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生活安全局妖二課  作者: 真中祢緒。
第一章 始
4/8

妖って実在するんですね?!

「うわわっ…」


「ちゃんと掴まっときぃや!吹っ飛ばされてもしらねぇぞ!」


「ふかひれ、もう少しスピード落とせ」



服装は、迷ったがスーツにした。始めて曽良達を見た時2人がそうだったから。ただ、一結のは最初に買った安物のスーツなので就活生感が否めないのだがそんなこと今置かれてる状況下ではどうでもよくて


今、一結は大きな背中に必死にしがみついて飛ばされないようにしてる

風圧に負けて唯一の地上とも言える背から離れてしまえば大都会の上空に投げ出されてしまう




「ふ、ふかひれ…さんが…と、と鳥に…!」


深い臙脂色の羽根は1枚1枚が人一人をゆうに越すような大きさで一結が引っ張った所で抜けはしないだろうと言う程。声は普通に聞こえるものの頭部は遥か先だ



「(え、ふかひれさん大きすぎ…!)」


「ふかひれはフリカムイと呼ばれる巨鳥だ。片翼で七里くらいある」


「七里…」


「約30kmだ」


「!?」


「そんな化け物日本の上空を飛んでたらニュースになるからなこれは一応小さめな姿だ」


「(小さめ、とは)」


飛行機くらいはあるんじゃないだろうかと思う一結なのだがこの世界の普通がどういうものなのか計り知れないので言うのはやめた。そして、フリカムイとは聞いた事ない名前だなと思った



「フリカムイ。カムイはアイヌ語で神を意味する。フリは適当な意訳はないのだが高い生き物と言える。小高い丘の様にひっそりと生きていたのだからかなり恐ろしい」


「…怖すぎですよ」


人を襲うことはないフリカムイ


しかし、あるとき女性が食べ物を探しに山に入った際に泥で汚れたままの小川にはいってしまい、そこを水飲み場にしていたフリカムイの怒りに触れた。羽ばたき一つで全てを吹き飛ばしてしまう悪神となり槍で討ち取ったとされていた



「討ち取ったって…でもふかひれさんは今」


「それは伝承だ。嘘か真実かはさておき語り継がれる中で人は畏怖や恐怖を抱く。妖はそういう人の心から生まれる。暴れられては困るから探して三日三晩鎮めるために舞い続けてやっと落ち着かせたんだ」


「舞?」



聞きなれない言葉に一結は首を傾げる



「着いたぞ。降りるから舌噛むなよ」


「俵。口閉じてろ」


「え?…ぅわ、っ!」



ふかひれの声が聞こえてすぐにぐんと下降し始めた。飛行機の着陸を凌駕する風圧に一結は舌を噛み切りそうだと口を閉じ身体をできるだけ小さくしてふかひれに必死にしがみつく。たかが人間の握力で耐えられるわけなさそうなのに、何故か吹き飛ばされない事が不思議ではあるがある程度の圧が弱まるとゆっくりどこかに着地した様な感覚がしてそして砂埃を感じて一瞬咳き込む



「けほっ…ここ……って…」


見覚えのある場所ではないが見慣れたような大きな砂の校庭、端には遊具が並び、その対面には大きなコンクリート建ての校舎



「学校…?」


「そうだ、用があるのはこの3階。これも妖二課の仕事の一つ。定期訪問だ」



















__…



「はぁい!学校の怪談の代表トイレの花子さんでーす!校舎3階の女子トイレにようこそー!」



ウェルカムと言わんばかりに歓迎ムードの小さな女の子

その子はおかっぱに白いブラウス、そして赤いスカートを履いていた



「ちょっとちょっと!そんな典型的な紹介やめてくださいな!これはオン眉マッシュボブ!それにこれはスカートじゃなくてオールインワン!バックのベルト部分とかちょー可愛いんだから!」


「えぇ、…あの、すみません」


「そこは可愛い!とかおしゃれ!とか言うところでしょ!酉なら褒めてくれるのにぃ!」



頬を膨らませる仕草は女の子らしく可愛らしいと言えばそうなのだが、一結としては最初の自己紹介から引っかかってる事がありすぎて素直に褒められないのが実だ。今いる場所も場所なだけに笑えない



「曽良はどう思う?似合ってる?」


「かわいいよ」


「去年は確か前髪伸ばしとったよの?もういいんか」


「さすがふかひれ!曽良は毎年同じね!去年はかきあげ風が流行ってたけど今年はオン眉が流行ると思ったから早速髪切りにお願いしたの!」


「髪切りも定期的に切れる髪があって安心だな」


「私たち御用達だものね!」



和気あいあいと話す2人

その光景がどこにでもありそうな普通な光景に、でも話の内容の違和感に再び一結の脳内は大混乱を極めた



「花子、歓迎もそこそこにそろそろ彼に説明してもいいかな」


「いいわ。こんなに無知なのも珍しくてつい。ごめんなさいね、置いてきぼりにしちゃって。引きずりこんだりしないから安心して」


「は、はい…」


「改めて自己紹介します。私はトイレの花子。都市伝説や学校の怪談で子どもたちに噂されるあの花子さんです」


「ほ、本物…」


「んー本物と言えばそうなんだけど。私含め花子ってどこの小中学校にもいるんだよね。全部じゃないけど。私は都内代表」


「!?」




学校の怪談はどこで始まったのかそれが本当なのか作り話なのかそれを知るものは誰もいなくただその話だけが何年何十年も語り継がれ残り続けてきた。その月日の数だけ人々の恐怖は在り続ける

そして妖もまたこの世に存在し続けることになる



「流石にもう高校生達は信じなくなってるから数はこれでも減ったのよ?でも小中学校の子供達はまだ好奇心旺盛であったり怖がりな子がいるから私達はここにいるの。でも怪談通りに行かないのが現代に生きる花子なのよ!」


ズビシと一結を指さす花子

それにびくりと肩を震わす様子にふかひれはげらげらと笑った



「都内数カ所の花子達と話をして彼女らと共生する道を確立した。怪談をなくすことはできないが妖側からの人間への被害を防いでもらっている」


「私達も長年子供たちを見てるからね。脅かしてやりたいって気持ちより見守りたいって言う気持ちの方が強くなっちゃって…30年前の生徒達が帰ってきてくれたりすると嬉しくなるもの。こんなに大きくなっちゃって…って」



そう話す花子の表情はとても穏やかであり、恍惚としてるようであり、でも嬉しそうでまるで母であり恋人であり、同級生かのようにも見えた


「学校の怪談って私達だけじゃないから、他の怪談で登場する子達の管理もしてます!基本皆私達と同じ考えもってるから見守り隊みたいになってるけどね!」


「へぇ…(妖に、見守られてる??)え、ていうか…妖と共生ってできるんですか?」


「俺や千秋を見てまだそこ疑ってるんか?」


「あ、いや…お2人は特殊なのかなって」


「できるできないかで言えばできる。妖が人の言葉に耳を傾け人に寄り添いたいと思ってくれれば、だけどな」


「どうやって…」




一結がとりあえず教わっているのは九字切り。妖から身を守る術だ

だから一結は妖課での仕事は妖退治だと思っていた



「さっき言いそびれたが、妖と人が対話をするにはまず妖に興味をもってもらう事が大切だ」



妖が生まれる根源は人の恐怖や恐れ


人の理解を超える奇怪で異常な現象


あるいは


これらの現象を起こす不可思議な力


化学で説明できない根拠のない


病名を診断できない


目には見えない触れられない何か


その漠然とした存在


それらを総称して妖と呼ぶ


そしてそれに加えて日本古来のアニミズムな精神


生物・無機物を問わない全てのものの中に霊魂が宿るという八百万の神の思想が混ざり合い妖は生まれる




「生まれた最初はその原点の思いしか持ち合わせてない。浮遊する火の玉を恐れるならそういう妖になるし隙間風が怖いなら戸を揺らす妖になる」


「そして私達はここで子供を待ち構える怖い女の子として生まれたわ。でも時代と共に僅かにその恐怖は薄れてく。薄れてくと怖がる子供も減っていく。生まれたからには私達妖も生きる為の糧が必要なの」



妖の生きる糧は人の恐怖や恐れの対象

それが枯渇していくと妖は飢餓感に苦しみ自我を保てなくなり暴走する

怪奇現象が起きる場所で人が行方不明になったり死亡したりするのは単なる事故の場合もあるが暴走した妖に襲われてる事が多い



「そうならないよう対処するのが妖課。暴走状態なら尚更だし、そうでない時もまずは妖の状況を確認する必要がある。現代に生きる妖は大抵何百年と生きてる。神格化されてるものも入れば花子のようにはっきりと名をつけられ社会に認知されてるものがほとんどだ。自我も芽生え個性も生まれる。対話ができれば対応も一辺倒ではなくなる」


「対話…」


「そう、こちらに興味を持たせ、荒ぶる心を鎮める、禹歩(うほ)。元は陰陽道、安倍晴明が用いていた土地の邪気を払い鎮め場を浄化する呪術。中国では踏斗(とうと)とも呼ばれる」



基本は三歩九跡法と呼ばれる北斗七星を描く様な星歩き


九字切りとは別に妖から姿を見えなくする為の結界を貼ることも可能



「それとは別に妖を鎮めるための舞踏、星舞踏(ほしぶとう)。ベースを守れば後は自由にしていい。ようは舞ってその美しさをもって妖に興味を持ってもらうものだ」


「はじめて見た時すっごい綺麗だなって思わず見惚れちゃった。そうしたら人間が話しかけてくるからびっくりしちゃって。でもおかげで今心穏やかに子供たちを見守れて感謝してるの」


「…え、でも花子さんてトイレの怖い妖でそのイメージは今も変わってない、ですよね?」


「そうね、毎年毎年必ず誰かがここに来て恐れ知らずに声をかけてくるわ。噂が本当ならトイレに引きづりこんじゃうのに!ま、そんなことしないけどね。またやってるわーって見てるだけよ」


「禹歩で繋がった妖は正気を取り戻し大体は自我がはっきりする。その時に人との共生を提案して了承したものには特例の社会的地位を与えるんだ」


「特例の社会的地位…!?」



花子は胸元に着けていたものを外してそれを一結に見せてやる。それは百合の花を型どったネックレスだった




「これは白百合の"永章"簡単に言えば妖の戸籍証明書。これを身につけてる妖は人に害なしと認め、人の法の下に生きることができるというものだ。もちろん害なしと言うのは妖側も人に危害を加えないという強い意志があってこそだ」


「でも曽良さん…飢餓感に襲われたら妖は暴走するんじゃ…それを凌ぐには人を恐怖に陥れなきゃいけなくて…それって」


「お前今朝俺が何食ってたか覚えてるか?」


「え……あ、朝ご飯」


「ふふっ私達妖も普通の食事取れるんだよ。しかもそっちの方が美味しいの!もっと早く気づけばよかったよねー40年くらい損してる」



花子はパンケーキが好きだという

たまに、原宿に出向いてパンケーキを食べに並んだりもすると言うから驚きだ。ふかひれは基本的に魚が好きで差魚の焼き加減にはうるさいとか




「花子達のように場所が特定された妖だとその場から動けず飢えることもあるから定期的にその地に赴いて禹歩で場を清め、問題ないか確認を行ったりしてる。噂や怪談がなくなるわけではないからその場は陰気が溜まりやすいしな」


「毎年楽しみにしてるの!曽良の星舞踏は優雅で流れる川のようで大好き!みたいみたい!」



花子に拍手でせがまれ曽良はポケットから手袋を取り出し手につける。普通のとは違い淡い色の長細い布が一連ずつつけられていた


背筋を伸ばし、その場で一礼する


ただそれだけでただのトイレの床が洗練された大理石のように見えて凛と清められた様な気がした




右足を一歩流れるように前に出し


左足を引きつけて揃える


また右足を出して軸を変え


今度は左足をより一歩前に出して右足を揃える


手を大きく回すと長い細い布は流線を描いて舞い、


曽良はくるくるとその場を周り一定のリズムのまま舞い続ける



その姿に一結もただただ魅入ってしまった











__他の小中学校にも花子はいるけど、みんなそれぞれ個性のある子達だから機会があったら会ってみてね






「……花子さん、か」




寮に戻った一結は今日の出来事を思い返していた。一結も聞いたことのある怪談話の登場人物

それが実在した事にも驚きだし、各学校にいるということに輪をかけて驚いた


そして





「……妖は共生できる…」




好んで観たりはしないが映画や漫画など空想的なものに登場する妖、妖怪の類は多くが人を脅かし退治する対象だ。それはこの現代でも同じだろうと漠然と思っていただけに、寝耳に水のような事実だし





「……」




一結は正直嬉しい事だと思えて思わず口元がにやけてしまう




それは、まだ見ぬ妖達の出会いに興味がわいているというのもあるし、なんて平和な世界なんだと感じた




「曽良さん、綺麗だったな…」



恋愛的な意味では決してなく芸術的観点から見て、禹歩をしていた姿が美しかった。人種(と言っていいのかは謎)の違う相手を魅了させる舞

そこから始まる人と妖の関わり


その神秘的でドラマチックな展開に一結は心躍らせた



自分もそうして妖達と繋がってみたい、と









「……何、一人でニヤニヤしてるの?」


「ひゃあ!?」



突如かけられた声に一結は反射的に情けない声を上げて飛び起きた。心臓はバクバクと鳴り響いていて声の聞こえた方へ目を向ければ口元を抑えどこか引き気味の




「ちち千秋さん!?」


「……お昼できたから呼びに来たんだけど、すっごくごめんね、控えめに言っても気持ち悪かったからさ」


「いや、あの…」


「まぁ大人とはいえまだ20そこらだし僕らから見ればまだまだ子ども。そういう多感な時期なんだろうなって思うけど人間社会の常識に当てはめるとすっごい不審者だから気をつけた方がいいよ。僕は気にしないけど」


「すいませんでしたぁ…!」



優しく穏やかな声のトーンなのに、口から出る言葉はどこか棘があって特に疚しいことをしていたわけではないのだが、一結は羞恥といたたまれなさでその場で深く深く土下座した。



「(あはは、おもしろー)まぁ分かってくれたならいいよ、僕も気にしないことにするから。おいで、お昼にしよう」


「……はい」


「ちなみにさ」


土下座から立ち上がり少し先に行く千秋の後に続いて部屋を出た一結は、階段を数段降りた千秋に再び声をかけられて振り返る




「何がそんなに嬉しかったの?締まらない顔して」


「(なんか、表現に刺があるような…?)いや、今日トイレの花子さんに曽良さん達と会いに行ったんですけど」


「あぁ、毎年のあれね」


「舞がすごい綺麗だなって思って、それで想像してたより楽しそうだなって」


「……ふーん」


「妖と共生できる、っていうか今現在してるっていうのがすごくいいなって思ってここ来てよかったなって」


「……めでたい頭だね」


「え?」




一瞬場の空気が冷たくなったような気がした


ピリリと頬に痛みが走ったような気がして一結は頬に手を添えたけれどそこには何もなかった。気づけば千秋は再び背を向けていて階下に消えていく姿を見送ってから一結も歩き始めた。



千秋が何か話していたような気がするが聞き取れなかったし何故か突き放されたような感じがしたのだが、一結にはそうなる理由が分からないでいた




リビングにつけば既に曽良以外が席についており紫江に「お疲れ様」と声をかけられて慌てて座る。綾戸と駿ケ崎は食べ終わってるようで食後のコーヒーを飲んでいた



「俵くん、一緒にお昼食べよ」


「あ、はい!」


「もう慣れた?」


「あ、……」



柔らかい笑みを向けてくれるその後ろに千秋が食器を2人分持ってきてくれる。トレーに乗せられていたのはカレーとサラダとわかめスープ

目も合わない千秋は運び終えると静かにまた元の場所へ戻っていった


それを目で追う駿ケ崎




「まだふつかみっかだから難しいよね。違和感もあるだろうし。でも、怖がらないであげてね。私は妖はそんなに悪いものではないと思ってるんだ」


「……」



いただきますと手を合わせてから食べ始める紫江に習って一結も手を合わせサラダに手をつける。ごまドレッシングの香ばしい香りが鼻を抜け野菜の甘みが口に広がる





「もちろん危険な事もあるけどね。妖って善悪がないらしいんだ」


「?」


まるで内緒話をするように、でも少し楽しげに紫江は話を続ける



「魔は悪魔とか悪霊とか神仏と反対の世界のものらしいんだけど、妖は良いほうにも悪い方にも傾くんだって。それって人と似てるよね」



辛いのが苦手なのかカレーを一口食べて水を飲む。ふぅと一息つくと紫江はにこりと笑みを一結に向けた



「隣人くらいに思っておくと変に気負わないかもね。名のある有名な妖ならともかくこれから君が妖と出会ったら隣の席にたまたまなった人に話しかけるようにしてみてね。君の心に恐怖がなければ妖は悪い方にはいかないから」



それはどこか心が軽くなる優しい言葉だった



「……はいっ!」


「「……」」





だからこの時はまだ、優しい紫江のその言葉に安心しきっていたのだ。

一結自身も似た思いをこの数日で思い描いていたから、一致して間違いではないと思えてしまったから






「……俵くん、今日の午後は通常勤務を僕と一緒にやろうか。事務処理とかを教えるから」


「はい!よろしくお願いします!綾戸巡査部長」


「夜は紫江さんの計らいで歓迎会をするからね」


「えぇ!?」


「早速だけどこの調書ね。最近報告されてるものなんだけど…」


唐突に見せられた書類に一気に仕事モードになった綾戸に着いていこうと慌てて目を通す。"被害報告書"と書かれたそこには



「夜道で誰かに舐められた…?」


「みたいな感覚があったってことだと思うんだ。被害のある人達は皆お酒を飲んだ後の帰宅途中での出来事だから信ぴょう性に欠けてね。無碍にも出来ないから調査するんだよ」


「夜間パトロールって事ですか?」


「それも必要だね。でも僕らは妖課だからそれっぽい妖がいないかを調べることも必要。だから今から妖座学です」




不安だった部署異動

優しく丁寧な上司と人と妖の関係性に安心感を抱ききってしまっていた


そんな簡単なものでは無い事は、すぐに分かっていたはずなのに…

































____...



「ウェルカムカーム!!いぇーいおつかれぇ!!」


「……(だ、だれー?)」


一日の就業を終え、寮で着替えをすませ先輩方に案内されるままに夜の四谷の町を歩くこと数分(署内はふかひれがお留守番してくれるらしい)

眩いネオン看板に掲げられた"ニクバル トワ"の名前に肉が食えるのかと舌鼓を売ったのが数分前


中に入るとクラッカーを向けられあれよあれよという間に席に案内され室内は一瞬にして真っ暗に

ドラムロールと照明が宙を回り始めたかと思えば再びのクラッカー音と共に最初の第一声が飛び交い、いつの間に用意されていたのか机上には出来たてと分かる料理の山




「いやぁ!!いつも贔屓にしてもろてありがとうさん!!ニクバルトワへようこそ!!」


「今日は新人の歓迎会言う事で!どなたですぅ?」


「ちょおうぇる、なんでお前も訛っとんねん!」


「また吊られたわ!!すまん!」


「で!新人誰なん!手ェあげて!!」



やたらテンションの高い2人組、求められてるのは自分なんだろう事は理解できるが正直名乗り出たくない


だれだれだれー!といつまでも言い続けそうな勢いに、駿ケ崎と千秋は早くしろと言う視線(千秋は終始笑顔)を向けてきて紫江はこの場を楽しんでる無害そうな笑みで助けは期待できず綾戸は頑張れと言わんばかりにガッツポーズを向けてくる始末

頼みの曽良…とそちらに目を向ければ何故か人数分のビールを注いで運んでいる状況にため息と共に渋々手を挙げた




「…はい、俺です」




ぐりんと視線をこちらに向けてくるせやとうぇる(むしろこの少人数でなんで気づかないんだと思う)

数秒上から下まで見られたかと思うと



「「なんや男かぁぁぁぁぁぁ」」



はぁぁと盛大なため息を付かれて流石の一結も少しムカッときた。千秋と駿ケ崎は予想通りだったのか笑い転げておりそれもまた少し苛立った



「ちょっとそれって失礼じゃ…」


「でもようこそぉ四谷三丁目交番に!!俺達関わることも多くなるだろうからよろしくね!あ、何くん??」


「え、あ、俵一結です」


「俵くんな!よっし覚えた。じゃーコレつけてはいんでこれもって」


「曽良さんすんません、ビールやってもろて」


「問題ない。さぁ料理も冷めてしまうし乾杯しよう」


「ありがとうございます!では皆さんグラスもって!!めでたいこの日に当店に足を運んでくださりありがとうございます!!」


「今日は飲んで食べて大いに盛り上がってください!俺らの料理でほっぺた落としてかんでくださいね!じゃあカンパーイ!!!」


「「「「カンパーイ!」」」」


「か、かんぱーい」




イェェェイと楽しげな絶叫をあげて一緒にグラスを傾けるせやとうぇるに、今はどういう状況だと混乱しつつも一結は同じようにグラスを傾けて仕事終わりの一杯を堪能した











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