日光には勝てません。
「やっぱこれだよなあ」
だれもいない校舎裏で自販機に金を入れる。自販機なんか校内にいくらでもあるのでここに来る人はいない。
じゃあなんでここに来るかって?ここの自販機にはなんと「梅よろし」が売られているのだ。
なかなかないからね。これ。
早速ボタンを押してペットボトルを取る。
そのままいつものベンチに向かう、誰もいない中一人で飲むのが最高なんだ。
しかし、今日は先客がいるらしい。
ここを知ってるとは、やるな。でも誰なんだ?寝てるし。
色白な肌に黒く艶のある長髪。細くてちょっと力を入れたら折れそうな腕。整った顔つきに、綺麗で長いまつ毛。美術館に飾られている彫刻作品のような人だ。力なく寝る姿は、眠り姫を彷彿とさせる。視力良くて感謝したのは受験の時以来だ。
...かわいいな。あんな子うちの学校にいたっけ。
それにしてもちょっと脱力しすぎでは?ベンチから落ちそうだし。てかもう半分落ちてるぞ。
あ、落ちた。しかも起きないのか。...仕方ない今日は立ち飲みだ。
まあ気を取り直して、ジュースは開ける瞬間が最高だ。あのプチプチという感覚がこれから飲むジュースへの希望を高める。キャップを外し一気に飲む、と見せかけて一口。じっくり楽しむ派なんだ。うんうん美味しい。、、おいしい、、、
「やっぱ気になる!」心の中で叫ぶ。酔っ払いなのか?かわいいだけで中身おっさんなの?女子高校生なら起きてくれ。そう思っているうちにチャイムがなった。
これで流石に起きるだろ...起きない。えっ死んだ?死んだのこれ。
まじか。110だっけ、119だっけ。焦りながらスマホを取り出す。
すると例の女の声が聞こえる。生きてたんだ。だがまだ安心できない。とりあえず彼女の元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
色白だから体調が悪いのか分からない。まあ腕の色と同じだから多分大丈夫だろう。
「み、みず、、、なんか飲み物、、、」
駄目だった。えー飲み物、、、一瞬自分の梅よろしに目を向け、戻す。別に俺がケチなわけじゃない。その、あれだ。セクハラがなんとかだ。多分駄目だと思う。今のご時世こういうのには厳しいんだ。しょうがない買ってこよう。
「早く、、それ、、、ちょうだい、、」
細い腕をこちらに伸ばしてくる。やっと見えた目はどこまでも真っ黒。光をまるで感じない。だが不思議な雰囲気を放つその瞳から目が離せなかった。
蛇に睨まれた鼠のように、もしくはただ見惚れていただけかもしれない。ただ体が動かなかった。
そのまま彼女は俺の梅よろしを飲み干した。
そのまましばらくして、
彼女は上半身だけ起き上がった。
「はぁ、はぁ、、流石に死んだかと思った、、、」
なんかモヤモヤするけど、とりあえず生きてて良かった。
「えっと、どうしたんですか?」
「木漏れ日で暖まってたら干からびそうになったんだよ。ない?たまに」
「ないですね」人間を舐めないでほしい。
「あーそうかー、ないのかー」など色々彼女はつぶやいている。どうやら本当にあると思ってたらしい。
なんか思ってた感じと違うな。
「あのー、、じゃあ俺はそろそろ、、もう授業始まるので、、、」
「あっちょっと待って!何かお礼させてよ。スマホ出して」
勢いに押されて、言われたままにスマホを取り出し、ロックを解除する。彼女は俺のスマホを取り、慣れた手つきで連絡先を追加した。
「じゃあ、授業遅れないようにねー」
唖然とする俺の手元のスマホには一通のメッセージ。
藤美夏木という名前と、「また今度お礼させて」の一言。
藤美夏木。色白な肌と、光を感じない目。
見た目の割に清楚系でもなさそうだし、かと言ってギャルでもないだろう。
あともう一つ。太陽光で干からびる。
なんというか、普通の人とはなんか違う気がする。根本から。
授業開始のチャイムが鳴った。
連載の予定です。




