6筆目
ドシンッドシンッ
渡白「よし行くぞ、準備はいいか」
クロ「OKっす」
バッッ
クロ「こっちだ、ブタ野郎」
イノシシ「…!フンス、フシューフシュー」
クロ「追いついてみてみろっす…」
ダッダダッダ
渡白「意外と足速いんだな、あの見た目で。あっちの世界のイノシシよりも数倍デカいな。体毛の一部分だけ色が違うのもおもしろい。メモしとこう。僕たちを追っかけてくるということは食性は…」
ダッダダッダ
クロ「ハアハアちょっと、シロさん冷静に観察してる場合じゃないですって。目の前で大事な弟子が、死にかけてるんですけど」
ダッダダッダダッダダッダ
クロ「げっ、イノシシのスピードが更に速くなってる。やばい、そろそろ本格的にやばいっすシロさん」
渡白「…あの毛皮の鋭さに注目して、一枚描くのはどうだろうか、いや注目すべきはやはりあのパワフルな体躯と野性味か…」
クロ「聞いてないし。あっ」
コツン
クロが小石につまずいて、宙に体が浮く。
ドンッ
直後に大きな音がして、イノシシが落とし穴に落ちる。
クロ「ゲホッゲホッ、あっぶね~。死ぬかと思った。ってシロさん、オレが囮やったんですから、ちゃんと落とし穴にイノシシ誘導してくださいよ」
渡白「おいクロ」
クロ「なんすか?」
渡白「もっとよく見たかった!」
クロ「…………」
ゴンッ
渡白「いや~悪かった悪かった。この世界の動物全部が規格外すぎて、観察したくなるんだよ」
クロ「何してくれてんですか全く」
渡白「すまんすまん」
僕たちはとある場所に向かうために、森で野宿をしていた。
渡白「よし。晩飯用に何か他の動物探してみるか。観察もしたいし」
クロ「勘弁してください。今度こそオレ死ぬっすよ」
クロが強く首を横に振る。
渡白「それもそうだな。落とし穴掘る時間もバカにならないしな」
クロ「シャベルも消えちゃったんで、描きなおすところからですしね」
僕たちは、村を出てから画家の能力について様々な検証を行った。
異世界メモ
・画家が、能力で作り出した物は一定時間で消滅する
・作り出した物のクオリティは、絵の出来不出来に左右される
・絵は専用の筆で描かなければ、実体化しない
・筆はいつでも、どこからでも出し入れ可能である
今のところこの程度のことしか分かっていない。
渡白「そうだな。このままだと魔王と会う前に、そこら辺の動物にやられそうだ。狩りはやめて目的地に急ぐか」
クロ「ところで、オレたち今どこに向かってるんでしたっけ?」
渡白「えっ?一緒に案内人の話聞いてたよな?」
クロ「ハイ!でも忘れちゃいました!」
渡白「……」
クロ「シロさんヤメテ。そのアホの子を見る目をヤメテください。」
あれは案内人に、魔王の話をされた後のことだった。
案内人「魔王を倒すのなら次の目的地は、隣国である戦士の国ガナがよろしいかと」
渡白「それはなぜですか?」
案内人「渡白様とクロ様の職業である画家は、絵に描いたものを実体化する能力です。アイデア次第では強力な能力になりますが、一つ大きな弱点があります」
渡白「能力を使うまでのタメですね」
案内人「そうでございます。今回の戦いのように、毎回相手が待ってくれるわけではありません。なので絵を描く間に、敵と対峙する前衛が必要だと考えます。ガナは名前の通り戦士の国。魔王討伐にふさわしい戦士が見つかるかと」
クロ「なるほど。そんな話をされたような気もするっすね」
渡白「気がするじゃなくて、したんだよそんな話を。まあいいか。とにかく…」
同じころ戦士の国ガナ
兵士「報告します。東の方角に1年前と類似のエネルギー反応を確認。新たなる魔王の誕生の可能性もあります。新たなる魔王であるなら、隣国である我が国に侵攻してくると思われますが。どうされますか?」
??「戦士の国ガナ、団長の地位の元に命令を下す。魔王を…」
渡白「ガナに行くぞ」 ??「ガナに入れるな」