第60話 織田信長・毛利輝元への説教
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1570年11月2日 4:50
安芸国・新高山城
小早川隆景
「。。。本当に消えた。。今更か(笑)
輝元、わしを信じろ降伏するのだぞ。戦火を交えたら毛利は滅びる。。他の選択肢等ないぞ。。。」
1570年11月2日 4:55
安芸国・吉田郡山城
毛利輝元
「おおお!!!」
宍戸隆家
「さっきまで誰も居なかったのに。。。本当に現れるとは。。」
天野隆重
「小早川殿からの鳩の報せで胸騒ぎはしておったが。。神の所業と言わざるを得ぬ。。。」
福原貞俊
「天御中主神様の使徒ですか。。
がしかし天野殿、新高山城までの道中が省けたと思えば幸運の兆しですな!」
天野
「その通り。わし等のなすべき事に変わりはない。
御館様!必ず必ず毛利は守ります。
いざ!上皇使徒様の御尊顔拝んで来ようぞ。」
福原
「はっ!では参ろう。宍戸!世鬼!頼んだぞ!御館様も毛利の行く末お頼み申しまする。」
宍戸、世鬼、他家臣一同
「「御武運の程を!!」」
輝元
「御二方の忠誠心、この輝元生涯忘れぬ。。。」
シュン!
織田信長
「別れを惜しんでおるとこ悪いが、余の方から出向いてやったぞ。その方が長ったらしい挨拶や口上が省けて、話が早いからなw」
「「「な、!!!」」」
信長
「伝書鳩にて報せがあったはずだが、小早川家は江戸幕府に無条件降伏する腹を固めた。
毛利宗家はどうするか?そこの2人の武将!余に話があるのだろう?まずは聞くとしよう、申せ」
ズン!
"上皇使徒"として身分の違いをハッキリと知らしめるため、今日は丸テーブルでは無い。
しかもマジックリュックも使っていない。何も無い空間から突然、とんでもない代物を取り出したのだ。
皇居にある帝専用の豪華な高御座と、その後方の10段上に設えた更に豪華な玉座。
その後ろには"錦の御旗"が飾られ
左に八咫鏡
右に八坂瓊勾玉
草薙剣は信長の左腕脇に立て掛けてある。
そこに鎮座する信長と"三種の神器"に"錦の御旗"の実物を、生まれて初めて見せられた毛利家重鎮達。。。
全員ガタガタと震えだし膝から崩れる者、腰が立たない者、年長者で信仰心の強い天野隆重と、朝廷への忠誠心溢れる宍戸隆家等は、涙を流しながら信長を拝んでいた。
「「「。。。。。。」」」
「さあ聞こうでは無いか。まずは天野隆重!御主からだ。」
天野
「はははあ~~直答など。。。勿体のお御座いまする。」
「何を言うておる隆重。余に対して己の切腹を条件に、安芸国のみ所領として認めさせるのでは無かったのか?
直答が勿体なければどうやって伝えるのだ!回りくどい事が嫌いな余は、単身でここに鎮座しておる。側近は置いてきた、今頃本陣は大騒ぎよww愉快じゃニヤリ」
天野
「。。。。うっうぅ、では申し上げ奉りまする。それがし毛利元。。。」
「やめーーーい隆重!!
最初に言うたであろう、長い口上挨拶無用!"時は金なり"と申す。端的に言うのだ。そちの願いは何じゃ!!」
「ひいぃ。。。」
「はぁ~分かった許せ!余の短慮であったな。入れ!」
シュッポ!
"三種の神器"と"錦の御旗"が収納に消えた。同時に取り出したのが出来立て熱々の"五目ソース焼きそば"
「三種の神器など見せられたら、言えるものも言えなくなるは道理だ許せよ。
皆のもの朝飯はまだであろう?熱い内に喰うと良い。毒など入っておらぬが証を見せよう。宍戸隆家!」
「は?はひっ!!はい!」
「好きな皿を取れ!」
「はっ!!」
自分の前にある皿は取らず、右端の物を取る。
シュ!
一瞬で宍戸の前に移動した信長。
「ひっ!!」
「良い、よこせ。」
宍戸が選んだ皿の焼きそばを一気に頬張る。
「うん相変わらず美味い!どうだ毒は無いと信じるか?信じた者は遠慮せず食べて見よ。」
ソースの香りに釣られ何人かが口にする。福原と世鬼はゴクリと唾を飲みながらも耐えていた。
「うっ!!」「これは!!」
「うまい!うますぎる!!」
「ふん!そうだろ。気に入ったなら塩焼きそばもあるぞ。ソース味から塩味、これを"味変"と呼ぶ。」
同数の五目"塩"焼きそばを出す信長。
「毛利輝元!腹が減っては戦ができぬぞ!交渉事も立派な戦だ。無理にとは言わぬが、この勢いだと全部無くなるw」
物凄い勢いで皆がガツガツ喰らいついているw
最後まで我慢していた福原と世鬼も
「おおおおお!何という味だ!ガツガツガツ」
「ごあああ毎日でもいけますなムシャムシャ」
輝元
「では1口。。。。。うっうっうっ おっおみごとーーーーー!!」
信長
「ハハハハハ喉につかえるぞ。ほれ好きなのを選べ。余は残った物をもらおう。」
ペットボトルの"お~い茶々"をテーブルに出している。
信長の気遣いに皆の緊張もほぐれ腹も膨れ、三種の神器も無くなり、やっと話せる雰囲気になった時。
「多治比猿掛城爆破の時間だ!!始まるぞ。」
吉田郡山城と多治比猿掛城は直線距離で4km弱。平地を挟み江の川近くに吉田郡山城、多治比川の側に多治比猿掛城。互いの城が良く見える。
11月の5:30。日の出前で暗い中、織田信包大納言艦隊から、短距離イージスミサイル30発が撃ち込まれた。
爆破の振動が郡山城にも伝わる。何より10発はナパーム弾を使ってるせいで、猛烈な炎が薄暗い闇を煌々と照らしていた。
偵察ドローンからの画像は、粉微塵になり燃え盛る城跡が悲しく映っている。
艦内モニターを見ながら織田信包大納言は
「上皇使徒様の命令とはいえ、30発も撃ち込んだのは遣り過ぎだったかな。。
まあ無人なのは確認済みなので、無慈悲な大量 殺戮者にならずに済んだのは幸いだがな。。」
*****
信長
「今現在、多治比猿掛城が無人なのは確認済みだ。厳島沖合いからの爆撃は正確無比、逆賊に容赦はせぬぞという警告である。」
シーンと静まり返る場内。。。
小早川隆景からの鳩便で爆撃の件は知っていたものの、凄まじい破壊力を見せ付けられた今、話す気力も失せていた。
信長
『おっ、起きたな。流石にこの爆撃音と振動では覚醒するかw』
「さて輝元よ奴等はどうしてる?遊び呆けてまだ寝ておるのか?」
輝元
「上皇使徒様。言い訳をするつもりは御座いませんが、"あの集団"は突然城門前に現れ保護を求めて来たのです。」
「爆音で目覚め、来たようだぞニヤリ」
ドタドタドタドタ
「毛利殿!!なんじゃ今の音は?戦か??」
"元幕府"近習等と共に駆け込んできた足利義昭。
「おい!久しぶりだな」
「ん?おいとは誰に向かって言う?ひっ!!魔王!!ひいいいいいいい」
シュン!ドガッ!
一瞬で6人の近習に当て身を喰らわせ、床に這いつくばらせる。その中の1人に三淵藤英もいた。
「来い」
義昭の首根っこを鷲掴みにして、高御座の前に叩き付けた信長。
高御座の後方玉座に鎮座し、再び"帝グッズ"を取り出して
「相変わらずコソコソと、諸侯に文を送り付けているみたいだな義明!」
「高御座!錦の御旗!!三種の神器!!!!!」
ぶるぶるぶるぶる震えだす。
『おっ!愉快な親子もお目覚めかw』
ドタドタドタドタ!!
「何事でおじゃる!!」
二条晴良と九条兼孝が血相を変えて飛び込んできた。
二条
「はっ?何故ここに高御座が??」
九条
「父上様、、あれは錦の御旗では??」
二条
「は?もしや。。三種の神器ではないか!!!!!」
九条
「おのれ何者。。。使徒いや第六天魔王!!!」
二条
「我ら親子不倶戴天の敵!!」
信長
「ほお~、末長く我等を御導き下さりませ~。と言ってたのは誰であったかな?」
二条
「うぐぅぅぅ。。あれは世間知らずの帝の御前にて、仕方無く一緒に頭を垂れたまでじゃ。
大樹よ寝そべってる場合か!
毛利殿も何をしている!早くこの悪鬼を討たぬか!!」
ボキッ!「ぎゃーーーーー」
取り出した木刀で左鎖骨を砕かれた"元関白"が悶絶している。
「上皇である余の子、今生帝を世間知らず呼ばわり!
この不埒な輩、不敬罪で磔に致す!捕らえよ。」
いつの間にか収納から出していた、黄櫨染・陸自スタイルAPC9部隊10人が、二条に手錠足枷をはめる。
「この罪人、お前の実父だったな兼孝w親子連座だ!そいつも捕らえよ。」
「た、助けてーー」
近くにいた世鬼にすがり付こうとしたが、逆に後ろ手に捕らえられた。
「入ってろ」
二条九条2人を収納に入れ、驚愕する毛利一同に向き直る。
「これで分かったであろう。"俺"は人の出し入れすら可能な、チート収納という神力を授けられておる。
この馬鹿どもを城門前に捨て置いたのも"俺"がやった事だ。」
「なっ!!何故その様な。。」
「輝元。まだ分からぬか?なら聞こう!
なぜ匿った?俺ならこんな疫病神。将軍、関白の名を騙る不届き者として捕らえ、斬首にしたであろう。
それをこの信長に見極められている、試されていると何故思わん!
織田の影部隊から聞いたが、そこにいる重臣達のほとんどが反対したそうでは無いか。それをお前は強引に城に留め、その横着振りに手を焼いている。違うか!」
「ぐう。。。毛利を嵌めたのですか。。」
「天野、福原、世鬼!うぬ等の怠慢だ。嵌めたなどと笑止千万!毛利元就が最も得意とした策略であろうが。
それを跡継ぎに何故教えてこなかった!」
「「「。。。。。」」」
福原
「返す。。。言葉も御座いませぬ。。」
「珍しく毛利両川の文にすら同意せず、この馬鹿どもを匿ったのには理由があろう。
お前なりの苦労もあったはずだ。今ここで重臣等の前で、その胸のうち語るが良かろう。」
信長からすれば若干17歳の子供。最大の後ろ楯だった祖父・元就が病床に倒れ、叔父2人も山陰・瀬戸内を纏めるため本城の郡山には不在。
その不安を埋めるため"元"ではあるが、将軍と関白の権威にすがった。
それを敢えて皆の前で吐き出させて、若者の心を救おうとしていた。
輝元
「。。。どうすれば。。どうすれば、この大毛利を纏めていけるのか。。
父が無くなり、祖父様も倒れ病床に臥せり。。。
出来人の叔父上2人は毛利の為に遠方で戦っておられる。。
たまに文にて相談しても。。いつも上から物をいわれる始末。。。
血筋のみの某が、ここに居る優秀な重臣達を引っ張っていくためには、元ではあるが将軍と関白の名に頼りたかった。。。
放蕩横着もやむを得ぬと。。。某には無理だったのです、こんな大きな家を引っ張ることなど。。。所詮。。むり。。」
ポロポロと涙が零れ始め、それは大粒に変わり号泣となっていく。。
「「「おやかたさま。。」」」
若き当主の苦悩する姿。
それを目の当たりにした毛利譜代の重臣達。
高御座と三種の神器で緊張を与え、ソース&塩五目焼きそばで心を和ませる。
多治比猿掛城を爆撃壊滅させ、人間をも出し入れさせ恐怖を叩き込む。
そして家臣の前で輝元の本心を引き出した信長。
『どれこの辺で締めるか』
「毛利輝元!まんまと余に嵌められ江戸幕府に攻め込まれる口実を作った。!この愚か者めが!!!」
威圧が乗った恫喝に本人だけで無く全員に緊張感が増す。
「しかし御主の申し開き。
であるか、である。つまり文字通り身に余ったのであろう。1人で悩み苦しかったな、輝元よ。。
この辺で少し肩の荷を下ろしてみてはどうだ?」
ズーーーン!
「これは!!御館様!!!」
「なっ!まことか!!」
「おお!紛れもなく御館様じゃ」
清潔感溢れる真っ白なシーツのベッドに、毛利元就が横になっている。
ここに来る前に護衛もろとも収納していたのだ。
美しいを通り越し女神の様な女性が寄り添っている。
「帰蝶どうだ見立は?」
「はい食道癌の末期です。余命はありません。いまだに御存命なのは奇跡そのもの。
余程、毛利の行く末を案じているのでしょう。」
福原
「帰蝶?もしや濃姫様?」
世鬼
「とすれば"上皇后使徒様"!!」
宍戸
「奇跡の聖女様で高名な上皇后様。。」
天野
「上皇后使徒様。末期とは、もう先が無いとの意味で御座いましょうか?」
「はい。残念ですが手の施しようが無い状態です。」
輝元
「名高い聖女様の神力を行使してもでしょうか?」
「ここまで酷い状態では神力でも完治は無理です。それでもやれる事は2つほどあります。
まず苦しい痛みを取り除き安寧な状態に戻す事。
それで身体の負担が減って楽になり、本人の意識が元に戻る可能性が高くなる。この2点ですね。」
輝元
「おお!そんな事が可能なのですか!!何時も激痛にのたうち回り、滅多に目を醒まさなくなりました。痛みだけでも取ってもらえれば、祖父様を苦しみから解放できます。
お願いします"聖女様"
どうかどうか神力を恵んで下さいませ。某は斬首でも磔でも処分に不服はありませぬ。
祖父様の痛みをどうかどうか。。」
信長
「輝元!勘違いするな!お前の首などいらぬわ!
帰蝶、神力を行使して元就を痛みからだけでも救ってやろう。話はそれからだ。」
濃姫
「はい上皇様。ではチートヒール神力Max!」
毛利元就の全身が光に包まれ、軍議を行う大部屋全体が、例えようのない心地好さに満たされてゆく。
「「「おおお~~」」」
そこにいる者全員がその恩恵に与り、ウットリと恍惚感を味わっていた。
【足利義昭だけ、任意にヒール範囲外設定にしているw】
『上皇様。寿命は史実通り来年6月に設定しましたけど、意識はすぐにでも戻せます。どうしますか?』
『ああ戻してやるか。吉川元春の到着後と考えていたが、この流れと雰囲気なら一気に今、決めた方がよさそうだ。』
『了解しました。では』
「戻りなさい毛利元就!!
"聖女"であり"上皇后使徒"である私の命令です!!今すぐ戻れ元就!!」
聖女濃姫が突然、大声で呼び掛ける。それを息を飲んで見つめている毛利家一同。
藁にもすがる思いの彼等にとって、正に信じられない"上皇后聖女様"の奇跡が起こる!
「うっ、う~ん。。。ここは。。。?はて?軍議の大部屋?」
「そ、そ、そそ祖父さまーーー」
「「「御館さまーーー」」」
「ううう、お目覚めじゃううーー」
「有難や~ありがたや~」
ほぼ全員がむせび泣き、全員か濃姫を拝んでいる。
元就
『これは痛みが嘘のように消えておる。なる程この娘に、高御座より高い場所に座しておる大男の2人じゃな。
どうやら人では無さそうじゃ、と言うことは。。少し揺さぶるか。』
「なんじゃ輝元?錚々《そうそう》たる面子じゃが?織田信長の暗殺計画でも立てておるのか?」
そう言いながら高御座上の玉座に視線を送り、ニヤリと笑う中国地方の覇者!!
「はあ??祖父様。。。(汗)」
「「「。。。。。。(汗)」」」
重臣一同、感動の涙の後は冷や汗をかいている。
信長
「ぷっ!ぷははははははは、流石だな元就。
一瞬で全てを理解し揺さぶりまでかけてくるか。良いだろう、面白い会談になりそうだw」
さてやっと毛利12代当主・毛利元就の御目覚めです。
織田信長と濃姫との会談、どうなるのか?楽しみですねまた明日。
足利義昭って放置? m(_ _)m