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魔法少女ネズミー☆スターズ 〜希望とパンは落としても、勇気とピンクは忘れない!〜  作者: たかつど


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第五章:絶望の結界、愛の覚醒

 キング・オブ・クマネズミーが消滅したはずの場所から噴き出す禍々しい瘴気は、みるみるうちに巨大なドーム状の結界を形成した。 


 その中に、ネズミーランドの女王チンチラ様が苦しげに浮遊しているのが見える。結界の内側は、絶望の色である鈍い紫に染まり、女王様の顔には苦痛の表情が刻まれていた。 

 その姿は、まるで長年風呂に入っていないクマネズミのように汚れ、みるからに不潔なオーラを放っていた。


「モフ!あれが、女王様を完全に絶望させる『絶望のまゆ』モフ!完全に閉じ込められる前に、なんとかしないとモフ!」


 クロモフの悲痛な叫びが響き渡る。五人の魔法少女は、結界を取り囲むように立ち尽くしていた。結界からは絶望のオーラが放出され、彼女たちの心に直接語りかけるように、負の感情を植え付けようとする。


「くっ……なんだか、胸が苦しい……!」


 ネズミー・デグーが膝をつく。大好きなアイドルの顔も、友達の笑顔も、すべてが霞んでいくような感覚。


「これが、絶望の力……!?私たちまで、心が沈んでいく……!」


 ネズミー・チンチラが顔を歪める。知性も、勇気も、意味をなさないように思えてくる。


「冗談じゃねぇ……こんなところで、へこたれてたまるかよ!」


 ネズミー・フェレットが歯を食いしばるが、その体は小刻みに震えている。


「姉ちゃん、怖いよ……もう、無理かも……」


 ネズミー・ハムスターがネズミー・モルモットにしがみつく。ネズミー・モルモットもまた、冷静さを保とうと必死に拳を握りしめていた。


 誰もが絶望の淵に立たされそうになったその時、再び、あの優しい花の香りが漂った。


「諦めるな、選ばれし乙女たちよ」


 光の裂け目から、謎の男性が現れる。彼の言葉は、凍り付いた心を溶かすかのように、優しく、しかし力強く響いた。ネズミー・デグーは顔を上げ、フードの奥の彼の瞳と目が合った気がした。

 その瞬間、絶望のオーラがほんの一瞬だけ薄れ、胸の奥に、再びキュンと甘い痛みが走る。


「あなたは……!」


 謎の男性は、迷うことなく結界へと向かって歩みを進める。彼は懐中時計を取り出し、カチリと開いた。


「この結界は、未来を閉ざそうとしている。だが、未来は常に、希望によって切り開かれるものだ」


 彼の言葉と共に、時間が、まるでスローモーションになったかのようにゆっくりと流れ始める。結界から噴き出す瘴気は停滞し、女王様の苦痛の表情も一瞬、止まったように見えた。彼は輝く銀の剣を抜き、その剣先を結界へと向ける。


「未来よ、開け!」


 一閃。剣が結界に触れると、結界はガラスのようにヒビが入り、やがて音もなく砕け散った。絶望の瘴気は消え失せ、女王様はゆっくりと地面に降り立つ。


「女王様!」


 クロモフが歓喜の声を上げるが女王様は目を閉じたまま、意識があるのかわからない。


 しかし、結界が破れた代償は大きかった。男性の体が、ぼんやりと光り始める。


「あなた……どうしたの!?」


 ネズミー・デグーは思わず叫んだ。胸騒ぎが止まらない。


「私の力は、時間を操作する。大きな力を使うほど、この身は時空に溶けていく……」


 彼の声は、ひどく穏やかだった。まるで、それが当然であるかのように。


「そんなの、嫌だ!あなたが消えちゃうなんて、嫌だよ!」


 ネズミー・デグーは駆け出した。男性の腕を掴もうとするが、彼の体は光の粒子となって、指の間からこぼれ落ちていく。


「私には、この世界の未来を見守る使命がある。そして、君たちの未来も……」


 彼の言葉と共に、優しい花の香りが一層強く漂う。


「待って!名前は!?あなたの名前はなんていうの!?」


 ネズミー・デグーの必死な問いに、男性はフードの奥で小さく微笑んだように見えた。


「いつか、君が『未来』を掴んだ時……再び、巡り会うだろう。その時が来れば、私の名も、自然と君の心に響くはずだ」


 その言葉を最後に、彼は完全に光の粒子となって消え去った。ネズミー・デグーの手には、何も残らない。ただ、嗅ぎ慣れた花の香りと、胸の奥に刻まれた深い、深い喪失感だけが残った。


「嘘……嘘でしょ……」


 膝から崩れ落ちるネズミー・デグー。初めて抱いた、この甘くて苦しい感情。それは、恋だった。

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