3話 え、転生?俺また死んだの?それとは違う転生?
職業を付与師に選択したあとなぜか一度も敵が出ずに数時間も歩くことができた。辺りは未だに森で大樹があり、草が生い茂っている。
「いつになったら森から出れるんだろう……あっ!」
俺が向かっている方角の遠くが丘になっている。
俺は無意識のうちに走り出していたようで気が付くとすでに丘のすぐ近くまで来ていた。
「はぁ、はぁ…ここを登って上から見てみよう。そしたら何かが見えるかもしれない」
丘を登るとオレが登った反対側は崖になっており、その崖の端っこにいろんな武器が刺さっていた。片手剣から両手剣、槍、ハンマー(ハンマーって刺さるの!?)、杖、本(半分埋まってる)、そして鎌。
「ここに刺さってる武器ってなんか全部高級感があるんだけど…この鎌って貰ってもいいかな?」
俺は誰に言う訳でもなく一人呟き崖の端っこに刺さっている鎌の元へ行く。
鎌は崖側に持つところがある。そのため俺は自然と崖側に立つことになった。
「この鎌いただきます!」
俺はそう言うと鎌の持つところに両手でがっちりと握り一気に抜こうと力を込める。
「ふぇ!? ……うわぁあああ!!!」
鎌は思ったよりも簡単に抜け、抜こうと一気に力を込めたため、体は鎌とは逆側の崖へと向かっていく。そのまま俺は崖から落ちた。もちろん地面から抜いた鎌を握って。
「あぁぁああああーーーー!!!」
俺は悲鳴を上げながら地面の方を見る。その地面は不思議な形をしているが今はそんなことは関係ない。
ドスンッ。ザクッ。
二つの音が同時に聞こえ俺は落ちた痛みに襲われて地面を転がり回る。
「……っ! うぅ……ぐっ……」
言葉にならない声を上げ痛みに耐える。すると突然地面が動き出し、グラグラグラっと音を立て始める。
地面は音を立てながらどんどん盛り上がっていき、次第に土が落とされ、盛り上がったものが姿を表していく。俺は姿を現したものに痛みを忘れて呆然と眺めていた。
「汝、人の子よ、なぜゆえに我を倒す」
俺が呆然と眺めていたのは巨大な龍だった。その龍は俺に話しかけてきた。…え!?なぜゆえに我を倒す?それって普通倒した後に言う言葉だと思うんだけど…。
「え、えっと…ですね…。丘の上に武器が地面に刺さっていて、それを引き抜いたらその反動で崖から落ちてしまって……。落ちた瞬間に鎌が地面に刺さっただけなので俺は倒してなんていないです」
俺は恐怖に耐えながら順を追って説明していき、龍様の間違いを訂正する。
「汝は崖から落ちたときに地面に鎌が刺さった。恐らくその時の一撃が我にも届きその一撃で我を倒したと、見事である。汝を転生させようではないか。ん、お主よ、Lvが10とはどういうことだ? 普通転生は600Lvになって受けれるもののはずだ」
龍様は途中から少し話し方が変わったがそれは置いておこう。なになに、転生させてくれると、しかも普通は600Lvにならないと受けれないと。どういうこ『ポーン、ポーン、ポーン、ポーン………』。
突然LvUPを知らせる電子音が連続で休む間も無く続き。俺のLvが600Lvになるとその電子音は止まった。そしてそのあとに『ポーン。称号下克上を手に入れました。ポーン。称号一撃必殺を手に入れました。』と聞こえてきた。
「お主よ、今しがた転生できる条件が揃った。さぁ、転生させてやろう。第二の職業を選ぶがよい。」
ちょっと待ってくれませんか?! 俺まだ何も理解できてないんですけど!!
「あの、なぜ俺は一気に600lvになったんでしょうか?」
俺が尋ねると龍様はすぐに答えてくれた。
「我を倒したからそれは当然のことだ。普通ならば600lv超えているものが複数でPTを組んだ程度では倒せない我を一撃で倒したお主は我の経験値が一気に入りLvが上がったのだと思うぞ」
600Lv越えが複数集まっても倒せないのになぜ俺が倒せたんだ? しかも一撃で…。
「なぜ一撃で倒せたんでしょうか…?」
あ、これって倒した?本人に聞くことじゃないよね。
「それは分からぬがお主はただものではないだろうな。この話はこれくらいでいいだろう。さぁ、第二の職業を選ぶがよい」
俺は一度今考えていることを全て忘れ、第二の職業について考えた。数分で第二の職業は決まり、龍様に言う。
「え、ええ…ええっと。じゃあ、僧侶でお願いします」
俺は第二の職業に僧侶を選んだ。
理由は簡単だ。HPが減っても回復するのに回復アイテム使わないで済むなんて便利じゃない?と思ったからだ。それに僧侶ならばCPがある限り何回でも回復できる。
「お主に第二の職業を与えよう」
龍様がそう言うと俺の体がピカーっと光り、頭の中に聞いたことのある女性の声が聞こえてきた。
『おめでとうございます。あなたは第二の職業に就きました。第一の職業はそのまま第二の職業と一緒に就くことができ、職業Lvも両方同時に上げることができます。それと転生されたことにより本体Lvが1に戻ります。第一、第二の職業Lvを確認するには今までどおりステータス画面を見ていただければご確認いただけます』
すると頭の中に『ポーン。称号一次転生を手に入れました。ポーン。称号最初の一次転生者を手に入れました』という電子音と声が聞こえてきた。
俺はステータス画面を開いて確認してみる。
【クー:Lv1】
第一職業:付与師Lv600
付与師スキル
・レクト…対象のステータスを一定時間UPさせる。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ファイヤーエンチャント…自分の攻撃に炎属性を一定時間付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ウォーターエンチャント…自分の攻撃に水属性を一定時間付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ウィンドエンチャント…自分の攻撃に風属性を一定時間付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・アイスエンチャント…自分の攻撃に氷属性を一定時間付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ヘイスト…対象の攻撃速度、移動速度を一定時間UPさせる。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・霧の衣…対象を霧の力で回避しやすくする。
・ツァクス…対象の与えるダメージを一定時間UP。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ポイズンギフト…対象を状態異常毒を付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・パラライズギフト…対象を状態異常麻痺を付与する。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ダークレクト…対象のステータスを一定時間DOWNさせる。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・ダークヘイスト…対象の攻撃速度、移動速度を一定時間DOWNさせる。効果と効果時間は職業Lvによって変わる。
・創造…思い描いたスキルを作ることができる。どんなスキルを作る事はできず、条件がある。
第二職業:僧侶Lv1
僧侶スキル
・ヒール…対象のHPを少量回復させる。効果は職業Lvによって変わる。
装備
・古の竜殺しの鎌
・布の服
・皮のサンダル
武器スキル/鎌Lv498
鎌スキル
・二度切り
・受け流し
・斬鉄
・連続切り
・サイスカッター
鎌装備時付与効果
・与えるダメージ498%UP
・回避率UP
・攻撃速度UP
・HP吸収
・CP吸収
称号
・下克上…自分よりも100Lv以上高いBOSSを倒す。自分よりもLvが高い敵と戦う時全能力UP。
・一撃必殺…一人でBOSSを一撃で倒す。敵を一撃で倒す時がある。
・一次転生…600Lv上で一次転生クエストをクリアし、一次転生する。第二職業に就ける。
・最初の一次転生者…全プレイヤーの中で一番最初に一次転生する。第二職業のLvが上がりやすくなる。
「………長いし、なにこれ?! 無茶苦茶強くない!?」
付与師のスキルも役に立ちそうなのがたくさんあるし、付与師スキルの最後、創造ってなんなんですか!!思い描いたスキルを作ることができるって反則技じゃないですか。
鎌スキルの装備時付与効果はどれも反則並みだと思うんですけど!!ダメージUPや回避率UP、攻撃速度UPはレアで納得できますがHP吸収やCP吸収ってそんな効果あっていいんですか?!
はぁ、はぁ、はぁ…少し落ち着きましょう。ふぅーはぁーふぅーはぁー。
「お主よ、大丈夫か?」
「は、はい、だいぶ落ち着いたので大丈夫です」
俺は心配してくれた龍様に大丈夫だと伝える。あ、龍様なら街がどっちにあるか知っているかも。
「あの、街ってどっちにあるかわかりませんか?」
「お主よ、もしかして迷子にでもなったのか?」
ギクッ、まさか龍様は読心術をもっているのか…。
「は、はい。実は2週間ほど森で迷子になってたんです。」
俺は正直に本当のことを言うと
「ふむ、ならば…森の外に飛ばしてやろう。では飛ばすぞ」
おぉ、これで森の外に…ってええ?!飛ばすの!?
「ちちちょっとままっ「汝を森の外へ導け」」
龍様がそう言うと俺は一瞬視界が真っ暗になってすぐに明るくなる。
「ふむ、すこし飛ばすところを間違えてしまったが、まぁいいだろう」
飛ばされた先は石で出来た建物の中にいるようだ。目の前には高そうな扉があり、左右には石が敷き詰められた通路がある。後ろには…と後ろに振り返ると石が1mくらいの高さに積み上げられて壁ができていた。その壁の向こう側を見てみるとそこは全てを包み込むような蒼い空が広がっていた。
「え?空?」
壁の向こうには空しか見えなかった。つまり―――地面が見えなかった。
普通ならば地平線などまで遠くまで地面が広がっているはずだ。しかし、ここから見える景色は空だけだ。
俺は石で出来た柵を身を乗り出して普通ならば地面が見える下を見てみた。
身を乗り出して見えた景色はこの建物が塔でありとても高い場所にいると言うことがわかる景色だった。地面まで何百メートルあるかは分からない。
もう一度身を乗り出して外を見てみると街らしきものが発見出来た。さぁ、街に戻ろうかとは行けなかった。
「これ、一番下まで降りないと行けないの……?」
こんなに高い塔だ。一番下まで行くのにどのくらいの時間がかかるのだろう。それにこんな高い塔に何もいない訳がない。恐らく敵も出てくるだろう。そうなるとさらに時間がかかる。
「階段どこにあるんだ?」
だが、降りるしかない。俺は仕方がなく歩いて降りる事にした。
「あの扉って結構怪しい」
あの扉とはこの場所に来た時に目の前にあった豪華そうな扉だ。この塔はずべて石で出来ているにもかかわらず、その扉だけは石で出来ていなかった。
俺はその扉の近くまで行き、思い切って扉を開ける。
ギィギィギギィー
扉は音を立てながら開き部屋の中の様子が目に入る。
部屋の中には何もなくただ、石の壁が周りを被っていた。しかし、その中に一匹の敵が立っていた。
その敵は小さい猫や犬とは比べ物にならないほど大きい猫が二本足で立っていた。その猫は3mを優に超えるほど大きい。
その猫は俺が入ってきたことに気が付いた。
「我は猫の王である」
猫はそう言うと4本足になって勢い良く駆け出し、俺に向かってきた。俺は鎌を構える時間もなく、横に飛んで回避する。回避した直後、再び猫が俺に向かってきて前足の爪で引き裂こうとする。俺はいそいで鎌を取り出し、再び回避する。すると猫はそのまま壁に突っ込んでいってドゴォーンと音を立てながら土埃の中に消えていった。
俺はその間にレクトとヘイスト、霧の衣、ツァクスを自分に掛ける。すると俺の身体をいくつもの光が包み込み、CPゲージが消費されほぼ使い切ってしまった。
俺が自分に付与し終わると猫がようやくガレキと化した石の中から出てきて雄叫びを上げる。
俺は鎌を構え猫に向かって走り出す。レクトとヘイストによって強化されている俺はものすごい速さで猫の元にたどり着く。俺はそのまま鎌で斬り付け、猫のHPゲージが少し減る。猫は攻撃したあと無防備になっている俺に両手の爪で引き裂こうとするが俺はそれを鎌で受け止める。俺はさっき攻撃したことによってCP吸収したことによりCPが少し回復していた。俺はCPを消費して鎌にファイヤーエンチャントして受け止めたままの両手を爪ごと燃やす。
「グルルルゥ!!!」
猫は猫と思えない悲鳴を上げて間合いを取る。間合いを取った猫は二本足で立ち、大きく息を吸い込むと火の玉を吐き出して俺に向かって飛ばしてくる。俺はバックステップで回避し、火の玉は俺がよける前にいたところに落下し、石を溶かした。
俺はバックステップするとすぐに猫に近づく。猫のすぐそばまで行くと俺は猫よりも高く飛び上がり、猫の頭めがけて鎌を振り下ろす。
ザシュッ。
猫の頭めがけて鎌を振り下ろすと鎌は猫の頭をまっぷたつに引き裂き3m以上もある猫の胸辺りまで切り裂いてその刃は止まった。
猫は悲鳴を上げる間もなく一瞬でHPゲージを0にされ巨大な光の玉となって消えていく。すると『ポーン、ポーン、ポーン』と電子音が頭の中に26回鳴り響き、Lvが27になった。
突然女性の声が頭の中に鳴り響いた。
『おめでとうございます。クー様により東オルスト地方のBOSS猫の王が討伐されました』
え?これBOSSだったんだ?
女性の声が聞こえなくなると俺はいきなり視界が真っ暗になり、すぐにあかるくなった。
周りを見渡してみると草、草、草、草でどうやら草原に移動したみたいだ。
「そういえば、BOSSもドロップアイテムあるのかな?」
俺はそう言うとイベントリを確認する。
すると新たに猫の王の毛皮、猫の王の爪、猫の王の牙、街帰還書が増えていた。
街帰還書?もしかしてこれを使えば街に戻れるんじゃ…。
俺はすぐに街帰還書を使用した。
すると再び景色が一片し、周りは建物や人でいっぱいだった。つまり、俺は街に戻ることが出来たらしい。
するとどこからともなく話し声が聞こえてくる。
「おい、さっきの聞いたか? 攻略組ですら倒せないBOSSをクーってプレイヤーがソロで倒したらしいぜ」
「ああ、俺も聞いたさ、噂によると猫の王ってBOSSはLv50前後らしいぜ。それをソロで倒すって頃は確実に50lvより上だろうな」
「でもよ、攻略組のTOPですら最高37だぜ? そんなのありえるのかよ?」
……思いっきり俺の事話してるんだけど。かぁーっなんでBOSS倒したら名前公表されるんだよ。
まぁ、名前言わなければバレることはないだろう。もしばれたらどうなることやら…。




