第四章:双子の連携、図書館の知を守れ!
桃色町図書館は、普段の静けさが嘘のように騒がしかった。人々は本を逆さまに持っていたり、絵本を読みながら難しい顔をしていたり、まるで文字が読めなくなったかのように困惑している。
そして、その混乱の中心には、二体のクマネズミが、高笑いをしながら本棚を蹴散らしていた。彼らの体からは、埃っぽい悪臭が漂い、図書館の清らかな空気を汚している。
「我ら『クマー団・知恵泥棒兄弟』参上!貴様らの知識、根こそぎ奪ってやるぜー!」
一体は赤色のベレー帽をかぶり、もう一体は黄色のベレー帽をかぶっている。
「なんてことを!」
ネズミー・チンチラが憤慨する。彼女は本を読むのが大好きだからだ。
「よし、あいつらぶっ飛ばすぞ!」
ネズミー・デグーとネズミー・フェレットも気合を入れる。
その時、二体のクマネズミが同時にこちらへ向かってきた。ネズミー・デグーはピンクストームで一体の動きを封じようとするが、もう一体が素早く背後に回り込み、ネズミー・チンチラに襲い掛かる。
「危ない!ネズミー・チンチラ!」
その瞬間、図書館の奥から、二つの光が飛び出した。
赤と黄。
赤色の光はクマネズミの攻撃を受け止め、黄色い光はもう一体のクマネズミを弾き飛ばした。
「遅れてごめんね、みんな!」
「モルモット、ちょっと早すぎだってー!」
現れたのは、双子の魔法少女だった。赤色のコスチュームにモルモットのような耳を持つ方が姉の胴川サンゴ改めネズミー・モルモット、黄色のコスチュームにハムスターのような耳を持つ方が妹の胴川コハク改めネズミー・ハムスターだ。二人ともモモコと同じ中学校の一年生だが、一回り小柄で可愛らしい。
「ネズミー・モルモット、参上!みんなをまとめるところは、お姉さんにお任せあれ!」
「ネズミー・ハムスター、ぴょんぴょん!知らないことだらけで、早く戦いたかったんだよー!」
双子の登場に、ネズミー・デグーとネズミー・チンチラ、ネズミー・フェレットは目を丸くした。
「まさか、双子で魔法少女!?」
「それに、サンゴとコハクじゃないか!」
ネズミー・モルモットことサンゴは、落ち着いた表情でステッキを構える。
「モルモットモルモット・レッドシールド!」
赤色の光が、瞬く間に図書館の天井まで伸びる巨大なシールドを形成し、クマネズミたちの「知識ナシ弾」から図書館の本を守った。
一方、ネズミー・ハムスターことコハクは、きらきらと目を輝かせながらステッキを操作する。彼女は手先が器用でPCも得意なのだ。
「ハムスターハムスター・イエローコード!」
ステッキの先端から、黄色の光のコードが伸びて、クマネズミの足元に絡みついた。クマネズミはもがき苦しむが、コードはびくともしない。
「な、なんだこりゃあ!?」
コハクがニヤリと笑う。
「ふふん!私のコードは、なんでもできちゃうんだからね!君たちの知識、全部吸い取ってやるー!」
まさかの攻撃に、クマネズミたちはパニックに陥る。その隙を逃さず、ネズミー・デグー、ネズミー・チンチラ、ネズミー・フェレットが総攻撃を仕掛けた。
ピンクストーム、ブルースパーク、グリーンウィンドが次々とクマネズミに炸裂する。
「お、俺たちの知識が……」
「やめろぉぉぉぉ!!」
双子の連携と、三人の猛攻により、クマネズミたちは瞬く間に撃退された。図書館には再び静けさが戻り、人々は正気に戻って、手元の本を訝しげに見つめている。
「やったね、みんな!」
ネズミー・デグーが、息を弾ませながら叫んだ。
「すごい!双子で魔法少女なんて!」
ネズミー・フェレットが目を輝かせながらネズミー・モルモットとネズミー・ハムスターに近づく。
「ま、当然でしょ。私たち、最強の双子なんだから!」
ネズミー・ハムスターが得意げに胸を張る。
「ネズミー・ハムスター、調子に乗らないの。でも、みんなの力があってこそよ」
ネズミー・モルモットが優しく諭す。
五人の魔法少女が集結した。ネズミー・デグー、ネズミー・チンチラ、ネズミー・フェレット、ネズミー・モルモット、そしてネズミー・ハムスター。
クロモフが、感動のあまり涙を浮かべている。
「モフモフ……ついに、ネズミー☆スターズ、勢ぞろいだね!これで女王チンチラ様を救えるかもしれない!」
謎の男性は、遠くからその様子を見ていた。ネズミー・デグーを中心としたネズミー☆スターズの絆が、着実に深まっているのを肌で感じていた。
(彼女は、本当に、希望の光……)
懐中時計の中で、未来の映像が揺れる。彼女が笑顔で世界を救う姿。そして、その横で、彼が静かに微笑む姿。未来は、確実に変化している。
彼は、モモコの成長を目の当たりにするたびに、胸の奥で奇妙な感情が芽生えるのを感じていた。彼女の笑顔は、凍り付いた彼の心を溶かす陽だまりのようだった。彼女が仲間と協力し、困難を乗り越えるたびに、那智の心に温かいものが広がっていく。
しかし、同時に、彼の体が時空に溶けていく運命も、変わらない。その運命を受け入れつつも、彼は、モモコへの新たな感情が芽生え始めていることに、気づき始めていた。
彼女の屈託のない笑顔、困難に立ち向かうひたむきさ、そして仲間を思いやる優しさ。それらすべてが、彼の心を温め、時空の旅人としての孤独を癒していく。彼は、彼女の存在が、自分にとってどれほど大きな意味を持つのかを、まだ知らない。
すると、クロモフのクローバーのマークが激しく点滅し始めた。
「ん!?これは……大変だ!クマー団の総大将が、ネズミーランドとこの世界の境界線に出現した!奴らは『絶望の心』を狙っている!そして、このままだとネズミー・ランドの女王様が……!」
クロモフの言葉に、全員の顔色が変わる。
絶望の心。それだけは、絶対に阻止しなければならない。
「よっしゃ、最終決戦だ!みんな、行くぞ!」
ネズミー・デグーが先頭に立って駆け出す。謎の男性は、静かにその背中を見送った。