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勇者の後悔

作者: ミドリヤマ
掲載日:2025/12/22


「勇者様、勇者様、知ってましたか?」


「ほれほれ、この青色の葉っぱ、幻覚効果が有るらしいですよ」


花畑を、男女が二人、歩いている。

それは、白く、また、赤く…華やかではあるが、空のみは、ひたすらに暗かった。

魔物が…絶えず地面から、華を蝕み、湧き出る度に、勇者が剣を振るい、斬り殺す。


赤髪の勇者は、魔物を斬る度に、煩わしそうに剣を拭った。髭は生え放題、髪も、肩にかかるほど伸びており、体からは獣臭がする。


「僧侶、回復魔法を」


一方の僧侶は、透き通るような金髪を、短くくくっており…どこか柔らかい雰囲気である。


「魔力ももう、枯れそうだなぁ…やはり、無茶だったか」


本来ならば、魔物を駆逐しつつの旅など、いくら手練とは言えども、二人でするものではない。


「あぁ…ガロアに、ルシエラ、お前達が恋しい」


勇者を、自分を庇って死んだ、戦士達の名を、虚空に向かい、唱える。


「まぁた、辛気臭い事いっちゃって、ほらほら、先進みますよ、くよくよしないッ」


ドンッ、と、僧侶が背中を押してくる。

行こう、進まねば。

たとえ、魔力が枯れ、死んだとしても…意味はある。未開の土地を、たった四人だけで切り開いて行った。その事に、価値があるのだ。


自分の使命を思い出す。

主から…王より下賜された、純銀製の鎧に、手を当てる。

それは、魔物に幾度となく襲撃され、資源も少ない中、特別に勇者に与えられた、逸品であった。


(意味は、あった)


そう、思わねばなるまい。

故に、勇者は、元気に喋り続ける僧侶に向けて、静かに響く声で


「進もうか」


だが、分かっている。

進めば…肉体強度の高い自分はともかく、僧侶は、この、黄金の様な人は、死んでしまうと。


証拠に、彼女は既に、何度も血を吐いており、ゴロゴロ…と内臓から出血していた。


「もちろん、さぁさ、いざ、冒険に」


きっと、私達が歩んだ道に、誰かが続いてくれる。

決して無駄ではない。

剣が、鎧が産まれ、進化する過程で…多くの名も無き偉人が、命を落としつつも、確実に…その技術を継承させた様に。


道中に、本は埋めて来た。

魔物に関しての、あらゆる特徴を、纏めた本である。


(誰かが、拾うだろう…)


その、時まで。

やがて、勇者も深い眠りに就く。

目を閉じ、未来に託したのだ。




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