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画家な僕たち  作者: 田月
画家誕生編
5/6

5筆目

 クロ「なんでシロさん、村の人の家に泊めてもらわなかったんすか?」


 僕とクロは村の外れの廃墟にいた。


 渡白「何言ってんだ、2日も泊めてもらったら悪いだろ?」


 クロ「さすがシロさん村を救った英雄なのに謙虚ですね」


 渡白「村人はお前のことも英雄だって言ってたぞ」


 クロがえへへと笑いながら、壊れかけのベッドの上で足をバタつかせる。

 クロはまだ気が付いていないのだろう。

 僕が村人の提案を断ったのには別の理由がある。

 あれは案内人と別れた後の話だ。

 案内人からの話の前には気がつかなかった視線を感じた。

 僕がその方向を見ると、そそくさと逃げていく。

 村人が「英雄」「英雄」言っている声の中、耳を澄ませると「何が英雄だ」「魔王の再来だ」などの声が聞こえてくる。

 案内人の話を聞いてから、僕は何となく村人の心の内を察していた。

 彼らが口にする「英雄」という言葉に嘘はない。

 しかしそれ以上に「魔王誕生の記憶」は大きいのだ。

 いきなり村を訪れた転生者が、新たな力を手にし……

 僕たちのこの後の行動が確定していない今、彼らが恐怖するのは当然のことなのかもしれない…………

 とにかく一刻も早くこの村を出よう、村のことを思うとそれが一番だ。

 それにクロがこのことに気が付いてしまう前に。




 クロ「おはようございます」


 クロがまだ眠そうな声で言う。


 クロ「早起きですねシロさん」


 渡白「そうか?それより今日でこの村を立つぞ」


 クロ「え~!?なんでですかもうちょっと居ましょうよ。村の子たちとも仲良くなったばっかなのに」


 渡白「この村は今復旧作業で忙しそうだろ。そう何日も厄介にはなれないよ」


 ぶつくさ文句を言うクロを無視して、ベッドなどを片付ける。




 村人「いつでもまた立ち寄ってくださいね」


 一人の村人がそう言ったが、目の奥はどこか申し訳なさそうにも、どこか安心しているようにも見える。

 他の村人も口々に似たようなことを言っている。

 クロはその一つ一つに笑顔で返答している。


 クロ「子供たちはどうしたんですか?」


 クロが村人の尋ねる。

 確かに見送りの村人の中には、子供の姿は見えない。


 村人「子供たちは……まだ寝ているんです」


 クロ「そうですか、子供は寝るのが仕事ですもんね!」


 …………


 渡白「よしそろそろ行くぞ」


 これ以上いるとこの村のことが嫌いになりそうだった。


 ??「子供たちに何も言わずに行くのか?よそ者」


 あの男の村人の声だった。


 子供「お兄ちゃんたち行っちゃうの?」


 子供たちが一つの家から出てきた。


 クロ「そうだよ。お兄ちゃんたちは魔王を倒す旅に出るんだよ」


 思わず頬が緩んだ。

 クロと一緒に子供たちと話す。


 男村人「…そうか魔王を倒すか。お前たちなら出来るかもしれんな」


 僕は強くうなずいた。



 子供たち「じゃ~ね~、お兄ちゃんたち」


 クロ「ばいば~い」


 手をめいっぱい振るクロの横で、僕は小さく手を振る。

 村人たちは子供たちとあの男村人以外誰も手を振っていない。


 男村人「村を救ってくれてありがとよ達者でな~。()()ども」


 クロ「アホ?よそ者とかアホとか…オレたちは画家だって言ってんのに。最後の最後まで呼んでくれなかったっすね」


 渡白「はは、バカって言われなかっただけよかったじゃないか」


 クロ「バカもアホもおんなじじゃないですか」


 クロがそう言いながら手を振る。


 クロ「でも結局村の手伝いはさせてもらえませんでしたね」


 渡白「いいんだよそれで」


 あの男村人が、僕たちに子供の相手をさせた理由が今なら分かる。

 村の大人たちから遠ざけ、村人の本音に気づかせないためだろう。

 僕も手を大きく振りなおす。

 そしてクロにも負けない位の大声で言う。


 渡白「さよ~なら~」




 村人「よかったのですか?あいつらは第二の魔王になりえるかもしれません」


 村人「そうですよ。それに子供たちは合わせないように頼んだではありませんか」


 男村人「………お前らみっともねえな」


 村人「…何がですか?」


 男村人「よそ者にこの村救われて。挙句の果てには命張ったそのよそ者を、魔王扱いか」


 村人「…」


 男村人「子供たちは1年前をとっくに乗り越えてんのに、大人のお前たちはまだあの日ままか?」


 村人「…」


 男村人「安心しろ。あいつらは魔王とは違う。あいつらは、シロとクロは魔王を倒すと言った。救われた俺たちがあいつら信じないで誰が信じるんだよ」


 村人「…」


 子供「お父さん。この絵家に飾ってもいい?」


 男村人「ああいいよもちろん」


 男村人「よしお前らおしゃべりは終わりだ。ちゃっちゃと村を元通りにするぞ。あいつらがいつかこの村に帰ってきたときに笑われないようにな」



 ⦅ バケモノ「戦う気がある奴が二人になっただけで調子に乗りやがって。何度でも言ってやろう。何人増えようがお前たちは、バカのままだ」


 渡白「じゃあこっちも何度だって言ってやる。僕たちは....」


 クロ「オレたちは....」


   「「画家だ」」 ⦆


 男村人「シロ、クロお前たちなら絶対に魔王を倒せる。俺はそう信じてるぞ」

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