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食堂の聖女  作者: あきみらい
第1章
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食堂のおばちゃん4



 やや追い立てるようにして、お昼を食べ終わった三人組と雑貨屋を送り出せば、私も、と野菜を届けに来ていたリンも去っていき、食堂は静かになった。


「それじゃぁ、夜の仕込みをするかねぇ」


 野菜を厨房に運び入れつつ献立を考える。

 食堂と言っても大きな街の食堂ではなく、こじんまりした村の食堂。

利用者は長年の付き合いで家族にも似た村人たちと、村に来ている冒険者や商人、旅人など外部者が日に多くても十人程度。ここ数日は、さっきの三人組しか泊り客はいない。ちなみに宿は隣にあり別の村人が経営している。

出すのは街のレストランのような小洒落た料理ではなく、日々の糧になるような家庭料理。働き盛りが多いからなるべく肉や魚も出しているが、基本は野菜が中心だ。

夕食時はその場のオーダーで酒の肴に一品料理を追加で作ることもあるが、基本は日替わり定食が二種類ぐらい。村人たちにはメニューを選んでもらうというより、来たらその人に合った方を出す感じだ。


「生トマトでサラダも捨てがたいが、まずはソースかね」


 鍋に水をはり火にかける。沸騰させている間にトマトをもってきてヘタを取り、切り込みを入れた。

湯が沸くまで少しかかりそうなのをみれば、ついでに貯蔵庫から玉ねぎをもってきていくつかみじん切りにし。


「……っと」


 ぐらぐらと煮たった鍋に先ほどのトマトを入れる。

皮が切り込みのところからすーっと割れ目が入るのを確認して、即座にあげた。

水を用意しておいたボウルに湯からあげたばかりのトマトを入れて冷やし、湯剥きする。するんと脱がすように皮がむけるのがちょっと楽しい。

 トマトを茹でた鍋をどけた後、別の大きな鍋を火にかけ油をひき、みじん切りした玉ねぎをそこで炒め始める。

しんなりしたところにざく切りしたトマトと潰したにんにくを入れ、また炒めながらトマトをヘラで形がなくなるように潰し、塩コショウにハーブを少々。

美味しくなーれ、みんなの力になーれなんて願いながらヘラで混ぜる。

ふつふつとすれば新鮮なトマトソースの出来上がり。


「ん。次!」


 次の大鍋では、豚の皮つき肉を厚めに切った物をしっかりと炒める。

脂身から出た油がぱちぱちと爆ぜる。その小さな音と共に、肉の焼ける美味しそうな匂いが厨房に漂い始めた。

なんとなくそのまま焼けた肉を食べたくなるような香ばしい香りだ。

肉をひっくり返したりしながら、その横でトウモロコシを剥き、しっかり洗ってから三等分。

更に縦に二つに割る作業を黙々と十本分ほど。トウモロコシの芯は硬いから結構手が疲れる作業だ。

豚肉がしっかり焼けたのを確認し、軽く肉から出た油を拭きとってから水と酒を多めに入れる。

熱くなっている鍋に水を入れたことで、ぶわっと立ち上がった湯気が落ち着くのを待ってトウモロコシも入れる。

このまま二十分ほどアクをとりながらコトコト煮て、塩で味を調えれば美味しいスープの出来上がりだ。


 その後も厨房にはテンポよく包丁で何か刻む音や炒め物をする音が響き続け、二時間ほどの間に今夜の夕食の仕込みも終わった。

ついでにヤマモモはジャムにしたし、枇杷はしっかり下処理して酒に漬け込んだ。

どちらも後日のお楽しみだ。

 先ほど届けると約束したリンの家の分も仕上げ、バスケットにスープの小鍋と三人分のナスのトマトソースグラタンなどが準備済み。

あの家は女性三人が自宅で食べるからね。

長男のジョイスだけは食堂で食べていることが多い。

ジョイスは次期村長候補なので、食事しながらここで村の皆と話していることが多いのだ。

もし今日は自宅で食べるというなら、その時にこっちに取りに来るだろうから、バスケットには三人分だけで十分。


「……こんな感じかね」


 しっかり採れたての野菜や、村で育った家畜たちの肉を使った料理の鍋が並ぶ様子に、私は満足して、うむ、と一つ頷いた。


リアル事情で3日ほど開きましたが、おばちゃん4はお料理回です(笑)

豚とトウモロコシのスープは一昨日の我が家の夕飯でした。

すごく簡単なレシピなのにトウモロコシの甘みと豚肉の油でとても美味しく仕上がるので夏のおススメ料理です。


毎日更新は厳しそうなので、週3~4ペースでやっていきたいと思います。

もし良ければ今後も読んで頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
とても美味しそうなのじゃ!料理描写が上手でお腹が空いてくるのじゃ!読んでいる今が深夜なので朝起きたら温かいスープ飲みたくなったわい!素敵な物語じゃ!
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