第53話 小田原城の奇跡
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1570年10月3日 8:00
小田原城
北条氏邦(22歳)
大里郡寄居の鉢形城・城主
たまたま病床の父・氏康の見舞に訪れていた小田原にて、鉢形城落城の報せを受け、そのまま小田原城下の自宅に滞在中。
「殿が。。兄上が。。身罷られたと。。」
氏政形見の脇差しを手に取りながら放心状態の氏邦。
北条幻庵
「小太郎詳細を話してやれ。」
「はっ!」
風魔乱波全員からの連絡が途絶え、飛び加藤が本厚木へ、風魔小太郎自らも平塚へ向かう。
その途中、大磯へ差し掛かった時ドームからの砲撃を目撃した。
慌ててその場所に赴き、後続の北条軍兵士達と共に、バラバラになった肉片の中から氏政の脇差しを探し出した。
織田との合戦で総崩れになった事のみ聞き、小田原城に取って返したと氏邦に説明した。
北条綱成
「夜中に突然城下に現れた2千の兵士達。。
その者達の話ではわしの玉縄城も落ちたと。。城から討って出て全滅したそうだ。。
そして織田信長の摩訶不思議な"神の力"で藤沢から一瞬で小田原に戻されたと。。。」
幻庵
「松田を始め13人の北条重臣の首級。。そして当主氏政殿の戦死。。本厚木と藤沢6万5千の壊滅に玉縄城の落城。。
先ほど綱成と話し合ったが、わしと綱成の切腹にて北条家の存続、伊豆と小田原城界隈の領土安堵をお願い申し上げるつもりだ。」
氏邦
「そんな!!」
綱成
「もう氏康殿の息子で残っておるのは御主だけである。
氏邦殿が織田信長公の直臣になれるように、わしと幻庵様で頭を下げ腹を斬って参る!」
「名代様。。。。。」
*****
その時シュン!
「早まるな地黄八幡!幻庵殿も今さら腹を斬って何になる。命の使い道を間違えるでない。」
シュッ!カチッ
「小太郎、次は首を落とす!」
ボトッ。。ブシュー
「うぐっ!!」
突然城内に信長が1人で現れた。
それに素早く反応し、棒手裏剣を投げ跳びかかる風魔小太郎。
信長は居合い斬りでそれを防ぎ、返す刀で小太郎の右腕を肩口から斬り落とした。
氏邦
「曲者だ!!出会え出会えーー」
幻庵
「騒ぐな氏邦!無駄だ。。」
綱成
「そうだ。。ここに突然来れるのか?おそらく城内の兵も片付けられている。。。」
氏邦
「そんな。。。」
信長
「ふん!流石だな北条の要石2人。氏邦お前も少しは見習えw
それより小太郎の血を止めねば死ぬであろう。しばらく余の中に入って貰う。」
シュッポ!
氏邦
「なんと!!。。。消えたのか?」
「さて此度の戦であるが、帝が出した詔勅を小田原の氏政が寝所に届け、城下町へもばら蒔いた。
なのに貴様ら北条家はそれを無視して兵を挙げ、"官軍"である余の江戸幕府織田家の軍勢に戦闘を仕掛けた。
まさにうぬ等は"朝敵"世を乱す"賊軍"である。
幻庵!綱成!氏邦!病床の氏康とて同じ事だ。
これより帝の元に連行致す。帝の目の前で将軍の余が天下の大悪党一族として裁きを申し渡す。異議申し立てはあるか!!」
幻庵・綱成
「「我等2人は如何様な処罰も覚悟しております。若輩者の氏邦だけは何卒何卒!御容赦の程をお願い奉りまする!!」」
「ほお?先程まで切腹して小田原と伊豆の安堵と申しておったではないか?」
氏邦
「どこで。。。それを。。。」
幻庵
「氏邦、勝手に喋るな!」
「ふん!良い幻庵。それよりうぬ等、余が気付いて無いとでも思っておるのか?」
瞬間!消えた信長。
ズサッ!「ガァ!」
信長の脇差しが右脇腹に深く刺さり、しゃがみこむ飛び加藤を蹴り倒す。
ドガッ!「グギャ。。。」
「それで気配を消したつもりだったのか?甘いぞ加藤段蔵!」
抜いた刀を何の躊躇いもなく、加藤の右太股へ突き刺した。
「ゴオォォォ!」
「ふん!殺すのは何時でも出来る、貴様も入っておれ。」
シュッポ!
飛び加藤も収納に入れ
ドゴッ!「ひぃぃぃ」
上座の氏邦を蹴り飛ばし、その場に豪華なソファー椅子を取り出し座る第六天魔王。
「我こそは
天御中主神様が遣わした創造主使徒である!!控えよ!人の子よ!」
固まって動けない三人の目の前に、派手な黄櫨染の陸自スタイルに身を包み、肩からAPC9を掛けた50人の兵士達を取り出した。
「フルオートで撃て!!」
ズガガガガガガガガガガ!
ズガガガガガガガガガガ!
左右の板壁が、圧倒的火力の前に脆くも砕け散った。
「この攻撃で本厚木の松田憲秀8千、藤沢の松田の赤鬼7千の先鋒騎馬隊は全滅した。1人残らずだ。」
幻庵・綱成・氏邦
「。。。。。。。。。」
「まだ知らぬようだが、伊豆国も今朝方、既に落ちておる。
氏規不在の韮山城を始め熱海・伊東・修善寺・下田・三島全ての城を落とし余の幕府軍が陣を敷いた。
2万の軍勢が全員これと同じ"マシンガン"を持ち、空からは御主等も見たであろう?鉄箱で爆弾攻撃だ。
船で下田を出た2千は全員捕らえたぞ。今は武蔵国の江戸に監禁しておる。
さあどうする"朝敵"北条一族よ。」
幻庵
「上様。。申し訳御座いませんでした。何卒、氏邦の命だけは何卒なにとぞお情けを。。」
脇差しを抜き"自分の頸動脈"に突き刺す幻庵!
シュン!「させねえよ!」
信長は瞬間転移し、幻庵の脇差しを素手で握り締め粉々に砕く。
「幻庵、勝手に死ぬこと罷りならん。余は神の使徒であると共に、武家の棟梁・征夷大将軍にあるぞ!」
シュッポ!
信長は三人の脇差し・刀を全て収納した。
綱成
「うっ!こんな事まで。。。」
氏邦
「。。。。。神の使徒さま。。。」
幻庵
「上様。。我等を天下の大悪党一族と申されますが、上様の尾張・美濃・畿内に攻め込んだならいざ知らず、北条は武蔵国の救援と相模国を守る戦をしたまで。それが何故"朝敵"の汚名を着せられるのでしょうか?」
「ふん!小賢しい物言いだな。どこの誰が武蔵国の領有を北条に許したのだ?
北条早雲と名乗る前の伊勢宗瑞が"伊豆討入り"で手に入れた伊豆国を足掛かりに、"力ずく"で勢力を広げたのであろうが!
この小田原城とて大森藤頼から奪取した物だ。」
綱成
「確かに上様仰せの通りでございます。某の疑問は何故此度、我ら北条家が幕府軍の目の敵にされなければならぬのか?
その1点だけお聞きかせ願えませぬか。」
「知れたことよ。北条では関東が纏まらん。今まで関東で戦ばかりし民を疲弊させたうえ、確固たる勝利を納められず上杉の次は武田と争っておる。
うぬ等では伊豆・相模・武蔵の安寧は訪れぬ。それだけの力が無いのだ!
故に帝より五か条の勅命を受けた。余の役目はそれを実行するのみ。」
幻庵
「五か条の勅命は我等も"ビラ"で拝見致しました。
"速やかに武装解除し臣下の礼を取るべし。"
これよりそれを実行致します故、何卒氏邦を上様の直臣の末席に加えて頂きたく。」
「ふん!遅い遅すぎる。始めからそうしておれば小田原の所領だけは安堵したものを。
帝の勅命をなんと心得るか!!愚か者共が。
幻庵・綱成・氏邦よ。
初代北条早雲がそうした様に、余も"力ずく"で武蔵・相模・伊豆・上野を幕府直轄領とする。」
綱成
「上野?あの地は上杉謙信が実効支配しておりまする。」
「余が風魔の乱波を封じた故、何の情報も得られておらぬか。
上杉謙信は帝の勅命に従い、10月1日を以て速やかに上野国から撤退、幕府に全て献上した。」
幻庵・綱成
「「なっ!!あの謙信が!!」」
「あ奴の潔い態度、誠に殊勝なり。よって上杉謙信を余の幕臣とし江戸幕府"副将軍"に任命した。
副将軍の御膝下、これからの越後は栄えるぞ。
既に余がでかい港を作ってやり、巨大鋼鉄艦も貸与しておる。
江戸幕府による日本海交易の一端を担って貰うからな。
おおそうだ越後におった風魔忍群20人も全て捕縛しておる。もう用は無い返してやろう。」
ドン!
越後に忍んでいたが消息を絶っていた風魔忍群20人が、武装解除され収納から解放された。
「おおっ烈風斎!無事でおったか!」
「。。。??幻庵さま!!ここは?小田原?」
「おい頭目、余を忘れたか?」
「む?あ、あなた様は使徒様!!」
たびたび収納から出されては、散々に脅されていた"風魔烈風斎"含め忍軍20人が信長に土下座をする。
「良い、それよりうぬ等に見せた巨大港を持つ越後の様子、事細かにそこの三人に聞かせてやれ。」
「はっ!使徒様の仰せのままに」
それから風魔忍軍20人の話す越後の活況に、衝撃を受ける北条家の三人。
信長を敵に回した愚かさを悔やむが後の祭り。もう幻庵すら話す気力も失せ唯々沈黙している。
「氏邦よ、氏康が子の生き残りは1人では無いぞ。帝の元に連行する前に会わせてやろう。」
ドン!
「兄上!!!」「氏照殿!!」
「氏照ではないか!!」
「???はあ?氏邦、名代殿!おお幻庵様も!んっ?滝山城では無い?ここはもしや小田原?」
「頭が高いぞ氏照!」
「あっ!使徒様!!ははぁ~」
氏照も風魔忍軍同様である。
と言うより信長は、収納した者達に奇跡の所業を見せ付け、創造神使徒の自分への忠誠心を植え付けている。
『頃合いは良しだ。帰蝶そろそろ参れ。』
護衛のSP部隊30人に囲まれて濃姫ともう1人、この小田原の真の主がやって来る。
*****
時を少しだけ巻き戻す。
「防御結界完了、もう誰も入れません。」
「うむ、では帰蝶鑑定を頼む。」
「はい。」
信長と濃姫は小田原城奥の間にて療養中の、北条氏康前当主の枕元に現れた。
*****
北条氏康
年齢:55歳
称号:相模の獅子→重度の中風患者
速さ:B→ゼロ
攻撃:A→〃
防御:A+→〃
剣術:B→〃
頭脳:B→C
統率:A→B
内政:A→B
来年1571年、脳卒中による中風の悪化で56年の生涯を閉じる。
*****
「やはり史実通り、中風の悪化で寿命は来年までです。行動に関するステータスは"ゼロ"
それ以外は"ワンランクダウン"に留めていますね。流石は元・"相模の獅子"の称号持ちかと。」
「ほお称号が消えたか?」
「"重度の中風患者"に変わってますね。」
「。。。それも哀れだな。だが動けなくとも頭脳がまだCランクであれば、日本の為に使い道はある。
数年伸ばしてやるか、早速今日から働いてもらおう。
身体の治癒は"車椅子"を出してやる故に、歩けない状態で良い。知的領域で具体的な症状は?」
「現在の症状は左半球の損傷による右半身不随ですね。
失語・失認・書字障害、計算も無理です。」
「カリスマ性が出過ぎると邪魔だ!失語はそのままで良い。それ以外は治癒してやれ。」
「はい上様。確認ですが残り寿命は具体的に何年でしょうか?」
「2年は生かしてやるか。
1572年12月31日死去、死因は心臓発作。
本日、脳卒中を治した時点で、身体はボロボロであると余から伝えておく。」
「承りました。では、チートヒール」
北条氏康"相模の獅子"の身体を純白の光が覆い包む。
『うんっ?う~む??これは!!動く動くぞ!腕が指が動くぞーー!!!』
信長
「どうだ氏康気分は?」
濃姫
「上半身は動きますが下半身は完全麻痺のため歩行は無理です。但し脳左半球は治癒叶いましたので、会話以外は機能回復しています。書状を認める事も出来ますよ。」
『誰だこの大男は?それにしても美しい女だな。妻に娶りたいものだ。。。
あっ!確かに言葉として発声出来ないな。。。面倒だがいちいち文字にするか。。』
「氏康殿、申し遅れましたが私のみ思い浮かべた言葉を理解できます。鑑定能力という創造神からの神力を使えますから。
美しいと褒めて貰いましたが、妻になるのは御免被ります。」
「なんだと!!こら氏康、貴様このまま死にたいのか!」
信長は一瞬で氏康の首もとに刀を寸止めする。
『ぐっ!!剣筋が見えなかった。。恐ろしく速い!』
「上様。せっかく神力にて治療したのに、殺しては元も子もありませぬ。それに"剣筋が見えなかった"と十分強さを理解したようです。刀を御納め下さいませ。」
「ふん!まあ良い氏康。神の使徒である余の神力も見せてやろう、これをやる。」
ズン!
目の前に車椅子を取り出した信長。氏康を持ち上げ椅子に乗せ、使い方を説明した。
『これは便利だ、素晴らしいでは無いか!』
「喜んで頂き光栄です。では上様、現状の御説明をお願いします。」
信長は自分達の神力の事。
帝の勅命。織田家江戸幕府設立。
朝敵となった北条家の現状。
これからの日本の在り方。
その為に今から氏康の為す事。
等々を詳しく説明する。
「見よ!」
帝の五か条の勅命に錦の御旗を取り出し見せた後、止めを刺す。
右肩を負傷し全身返り血を浴びて、戦場の殺気を滾らせる北条氏繁を出して見せたのだ。
氏康
『??!!お主は玉縄の氏繁か?』
濃姫
「そうですよ氏康殿、玉縄衆唯一の生き残りです。」
氏繁
「おのれ織田信興!!???ハアハアハアここは??お、大殿様!!??」
「入ってろ。」シュン!氏繁を再び収納に戻す信長
『。。。。。。本当に使徒なのか?』
「そうですよ、上様と私は帝もひれ伏す
天御中主神様の使徒です。氏康殿の身体が動くのも、神の力を用いた治療のおかげです。ではこれを書いて頂けますね?」
『。。。。。』
「嫌か?構わぬぞ。先程の氏繁以外にも、うぬが息子氏照・氏規も入れておる。
身体に重りを巻き付け、相模湾沖に取り出してやっても良い。幻庵、綱成、氏邦も一緒にな。これで皆あの世で、氏政と酒でも飲めるだろう。」
『。。。氏政。。選択を誤りおって。。筆をくれ、いや下さいませ。』
信長が予め用意した文書に署名し花王を認める信康。
その内容
北条家の所領は全て江戸幕府に返還する事。
北条一族は江戸幕府が定めた管理地域にて暮らし、幕府の役目を勤め、日本国に貢献する事。
北条家臣団並びに領民の事。
幕府に指定された地域に移り住み各々の役目に全うする事。
その働きに江戸幕府は正当な評価を与え、扶持は織田金貨にて相応な金額を支払う事。
上記違えた場合北条一族は"朝敵"となり、日本国外追放とする。
「よし氏康、暫く待機しておれ。」
防御結界はそのまま、濃姫に護衛のSP部隊30人を付け部屋に残しシュン!
『おおおおお~消えた!!』
北条氏康。小田原城内での奇跡に、全てを受け入れる決心をしたのだった。
*****
北条氏照が信長に土下座をしているところに、護衛のSP部隊30人に囲まれて濃姫ともう1人、この小田原の真の主が"車椅子"に乗ってやって来た。
幻庵
「なっ!!!!!」
綱成
「殿!!!!!」
氏邦
「父上!!!!!」
氏照・土下座中
「へ?殿?父上?椅子が動いておる?」
風魔忍軍20人
「「「御館様ーーーーー」」」
「ふん!久しぶりに病床から出て、動いてる氏康に感動しているところを邪魔して悪いが、うぬ等なにか忘れてないか。
"朝敵"であり、世を乱す"賊軍"の北条一族よ。これより帝の前に連行致す。全員入れ!」
シュッポ!
信長は小田原城ごと北条一族を収納。跡地に信長チート錬金術特性・高さ900mオリジナル"織田スカイツリー小田原"を創造する。
スカイツリー専属Android兵士3,000も配属済み。
信長
「さてと菅野第2直轄軍団長は北米大陸ボルチモア方面を視察調査させておる。
故に侍大将・中川皓太を大将として、半数の15,000人で小田原の治安維持を任せる。
"織田スカイツリー小田原"を本拠地とせい。
専属兵士3,000と合わせ18,000人で相模川西部・平塚・厚木・愛川方面まで巡回するのだ。
伊豆国の第4軍団長・丸佳浩の2万。
信時中納言の"織田スカイツリー駿河"1万3千とも常にテレパシーで連絡し密に連携しろ。」
中川皓太侍大将
「はっ!しかと勤めまする。」
信長
「信興中納言の東京ドーム2号に、尾張兵2万を乗せ暫く相模湾に滞在させておく。かなりの戦力となる。ゲリラ的に攻撃してくる集団があれば、APC9で膝を砕き捕縛しておけ。頭目は殲滅して構わん。励め!」
シュン!東京へ帰ります。
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北条氏康を2年限定とは言え蘇らせた将軍信長。
相模・伊豆・武蔵等の北条不満分子を治める役目を授ける予定です。
武力を持って逆らってくる集団。以前の信長なら間違いなく問答無用、根切りにした筈。
"本能寺の変"を体験し未来の日本を知って自身の考えを改めた信長。
民達に自分自身の為に、家族の為に、そして日本の為に人生を全うさせたい。そんな強い思いをもったからこその行動変化です。
但し甘いだけではなく"頭目は殲滅して構わん"の言葉の様に、指揮官的立場への責任は死を持って償わせる。
リーダーと従わされる立場の者との線引きは明確に引いています。
さあ明日は東京を描くぞ
(*≧∇≦)ノ