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あの時の合言葉

作者: 尚文産商堂

初々しく付き合い始めた時、私は彼と一つの秘密の約束をした。

それは別れたいときには一つ約束された単語を言うということ。

でもそれはついに言われることなく、私たちは結婚して、子供をはぐくみ、それから孫やひ孫までできるに至った。


そして死の淵、彼は今やそんな状態にいる。

「……ばあさんや」

「はい?」

「……別れをば、山の桜に……」

死の淵で私に言った彼の言葉は、あの時の約束の言葉。

もともとどこかで読んだという和歌を引っ張ってきただけだったが、それを今も覚えているとは思いもしなかった。

「いえ別れませんよ、ここまで来たんですから、私はずっとここにいます」

あの時も言いたかった言葉、あの時に言いたかった言葉。

そんな言葉を押し込めて、それでも今、私はようやく返事をしている。

「そうか、それはよかった……」

すぅ、と声は薄れていく。

彼は幸せだった、それだけは間違いがない。

最後の最後、彼が死んでからすきに行きな、と彼が言ってくれているような気がした。

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