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こたえあわせ2

クリス君視点続行中です。

 避難している人たちの合間を抜けて行った先、教会の入り口付近に村の男性や冒険者が集まっていた。

先に来ていたバーンが見たものを説明し始めている。

と言っても、カイルさんが突然攻撃してきたこと、グレンダさんがそれを防いだこと、カイルさんが黒く染まっていたことぐらいだった。

でも、それだけでイーブンさんたちベテラン勢には状況が分かったみたいだった。


「よし、俺とシェリーは今すぐ援護に行こう。ラムザ、他は頼んだ」

「了解」


 シェリーさんはぎゅっと杖を握り、少し緊張した顔で頷く。

イーブンさんが前を行く形で、二人が教会の外へと飛び出していく。

みんな一瞬だけ目で見送っていたけど、すぐに意識をこっちに引き戻す。


「冒険者の方々、すみませんが村人の保護を手伝ってください。すでに何人か動いているのでその人たちの回収もお願いします」

「おうよ」

「新婚夫婦叩き起こしてこなきゃだな!」

「ジョイスに恨まれそうだ」

「違いない!」


 こんな時なのに何人か笑っている。内容が内容なだけに頼もしいと思って良いのかちょっと困るけども。

この場を仕切っている村の門番のラムザさんは、僕らが夏にカエル退治の依頼を受けて滞在した時に随分お世話になった人だ。彼が冒険者たちを割り振っていく。冒険者たちは行先を聞くとすぐに動き出す。

ラムザさんは最後に僕ら三人を見て言った。


「君たちはここで待機だ」

「……俺らもやれます! 何か手伝います!」


 バーンが食い気味に言えば、彼は優しい顔で首を横に振った。

ラムザさんが何かを言いかけた、その時。

 ぞわ、と何か嫌な感じがして僕は顔を上げる。

バーンたちは分からなかったみたいだけど、司祭様は僕と同じように広場の方を向いていた。

司祭様は一瞬後には動き、教会の入り口真ん中に仁王立ちみたいに立てば、戦棍を構えて呪文を唱え出す。

その直後。

彼の向こう、グレンダさんたちがいる辺りで何かがきらきらと光っているのが見えた。

半拍遅れて、目の前の司祭様の唱えた魔法が発動する。教会の扉の前に透明な壁が展開された。

さらにほんの一瞬だけ遅れて、風のような何かが壁に阻まれる。

目を細め、その様子を見守っていたラムザさんは、僕らに向き直った。


「いいか、君らのやるべきことはよく見ることだよ。……ライナス、ここお願いします」

「任されました。お気を付けて!」

「そちらも」


 自分と組にした冒険者たちを連れて、ラムザさんが教会を出ていく。小走りの足取りは少しだけ崩れたリズムを刻む。昔、大きな怪我をしたのだと前に聞いた。

その様子をライナスと呼ばれた人が静かに見送っていた。

司祭様はさっきの守護盾を展開したまま向こうの様子を見ているようだった。

やがて、ライナスさんが僕らの方を見る。


「さて、君とそっちの君は少し手伝ってくれるかい?」

「あ、はいっ!」

「このままだとジークが動けないから、この周りに結界石を置こう」

「分かりました」

「うっす」

「バーン君は剣を持っているね、念のためジークの護衛を頼んだ。彼は今動けないから」

「了解!」


 ライナスさんの言葉で、初めて僕はバーンが剣を持っていることに気が付いた。多分、冒険者の誰かから予備のものを借りたのだろう。

ライナスさんは教会の入り口近くの棚から小袋を出してきて、「じゃぁ行こう」と僕たちの先を、杖を突いて歩き出す。その足取りはさっきのラムザさんよりも更に左右でズレがあるもので……。


「……私は、この通り足がダメでね、結界石を置くのを頼みたいんだ」


 僕やアレフがその足取りを気にしているのに気付いたようで、ライナスさんが振り返り、苦笑する。

ただ、彼は冒険者たちに混ざって話をしていた。そこから導き出せるのは、つい最近まできっとライナスさんも戦う人だったのだろうこと。

びっこを引いて歩きながら、周りを警戒している表情はベテランの冒険者たちによく似ていた。


「……もし、まずいのが出てきたら私に遠慮なく逃げるんだよ」

「え、でも……」

「さっきラムザも言ってただろう。……君たちがやらなきゃいけないのはしっかり見ておくこと、そして見たことを忘れず後に残すことだからね。若い人は、死んではいけない」

「あ……」

「……っ」


 さっき門番さんに言われた言葉の補完だ。

ごく当たり前のように使われた死という言葉に動揺する。横を見たらアレフも苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 一つ目はここだ、とライナスさんが教会の壁の横で立ち止まる。

小袋を渡された僕は中から小さな結界石を一つ取りだしてアレフに渡す。アレフはそれを屈んで指差された地面に少しめり込ませるようにして置いた。


「そんな顔をしなくていいよ。私も先輩たちに言われてきたことを真似てみたくなっただけだから」


 よっぽど僕らが不安げな顔をしていたのだろう。ライナスさんが苦笑しながら言う。

さぁ、次の場所に行こう、と促されて、また歩き出す。

警戒はしているけれど、別に今ここが魔物とかがいるわけじゃない。夏に僕らがたくさん倒したカエルだっていない。

まだ明るい夕方の広場には他に誰もいなくて声もしない。その様子は、すごく変な感じがして不気味ではあるけれど、今はまだ、それだけ。

それでも、周りの大人の顔つきが変わったのを見たからか……うまく言葉にできないけれど、僕の中もぴりりと何かが張り詰めている。

多分、僕やアレフよりもバーンの方が特にそんな気配を漂わせていた。さっき顔を見てそんな感じがした。


 小さな結界石を、普通よりも短い間隔で置きながら三人で歩く。

ライナスさんは僕らに色々説明しながらも、ずっと周りを警戒している。

やがて教会の裏側の方まで来たら、中から見えた大きな窓のところに差し掛かって。

こちらの姿に気が付いたリンさんが手を振ってくれた。僕とアレフも手を振り返していたのだけど……。

リンさんが、途中で僕らの後ろを見ているのに気が付いて、振り返る。


「何、これっ!!?」


 声を上げたのはアレフ。ライナスさんはびっくりした顔でそちらを見ている。

湖の水が、岸から少し先のところで細い竜巻みたいになって空へ巻き上げられている。


「……きっと、シェリーさんだ」


 なんでそんなことをしているのかは分からないけれど、彼女の魔法の気配を感じる。


「……そうなのか?」

「多分」

「何をしようとしてるのか分からないけど、早めに教会の中に戻った方が良さそうだね」


 よし、続きをさっさとやってしまおう、と促されて僕らは頷く。

ライナスさんがまた歩き出して、僕とアレフも続いた。



多分、あと2~3epはクリス君視点のまま進行します。


我ながら、あぁこの人はこのタイミングで出てくるのか、とか、なるほど、こういう事だったのか、と、書きながら感心してます。

降りてくるままに書いてただけなのに、ちゃんと伏線になってていろんなものが回収され始めてて作者のはずの私が多分一番びっくりしてます。

なんていうか、これでいいんでしょうかね(汗)

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