食堂のおばちゃん18
結論から言うと、バーン提案のカエル沼で戦おう作戦は採用となった。
翌朝早い時間からメンバーと駆け出し三人組はカエルの沼地へと赴き、状況を確認。
リドルフィの話によると、沼地の村側は水際まで生えていた背の高い草がきれいに焼かれ、なかなか見晴らしのいい状態になっていたそうだ。
沼と言うより池になってた、とは、ジョイスの言葉。
あんまりにも思い切りのいい有様にイーブンは大笑いし、プチファイアでここまでやるの大変だったでしょう、と、クリスはシェリーに心配されたそうだ。
当然のことながら三人組はその場でもう一度リドルフィからゲンコツを落とされ、戻ってきた今、私の目の前でどれだけ危ないことをしたのか懇々とお説教を食らっている。
まぁ、それだけのことをしているからね。一歩間違えれば山火事になっていたし、本人たちがそれに巻き込まれて命を落としていた可能性だってある。
強面のリドルフィにガツンと雷を落とされ、三人揃って小さくなっている。
中堅冒険者四人はすぐ横のテーブルでその様子に苦笑いしているし、師の隣に座ったジョイスは訳知り顔で頷いていた。
ひよっこたちの自業自得だが……そろそろ、助け舟を出してやった方がいいかね。
真面目なクリスは勿論、いつも無駄に元気な前衛二人までしょげてしまってるじゃないか。
「そろそろ食事を出したいんだけど。朝一から動いてたからみんなお腹が減ってるんじゃないかい?」
「あ? あ、あぁ。すまん」
怒声こそは使わなかったがしっかり圧をかけて、なぜダメなのかを説明していたリドが、こちらの声にふっと声色を緩めた。
もしかしたら、こちらが声をかけるのを待っていたのかもしれない。
「……それに、あなたは人のこと言えないでしょ」
ぽそっとひよっこたちに聞こえない音量で言えば、嫌そうな顔が返ってきた。
この人のやってきたことを私は全部見てきたからね。今はお説教をする側になっているが昔のこの人は、三人に負けないぐらいの悪ガキだったし、色々とでたらめだった。
壮年マッチョの嫌そうな顔に気づかないふりをして、私は、しれっと音量を戻して続ける。
「ほら、この後の作業の確認をするんだろう? 作戦会議する大人はそっち。反省してる三人はこっちのテーブル。食事を並べるから手伝ってちょうだい」
「あ、今回は私手伝うわ!」
「あ、私も!」
女性二人が配膳の手伝いに名乗り出てくれたので、ありがたくお願いする。
今回のメニューは野菜をたっぷり入れたミネストローネとライ麦のパン、それに厚切りハムとスクランブルエッグ。
この後がっつり体を動かすことになる面々のために、朝にしてはしっかりめのメニューだ。
席の移動ついでに自分の分を受け取りに来た三人組の皿には、こっそりハムを一枚ずつ追加してやる。
十代後半。まだまだ育ち盛り。頑張って食べてしっかり育つといい。
こっそりやったのに気づいたらしいジョイスが、こちらを見てにやにやしている。
目で、なに、と問うたら笑ってごまかされた。
「……しかし、カエルの沼地で大型魔物と戦闘、ねぇ。村に近いけど大丈夫?」
村と沼地との間にはそれなりの高さの崖があるから直線では行けず、行くならぐるっと回り道しなくてはならない。回り道経由だと半刻ほどの距離だ。
しかし、もし大熊が崖をよじ登るなりして真直ぐ移動したなら、その三分の一程度の時間で村に到達できてしまう。
「村の連中は少し前から村の外に出ないよう連絡してあるから大丈夫だ。今いる商人たちも確か今日の昼に王都へ発つ。他は今ここにいるやつだけだろ。……村には魔物除けの結界もあるし、熊ならあの崖をそう簡単に登れはしないだろう。それにあの巨体が無理矢理登ったらおそらく崖の方が崩れる」
鹿系だったら簡単に跳ね登って行ったかもしれないがな、なんて言いながらリドルフィがもぐもぐとハムと卵をのせたパンを食べている。
たしかに、人間ぐらいの重さならともかく、相手は四メルテなんて大きさの熊だ。崖が崩れるという指摘は納得ができるものだった。流石に魔物化していても熊だし、鳥みたいに飛んだり鹿みたいに跳ねたりはしないだろう。多分。
「念のため、逃走しそうなルートにはいくつか仕掛けを入れるのもアリかも? 一瞬でも怯んでくれたら打てる手も増える」
「だな。だが、あのサイズは罠で捕捉は無理だろう」
「あ、私の手持ちに使えそうな技があるよ」
「ふむ。どんな?」
風系列の魔法が使えるリリスが名乗り出て、食べながらの作戦会議が始まる。
私はその声を聞きながらカウンターの中へと戻り、洗い物と昼の準備を始めたのだった。
どうにも合間が開いてしまってすみません。
まだ本調子に戻れず、体調を見ながらの投稿になっています。
のんびりペースになってしまいますが、この先もお付き合いいただけると嬉しいです。




