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魔王が死んで私たちは「虐殺する権利」を手に入れた

分厚い雲が太陽を覆い隠す、色のない昼下がりのことだった。泥濘のなかに、かつて「魔王の軍勢」と呼ばれた者たちが列をなして並ばされている。彼らの手首を繋ぐのは魔力を吸い上げる鈍い色の枷。

それは、彼らがもはや「脅威」ではなく、ただの「資源」に成り下がったことを意味していた。


――私はこの光景を作り出した者の1人だ。


「おい、新入り」

上官が煙草を燻らせながら、顎で列の端を指した。

「あの老いぼれを片付けておけ。労働力にはならんし、生かしておくだけメシの無駄だ。ただし、角と皮は傷つけるなよ。それは貴重な『国の財産』だ」

私は抜いたばかりの、まだ傷一つない剣を握り直し、老いた魔物の前に向かった。

魔物は、濁った瞳を私に向け、枯れ木のような手を合わせた。

「待ってくれ……まだ薪割りくらいならできる……。重いものだって運べるから……」

人間の言葉。それは数年前まで死を呼ぶ呪文だと思っていたものだった。

だが今、私の耳に届くのは、震える老人のただの惨めな命乞いだ。

「……すまない。」

私は、自分の声が情けなく震えるのを感じながら、剣を振り下ろした。

手応えは驚くほど軽かった。


溢れ出した血はどこか生温い。私の震える革手袋の隙間から、その熱がじわりと皮膚に伝わってくる。

曇天の静寂を切り裂いた、その最後の手短な「悲鳴」だけが、いつまでも私の耳の奥に、棘のように刺さって抜けなかった。

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