ep4.地獄の味
急に倒れたリン。死んだのか、倒れただけなのか。そして新たにわかる今の王国。自分の危機。
そして悲しい別れ。リンの幸せとは何なのか。
目が覚めると、屋敷のベッドだった。別に死んだわけではなかったのか。
「リン様ー!」
奥からメディが走って抱き着いてきた。
「ほんとに大丈夫ですか?急に倒れてしまったので、アイン様と共に寝室に運ばせていただきました」
少し涙目だが、アインと運んでくれたのか。……アイン? 潰されなくてよかった……。
リンは内心焦っていた。
「大丈夫だが、今のは痛い」
多分過労と精神的に疲れたのだろう。実際なん10回も〈ロード〉しているわけだし。
「メディ。今から冒険者ギルドへ行くぞ」
「はい?」
「それでは冒険者登録を開始します。それではこの石板に手をかざしてください」
そうして現れた情報は……
名前:メディ・ロード
職業:格闘家
武器:無し
防具:無し
称号:〈元勇者の奴隷〉
実績:無し
ランク:A ⁺
だった。意外と使えるし、格闘家なら前線に出れる。
……だが称号が気に食わない。奴隷はまだしも元勇者はいらないだろ。
俺たちは昔行った武器屋へといった。
「久しぶりに来たぞ」
その瞬間奥から武器屋のマスターが急ぎながらこちらへ来た。
「お前馬鹿か⁉」
「なんだよ急に」
マスターは慌てながら俺に説明しだした。
「お前今、王への反逆で指名手配されているぞ! 勇者だったリンが何したらこんなことになるんだよ」
「……」
「それと、あの嫁ちゃんは? 逃がせたのか?」
「……にがせた」
その回答は重く、正直答えたくはなかった。
「まぁウチを利用してくれた縁があるからな! 逃げたいときにはいつでもここへ逃げてもいいぞ!」
というかまたあのジジイがやってんのか。クソが。
「それよりリンちゃん。今回の用事は?」
「こいつの装備を買いに来た」
「ほほう、この子か」
メディは緊張しながらも
「ここここんにひは! リン様の奴隷をやっているメディです! 本日はよろしくお願いします」
マスターは少し笑いながら、
「俺はライン・エルメス。ここではマスターか親父って呼んでくれ! てかリンちゃんが奴隷か……
友達でも欲しかったのか?」
「違う。戦力だ」
「はぁ。素直じゃないねぇ」
そしてマスターは少し真剣な表情でリンに話しかけた。
「メディちゃんの職業は?」
「格闘家」
即答した瞬間、マスターは驚いていた。
「まじかよ⁉ こんなちっちゃい子が格闘家? 格闘家ってレア中のレアだぞ!」
そうだった。この世界では武器を使うのが主流、拳を使う職業はとても少ないのだ。
「格闘家となるとウチにも装備が少ないんだよな……」
「ひとまずここの一つしかない装備 (竜の牙)でいいか?」
「大丈夫だ」
最悪俺が作れる。
「ありがとうございます!」
メディは喜びながら大きい声で礼を言った。
帰り道、いつもの道を2人で歩いていた。
「リン様! 私自分だけのものが買えてうれしいです!」
「そうか……」
その瞬間、物陰から謎の男たちが来た。
「お前ら、誰だ」
「俺たちは王からの命令で貴様を殺しに来た!」
「ふぅん。殺されるのはお前らのほうじゃないのか?」
男たちはこちらへと向かってきた。
だが、俺と通り越して、メディを刺した。
……バタン。
「……は?」
男は笑いながら
「弱いものから殺るのは当然だろ」
「お前らぁー!」
俺は怒りに身を任せ、男を殴り飛ばした。
そのあとも俺は黒い牙で男たちを殺した。
帰り道は悲惨で、ただのみちだったとは思えないほど変わり果てていた。
「メディ! 死んでないよな?」
俺はすぐにメディのもとへ駆け寄り、メディを必死に蘇生しようとした。
だが指の一つも動かなかった。
「メディ……?」
死んだ。その事実だけがリンの心を握りつぶした。
「アイン」
アインはリンの影から飛び出た。
「なんだ」
「こいつの中に入ってくれ、もう自由だ」
「わかった。こやつの分まで、しっかり生きてやる」
そうしてリンは命を絶った。
リンの顔は苦しそうで、悲しそうだった。
そして、メディは死んだリンの胸の中で微笑みながら死んでいた。
投稿遅れてすみませんでした!
風邪ひいたり、パソコンが少し壊れたりと、様々なハプニングが起こり、
結果的に遅れたしまいました。
これからは気を付けていこうと思います。
ぜひ次回も読んでくださいね! そして見放さないください