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小さな光

久しぶりに駆け出し魔法使いのクリス君視点です。


「さっきの動物たちの行進すごかったねぇ」

「ねっ! すごくたのしかった!」

「あしたもやるんだよー!」


 無邪気に笑うトゥーレとリチェの二人に、僕、クリスはそうなんだ、と頷く。

ダグラスさんに呼ばれてきてみれば、モーゲンの村はいつも以上に賑やかなことになっていた。

 バーンとアレフ、そして僕の三人にとって、ここの村は気が付いたら馴染みの場所になっていた。

冒険者デビューして初めてギルドで受けた依頼でここに来て以来、気に入って貰えたのか声をかけてもらえることが多い。今のところ冒険者らしい討伐の仕事よりも村の雑用とかお使いみたいなことばかりだけど、信頼はして貰えているんだと思う。


「あ、つぎのあったー!」

「リチェ、見つけてくれてありがとう。それじゃあ、トゥーレ、今度は一緒にやってみようか」

「はい!」

「トゥーレ、がんばれー!」


 今日の僕の仕事はというと、村外周沿いに配置された結界石巡りの付き添いだ。

実際には光属性持ちなら一人でも出来てしまう作業らしいのだけど、ちびっ子二人付きなので僕は念のためのフォロー要員。

なんでも今年貰ったばかりのトゥーレの祝福は光属性だったらしい。少しずつ覚えるために今回の作業についてくることになった。自分の役割があるのが嬉しいらしくてものすごく張り切っている。トゥーレにくっついてきた、まだ祝福前のリチェまでそのテンションなのでかなり賑やかだ。


「ルカ、新しいの要りそう?」

「ううん、ここは大丈夫みたい」


 結界石に魔力を込める役は司祭見習いのルカだ。さっきイーブンさんの馬車で王都から一緒にきた。ルカの先生のシエルさんは、今頃グレンダさんの診察をしているはず。カイルさんの時以降、グレンダさんは寝込んでいることが多いらしい。さっきお昼の時には食堂で会えたけれど、料理などはリンさんがやっていた。また元気になって厨房に立っている姿が見られたらいいなと思う。


「トゥーレ、こう手を組んでね」

「はい!」

「あい!」


 柵の根本近くに配置してある結界石の前にルカがしゃがみ、手を組んでみせる。トゥーレがそれを真似し、なぜかリチェまで一緒にやっている。


「そうしたら呪文を唱えるよ。しっかり正しく発音してね」


 うんうんと頷くちびっ子二人。ルカがゆっくり丁寧に発音するのを幼い声が追いかけた。

僕は光属性をもってないのでその様子を横でのんびり見守る。なんていうか、今回の件はかなりの大事のはずなのに、さっきから見ている村の様子はとても長閑で平和だ。確かこの結界石の補強作業だって明後日大量に出るだろうと言われている魔物対策のはずなのに、全然緊張感も悲壮感もない。

不思議な村だよなぁと思いながら見ていれば、ルカとトゥーレの手元が、ほわんと小さく光ってその光が結界石に吸い込まれて行った。


「できたー!」

「できた!」


 トゥーレが喜びの声を上げ、自分のことみたいにリチェもそんなトゥーレに抱きついて一緒に喜んでいる。とても無邪気だ。ルカがうんうんと頷いて、「よくできました」と穏やかに言っている。


「よーし、つぎのさがそー!」

「うん、どっちがさきにみつけるか、きょうそう!」


 ちびっ子二人が走って行ってしまった。一瞬追いかけた方がいいかとも思ったけれど、ちゃんと柵沿いに探しているから大丈夫そうだ。見える範囲なら平気だよね。


「元気だねぇ」

「だねぇ。クリス、見ててつまらなくない?」

「大丈夫。二人とも可愛いしさ」


 二人に遅れて立ち上がったルカが一度伸びをする。ルカは僕と同じ年らしい。中性的な顔立ちで僕より細いけど、性格は割としっかりしているみたいだ。馬車で見ていたらおっとりしているシエルさんをルカが面倒見てるような感じだった。


「ルカ、教えるの上手いね」

「そう? なら良かった。教える側は初めてだからちょっと緊張してる」

「二人ともめっちゃ楽しそうだし、いい感じだと思うよ」


 素直に感想を言えば、ルカがちょっと照れたように笑った。


「それにしても、ここの村、不思議な場所だね」

「うん。すごく長閑なのによくよく聞いてみたらすごい人が多いし、今日もこんなだし、あちこち意味わかんないところ多いよね……」

「うんうん。明後日ここ戦場になるって話なのに、チビたちにあんなだしさ」


 もうちょっとピリピリしているのを想像してきたんだけど、と、ルカが言う。僕は全面的に同意する。


「よかった、みんな当たり前にああだったから、自分の感覚がおかしいのかと思った」

「そんなことないよ。ここが変なんだと思う……」


 僕らは顔を見合わせて苦笑する。本来ならここで苦笑していること自体もおかしい気がするのにね。


「村全体の浄化もとんでもない強度だったし、正直この結界石もいるのかなーなんて思ったりもするけど……」

「んー、念のためってことなのかも。後、トゥーレに教えるのが一番の目的かも?」

「やっぱりそうだよねぇ」


 戦いになる云々言っている直前にやることじゃない気がするけど、多分そうなんだろう。

村に来る前に、ダグラスさんから下手をすると大量に死人が出るような規模の戦闘になるかもしれないなんて聞かされてきた。だから無理だと思ったら断っていいとも。バーンたちと相談して、それでも僕らは行こうって決めた。この村の皆さん色々良くして貰ったし、ここがなくなるのは嫌だったから。

なのに、来てみたらこの長閑さなんだから、ちょっと困惑もしてしまう。

ただ、なんだろう。僕らが思っている以上に大人たちは戦いの後のことも考えているのかもしれない。だからトゥーレにこの村を守る結界石のことを教えようなんて思ったのかも。


「あ、次見つけたっぽい。……ねぇ、これ、最後までこのペースでやるのかな」

「かも……?」


 だとしたら結構疲れそうだと首を横に振るルカに、うん、と僕も頷く。

はやくー! と手を振って飛び跳ねているちびっ子二人のところに僕とルカは走った。



きっとこの戦いが終わって暫くしたらルカはクリスたちのパーティに加わるのかもなーなんて思っています。男の子4人のパーティ、なんとなくそれでも一つ物語ができそうですよね。


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