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祭りの準備17

ジョイス中心の第三者視点です。


 村から出て橋を渡った先。

モーゲンの次期村長とされている青年は、騎士や司祭、魔導士、冒険者たちを連れて案内をしていた。

案内されている側も青年と同じような年頃……戦乱期やその前後の生まれの、もっとも人数の少ない世代が何人か混ざっている。

そのおかげか、こんな集まりなのに全体的に若々しく表情は明るい。今回の作戦ではかなりの数の魔物との戦闘も想定されているのに会話には雑談等も混ざっている。戦乱期を越えた、いわゆる大人世代たちだけではない、軽やかさのようなものがある。

今も移動しながら緩い情報交換になっていた。


「それにしても、あの光の雨、王都からも見えちゃってたのかー」

「気づいた人は多くなかったですけどね。なんか起きてる! って騎士団と魔導宮ではちょっとした騒ぎになりましたよ」


 モーゲンの次期村長の言葉に頷いたのは騎士団の参謀候補だ。参謀は王都で今も作戦会議中なので、その補佐官であり後継者として育てられている彼がこちらに来たらしい。


「あぁ、あの時はね~。新しい魔法を誰かが編み出したのかって何人も見に行こうとしていたよ」

「え、そんなノリ?! 騎士団内は見張り台から報告が来た時には緊急出動かと緊張が走ったのに」


 王宮魔導士団から派遣されてきた魔導士はのんびり笑う。その言葉に参謀候補が嘘だろ、と驚く。


「うちはマイペースな人ばかりだからね~。今回のも普段使えない魔法使えるかも? ぐらいに思ってるやつがいっぱいいるよ。おかげで副長がまた胃薬飲んでいました」

「あまりに胃痛が酷そうだったら司祭に言ってくださいって伝えて下さい」


 それは大変そうだ、と、司祭が気遣う発言をする。


「胃痛なら胃へのダメージなんで治癒魔法で少しは緩和しますから」

「あぁ、あれは病気扱いじゃないのか。伝えときます」


 なるほど、それはいいことを聞いた、と魔導士が頷いた。


「そういえば神殿や冒険者ギルドの方では騒ぎにならなかったんですか?」

「んー、うちは、見張りとかはしてないから、情報が入ってきたのってジークハルト先輩が詳細も含めて教えてくれた時だったので」

「あぁ、なるほど。ジークさんにも随分お世話になったなぁ」


 参謀候補の言葉に司祭が小さく肩を竦めてみせる。それを聞いた次期村長が当時モーゲンに来ていた司祭の一人を思い出した。


「こっちも偶然見た人はいなかったみたいだ。多分今も知らないやつの方が多いかも。俺が色々知っているのは今回の件の付随情報ってことで教えて貰えただけだったし」

「冒険者は民間扱いにされていたってことか。……確かにあれは見張りでもいなきゃ見なかっただろうしなぁ」


 立場によって随分違ったんだな等と言いつつ移動していた面々は、目印を見つけて足を止める。


「第三ポイントの候補はここです」

「ん-、ここはまた随分と広いなぁ」


 村と湖を挟んで対岸近く。水辺の砂地が少しあり、その先は牧草地として使っている草原だ。


「ここは、俺らはきついかな。見通し良いから連携はしやすそうだけど、もう少し身を隠せたりする場所の方が冒険者連中は戦いやすいだろうし」


 さっきの森の辺りの方が戦いやすい、と、冒険者が言う。逆にあちらでは魔導士や騎士団が戦い辛そうだと言っていたので、役割分担するにはちょうど良いのかもしれない。


「多少派手なことになっても、ここなら大丈夫です?」

「大幅に地形を変えてしまうとか草原丸焼きにするとかじゃなければ」


 辺りを見渡していた魔導士が訊き次期村長が答えれば、そんな大魔法を使うのは数人だけです、と、魔導士が苦笑した。


「そうしたら、護衛役を数人借りて、うちがここかな。魔法乱射しても壊して困るものはあまりなさそうだ」


 もし派手にやらかすのが居たらそのバカに責任もって元に戻させます、と魔導士が言う。戻させるっていうのは、多分地面が抉れたり草原で火災が起きたら、元の地形に戻させたり鎮火させたりするってことだろう。次期村長はその様子を想像したのか微妙な顔で頷く。その肩を騎士団の参謀候補がぽんと叩いた。


「では、護衛は騎士団から数人出します。できたら守護盾の使える司祭が一人二人欲しいですね。ここだと身を隠せる場所がないですし」

「承知しました」


 司祭が手にしたメモにいくつか書きつけている。

魔導士はこれだけ広いとなんとかとなんとかが試せる、とか楽しそうに言っている。さっきは他の人のことのように言っていたが、きっと彼も魔法の試し打ち云々って感覚があるのだろう。指摘しても仕方ないと思ったのか、冒険者が次期村長に緩く首を横に振った。


「……しかし」


 参謀補佐が湖の方を向き、ゆっくりと視線を上に上げていく。

何を言うのだろうと視線が集まった。


「ここに神樹がそそり立つってことですよね……神話のように」

「……そうなりますね」


 司祭が神妙な顔で頷いた。


「サイズにもよりますが、神話と同じサイズだった場合、王都から見えますね……」

「……」

「割とかなり本気で、その辺の情報規制どうするかが悩ましいですね……」


 王都で混乱が起きた場合、その対応にあたるのは騎士団になる。参謀候補はうーんと難しい顔で湖の上辺りを見つめる。


「聖女が宣誓した時も、秘密裡にやったのにその聖光をみた人が神殿に殺到したらしいですからね……」

「そう考えるとやはり街道付近は騎士団で受け持つとして、こっちにどれぐらい人を割けるか……」

「神殿の方も同じくですね。出来るだけこちらに割きますが結構ギリギリですね。うちは人数少ないですし」

「……もう、いっそ、民間にも知らせてしまった方が良いんじゃ?」

「どうなんでしょうね……」


 冒険者の言葉にそれについては流石に自分たちには権限がない、と、参謀候補が首を横に振る。


「とりあえず予定の防衛地点は以上なので解散にしますか?」

「ですね。持ち帰って検討します」


 次期村長の言葉に、そうしましょうと全員が頷き、その場は解散となった。




王都の方で会議してるおじさん達がいれば、きっと現場を見に来てる若いのもいるだろうな、などと。


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