第118話 天皇と焼きトン&ハイボール
1574年10月1日
秀吉が宮内庁の侍従長含む5名の幕臣と、懇親会を行っていたのを怪しんだ織田幕府だったが、AIの超高速行動解析結果を見た信長は
「なっ!!これは!!」
織田信時・幕府情報諜報部大臣
「正親町天皇陛下?ですね……」
「ああ間違いない方仁だ……」
解析AI
(正親町天皇と羽柴秀吉の会話音声音量をアップします。)
秀吉
「陛下……本当に大丈夫なのですか?」
正親町天皇
「苦しゅうないぞ秀吉。余もこのような場所で1度くらい食事をしてみたかったのだ。」
「はあ……ですが本物の侍従長にばれたら某の首が飛びます。」
「首が?あ~あ、職を失う事をそう言うらしいのお。大丈夫じゃ、余の元で御伽衆として雇用してやろう。秀吉は話術が巧みゆえ、武辺物や政談なども面白おかしく語れるからのお。」
「いや、、、ははは皇帝閣下様の場合物理的に首が飛ぶのですが(苦笑)
まあ良いでしょう。但し時間だけは御約束通り1時間のみです。それ以上は侍従長も宮内庁も誤魔化せませぬ、宜しいですね。」
「わかっておる、困らせはせぬ。それで秀吉、たまらなく良き香りのするこれは何の肉じゃ?」
「はい焼きトンの"カシラ"です。栄養満点・味もよく何より安い。東京庶民の間で最近大流行しております。」
「焼きトン?"カシラ"?つまり何の肉じゃ?」
「ああ~~そこからですか。トンとは豚です。豚のこめかみから頬辺りの肉です。」
「こめかみを食すのか?」
「旨味が強い部位で脂臭く無く大人気です。」
「なるほど、どれパク」
秀吉の説明を聞いて躊躇う様子もなくカシラ串焼きを頬張る陛下。
「おおお!!美味い美味いぞ秀吉!」
「はっはは~良き食べっぷりです。」
同じくカシラを頬張りながら、ハイボールを飲んで胃に流し込む秀吉。
「ぷはーーー最高だな。」
「それは何を飲んでおるのじゃ?」
「ああ失礼しました。すみませ~んハイボールお願いします!」
店員
「はい喜んで!ハイボール1丁!」
「ふむ、喜んで!とは…注文されて嬉しいのじゃな。」
秀吉
「まっまあそうですね。ははは」
秀吉の真似をして、カシラを頬張りハイボールを飲む陛下……
「ぷはーーーなるほど最高じゃな秀吉よ。」
「ぷはーーーって(汗)そうですか」
その後もネギ間タレ・イカ下足揚げ・もつ煮込み・サンマ塩焼き等々、生まれて初めての居酒屋メニューを幸せそうに食べる正親町天皇陛下。
秀吉部下A
「部長、そろそろ帰らないと不味いです。」
侍従A(尾張出身)
「羽柴殿、これ以上は侍従長との架空打合せ引き伸ばせません。」
この懇親会は宮内庁側4人
秀吉の戸籍管理部側2人
合計6人で行われていた。
宮内庁側4人中1人は天皇陛下
侍従A(尾張出身・偽侍従長役)
侍従B(元・毛利家)
侍従C(京都出身)
かねてより幕府前にあるモールで、お忍びで食事をしたかった天皇陛下の願いを、秀吉達が叶えてやったのだ。
陛下の耳元で小声で話す秀吉
「陛下、御約束の御時間です。これ以上は難しいので戻りましょう。」
「ううう、、、そうか、、、すまんのお、、分かった御主等にこれ以上迷惑はかけられん。しかし今宵は楽しかったなあ、生き返った気がする。余のわがままを聞いてくれて礼を申す、ありがとう羽柴秀吉よ。」
「はっ!勿体ないお言葉。では帰りますぞ。」
*****
信時
「兄上様……これは……何というか……」
「わかっておる信時……まったく人騒がせな猿めが!!だがまあしかし、方仁が心から楽しそうにしておったな………」
「はい、本当に美味しそうに食べて飲んでました……」
「皇居で籠の鳥か……幼き頃から皇族として自由を束縛され、思い通りに生きてこれなかった……
焼きトンのカシラとハイボールで幸せそうだったな……」
解析AI
(これ以降、正親町天皇と羽柴秀吉の接触はありません。宮内庁へは月に1~2回蔦谷を訪ねているようですが、どの会話も仕事上必要項目でした。尚、天皇陛下はまたモールに行きたいと、尾張出身の侍従に呟いている様子です。以上報告終了となります。)
信長
「ご苦労。信時よ今回の件は忘れろ。但し蔦谷十兵衛の罰は行うのだぞ。
これから秀吉と少し話し、明日 方仁に会って土産を渡してくる。ついでにモールでカシラ&ハイボールでも馳走してやるか…」
「貸し切りにしますか?」
「それでは籠の鳥と変わらん。庶民の活気を間近に感じたいのだろう。
余の収納に入れ変装セットで化けさせる、誰も天皇とは分からぬであろうよw
では宴会場に戻るぞ、お前も飲んで食べてリフレッシュしろ。」
「はっ!」
こうして羽柴秀吉の疑いも晴れ、何事も無かった様に大広間へ戻ったのであるが。
**********
「グオォォォラアァァァ!!」
丹羽長秀
「武蔵様通訳をお願いします。」
織田武蔵(濃姫)
「通訳も何も聞いての通り、怒りに震えて喚いているだけ。言語になってませんw」
本多忠勝
「仕方ない蜻蛉切のサビにしてやろう。」
前田利家
「本多よ座ってろ!警護のAPC9以外ここには武器は持ち込めないだろ。俺が首を叩き折ってやる!」
信長
「何の騒ぎだ。ん?やっと起きたのか?セバスティアン1世」
「ひっ!ひいいいいいーー悪魔だーー人殺しの悪魔だーー」
「はあ?誰が人殺しだ。お前が兵をけしかけたから、返り討ちにしただけだ。それよりセバスよ、これからどうする?」
「な、どうするとは?何がだ?それにセバスでは無い!セバスティアン1世である。」
「やかましい、また顔面ぐちゃぐちゃにされたいのか?次は治さないぞニヤリ」
「ひっひいいいいいーーセバスでいいです。私の名前は今からセバスですーーー」
「最初からその態度でいろよクソ餓鬼が!だからどうする?ここは日本だ、ポルトガルへは戻れないぞ。あの国にはもう、お前の居場所は無い!」
「もどれない……そんな国王なのに……」
「3ヶ月前からポルトガル国王はドン・エンリケだ。余が擁立し、ポルトガル貴族と国民の承諾も得ている。」
「ううっ!伯父は?スペイン国王フェリペ2世が認めるはずがない!」
「いやあっさり認めたぞwそれどころか、子のいないエンリケ国王と余の息子・織田翔平との養子縁組にも祝福の言葉を述べ、マドリード郊外に作った織田空軍基地も認められた。」
「養子縁組?そんな………」
「そう言う事だ。将平が3歳になる2年後、ポルトガル国王はエンリケから余の息子織田翔平となる。」
「そんな事は認められん!僅か3歳で国王などと!」
「馬鹿野郎!きさま脳の中に虫でも沸いているのか?3歳で王に即位したのは自分も同じであろうが!」
「ぐぅ!それは……エンリケが職務を代行していたから問題ない!」
「そのエンリケが今の国王で、余の息子と養子縁組したのだぞ!当然しばらくは職務の代行もする。
それに大日本皇国皇帝の余が、軍事力と経済力の両面を提供してやる。」
「ぐう……」
「お前はこの3ヶ月の事を何も知らぬから無理もないが、フェリペ2世のスペイン王国とは日西安全保障通商条約を締結した、つまり同盟国だ。
これだけの後ろ楯があれば、少なくともお前の3歳時より遥かにマシであろう。」
「ううううう………どうすれば…」
「ん?」
「俺は…この先…どうすれば……どう生きていけば良いのだ……」
「つい4年前まで、この国にも役立たずの将軍がおってな。名門家の権威だけにすがり、軍事力も経済力も持たず無力。
それで政治が纏まる訳もなく戦乱の世が続いておった。」
力なく項垂れて聞いているセバスティアン。
「余に取って代わられたのだが、お前を見ていると元将軍のそいつを思い出す。」
「その…者は……その元…将軍は…殺したのか……」
「ふん、お前の様な殺戮者と一緒にするな!
労働を知らぬそいつを銀山に入れ4年近く経つが、ぶよぶよの体もすっかり引き締まって今では見違えるほど逞しくなり、健康体の山掘り職人に生まれかわった。」
「鉱山奴隷………」
「それはお前やフェリペがやった人権無視の植民地政策だ。余の鉱山労働者達は刑期を終えても待遇の良さに、自ら契約を更新して働く者がほとんどである。
なるほど……そこからだな、鉱山労働イコール奴隷。その思い込みかは矯正せねばならん。
その元・将軍は30過ぎていたがお前はまだ20歳。今から仕込めば3年で筋骨隆々になる、行くぞ!」
「はあ?何処へ?」
シュン!
次の瞬間、九州大分地方の鯛生金山に現れた信長。責任者(Android)にセバスティアン1世を預け
「まずは3年間働け、それからだ。」
シュン!
「なっ!消えた?ま、待て!置いて行くな!待てーーー」
身長210cm・180kgの責任者に両肩をがっちり掴まれ
「さあ今日は温泉でゆっくりしろ。仕事は明朝8時から夕方16時まで、休憩もあるから実働6時間半。食事は3食好きなだけ食べていいし、仕事時間以外なら温泉も入り放題だ。」
セバス君、厚待遇に信じられないようで
「ウソだ、ウソをつけ!鉱山奴隷にそんな上手い話があるかーーー」
泣こうが喚こうが逃亡は不可能。周りを幅・深さ共に100mの垂直空堀で囲まれています。
その頃、生野銀山では
元・室町幕府第15代征夷大将軍
足利義昭
「ふぅっくしょん!!誰か俺の噂でもしてるのか?にしてもいい湯だな~極楽だぜ!」
がんばれセバスティアン!!
ーーーーーーーーーーーー
今回の鯛生金山、史実では明治時代に発見された鉱山です。佐渡金山も確か1,600年代に入ってからですね。
まあこの物語に出てくる鉱山は、未来知識を持つ信長の経営ですから宜しくね。
m(_ _)m
また明日。