうやら客人の、よう、だ……?
「あら、噂をすれば、ってやつかしら。たぶん鬼の子よ。はーい、どうぞー!」
いやいや待ってくださいよ生徒会長。今扉を開けてはいけません!
だって、扉にあるすりガラスはそこそこ高い位置にあって普通なら頭の天辺ぐらいしか見えないはずなのに、今くもりガラスは真っ白になってますよ?
ははは、まるでYシャツの胸の部分が映っているみたいに見えますよ……?
――ああ、開けちゃダメ、ダメですってば……!!
そんな僕の思いもむなしく、扉は『ガラガラ』と音を立てて開けられた。
そこに立っていたのは、扉よりも大きな体を持った、一人の男子生徒だった。
「ああ、わざわざご苦労様、――河原君」
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ああ、僕の命はどうなるんだろう……?
●
はい、そんなわけで第二話でした。
血液型の知識については、あんまり触れてやらないでください。
所詮はにわか仕込みの付け焼刃ですから……。
また、突然の思い付きで、各話のタイトルを小説タイトルに合わせた形にしてみました。
お気に召さない場合は最初の形に戻したいと思いますので、その旨を感想までお願いします。
次回はこの続きからお送りします。
また一週間で投稿できればいいなと考えてますけど、どうなるかはわかりません。
それでは最後になりますが、
ここまで読んでくださった貴方に、最大限の感謝を。