夏の嵐3
そんなわけで、私は今日も料理三昧だ。
嵐対策の作業を始める前に、村の人たちが鍋やバスケットを置いて行った。配布分の料理を受け取るためだ。おかげで、食堂の大テーブルには地図と作業リストが広げられ、横のテーブルには各世帯用の鍋がたくさん並んでいるという、あまり見ない状態になっている。
当然普段に比べて料理に使う食材も量が必要になる。なので、農作業組にお願いして、いくつかの野菜を先に収穫してきてもらった。
カウンターにはそれらの野菜と、貯蔵庫から出してきたソーセージがどさっと並んでいた。
食堂の前の広場では、まだお手伝いが難しい年ごろの子どもたちが遊んでいる。
子守を請け負ったのはノーラで、まだ三歳になったばかりの双子の娘たちと、今度六歳になる息子がいる。
息子の方は、リンに手を引かれて農作業組の手伝いに混ざりについていった。
あの小さな手で一生懸命に収穫を手伝ったらしく、さっき収穫物を届けに来て、誇らしげにトマトを手渡してくれた。
こんな時だが、小さい子のお手伝いは、やっぱり心がほっこりする。
きっと広場の方でも、母親にトマトの自慢をしたりしたのだろう。
延々とジャガイモの皮むきをしていた私は、ふぅと息を吐いた。
なにせ、いつもの倍以上やっているからね。
量が多いのが分かっていたので座ってやってはいたけど、こうも同じ作業をやり続けると肩が凝って良くない。
手に持っていたナイフを一度置いてから、疲れた両手の肘から先をぶるぶると振るわせた。
以前は毎日村人全員分作っていたのになぁ、と、考えて我に返る。
あの頃に比べたら、今の方がずっとずっと人数が多い。
「同じなわけないわね」
作る量も増えているし、私自身も年をとっている。
どちらもありがたいことではあるけれども。
「明日以降は対策を考えないとねぇ……」
今日は急だったから仕方ないとして、明日以降については作るメニューを考えないと。
多分、ダグラスが今日の午後か明日の朝には王都に買い出しに行くはずだ。
その時にパン等を多めに買ってきてもらうのはありかもしれない。
そういえば、最近は芋などの皮むきに便利なピーラーなんて道具が出来た、なんて話も聞いた。
私はナイフで野菜を剥くのに慣れてはいるけど、そういう便利な道具を手に入れてみるのも良いかもね。
私は使わなかったとしても、誰かに手伝ってもらう時に役立つかもしれない。
手をぶらぶらさせた後、念入りに肩回しもして、仕上げに首も横に倒したり回したりしておく。
認めたくはないが四十過ぎた辺りから疲れるのも早くなったし、回復するのも遅くなった。
少し頑張り過ぎたなと思うと、翌日にはきっちり不調が出る。
年相応ではあるんだろうけれど、これがなかなかつらい時も多い。
そう考えると、毎日畑仕事に勤しみ、女手でずっと家族を守っていたミリムさんは、本当に尊敬に値する。
確か、そろそろ八十になるはずだ。
少々特別扱いになってしまうけれど、誕生日には皆で祝ってもいいかもなぁ。
きっとリドルフィに提案したら通るに違いない。
「よし、次、次!」
立ち上がって一度腰をググっと反らし、おまけで手を上に伸ばして全身で伸びをした後、私はまた料理に戻る。
本日はジャガイモとソーセージとチーズのオーブン焼きに、夏野菜たっぷりのラタトゥイユだ。
芋とソーセージを食べやすいサイズに切り、オーブンで焼いている間にまた大量に野菜を刻む作業が待っている。
これは寝る前にストレッチでもしないと、明日きついかもしれないなぁと、私はちょっと覚悟するのだった。
およそ50人分の料理……と考えて作者の私がメニューに悩みました。(汗)
現代日本だったらある調理器具もこの世界にはないからほとんど手作業です。
おばちゃんは器用なのでフードプロセッサーが無くても魔法で混ぜるぐらいやりそうですが、給食センターにあるような野菜剥きマシーンなんて当然ないし、便利な加工食品もろくにない世界。
芋剥きや大量に野菜を刻むのも当然手作業!
絶対、終わった後には手が、手がーー!ってなりそうです。
おばちゃんに早く弟子をとらせてあげたいなぁと思いつつ、きっと話の展開上まだまだ先。
がんばれ、おばちゃん!




