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食堂の聖女  作者: あきみらい
第1章
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食堂のおばちゃん13



 翌日、昼より少し前の頃合い。

村長リドルフィに連れられて追加の冒険者二人が村に到着した。

昨晩ジョイスが軽く教えてくれた、魔法使いのシェリーと、弓使いのイーブンだ。

今回の探索のメンバーは、先に来ていた二人とジョイスを合わせ、この六人らしい。


「イーブン、久し振りだね。元気だったようでなにより」


カイルより幾分上、私に比べると少し若いイーブンも古馴染みだ。

昔、この村に住んでいたこともあった中年男。

冒険者ギルドでも古株として今も現役冒険者を続けている男は、日に焼けた顔に満面の笑みを浮かべ、よぉ、と片手を上げて挨拶してくれた。前に会った時より、笑い皺が少し目立つようになった。


「また飯食いに来た。美味いの頼む」

「いつも通りのしか作れないよ」

「それがいいんだよ」


 男くさいイーブンとは相対的に、シェリーはしゃなりとした華奢な美女だった。

一人では馬に乗れないらしく、リドルフィの後ろに乗せられてきた。


「……シェリーと申します。よろしくお願いします」


 慣れない馬での移動で若干疲れたのか顔色が悪い。

リドルフィが女性を乗せているのにまた荒い乗り方をしてきたのだろう。

大丈夫かい、と声をかけてコップに冷たい水を汲んで差し出す。

その様子を見たリドルフィが主張する。


「……俺にも一杯くれ」

「はいはい」


 どうせコップじゃ足らないだろうと、ジョッキに氷水を注いで渡せば、彼はぐいと一気に飲み干した。

飲んだ水が口の端から若干零れてるのは……見なかったことにしよう。

ついでにイーブンにもリドルフィと同じものを渡しつつ、先に探索に行ってる三人について伝えることにする。


「ジョイスたちは朝から出ているよ。念のため痕跡が見つかった辺りではなく、湖より東の方を軽く見回りに行ってる。朝早くに出たからもうそろそろ戻ってくるはず」

「わかった。……イーブン、シェリー、暫く滞在してもらうことになるから、宿に荷物を置いてくるといい。話してた通り、昼を食ってから本格的に索敵を開始する」

「はいよ」

「承知しました」


 水を飲み終わり、それじゃ置いてくる、と、イーブンが早速動き出す。それに、ついていく形でシェリーも食堂を出ていく。

イーブンからしたら勝手知ったる我が家同然の村だ。宿への案内もやってくれるだろう。

私は、残った壮年マッチョのジョッキに水を注ぎ足して、吐く息と共に言う。


「おかえり。お疲れ様。……あっちは相変わらず?」

「おう、王都は今のところいつも通りだな。近隣で魔物は増えてるみたいだが、今のところ冒険者ギルドと騎士団でさばけてる程度だ」

「……で、ジョイスから聞いたのだけど、本気?」

「ん?」


 昨夜から地図を広げたままになっているテーブルの席に着き、二杯目の氷水を今度はゆっくりと美味そうに飲んでいる男に問いかける。


「……私、担いで連れていかれるって聞いたんだけど」

「あぁ」


 そのことか、と納得したリドルフィが、うむ、と躊躇いなく頷く。


「問題ない。お前一人ぐらい軽い軽い!」

「……そうじゃないでしょっ!」


 背負えるかどうかの心配はしてない、と、思わずツッコミを入れる羽目になった。

その様子にははっと楽しげに笑ってから……ふっと柔らかい表情になった男は、心配するな、と言った。


「大丈夫だ。腕のいいのを揃えてきてる。今回もお前はきっとここでお留守番だ」

「……腕は心配してないけど、さ」

「とっとと見つけてぶっ倒してくるから、酒用意して待っててくれ」


 本当に大丈夫だろうかとその表情を確かめるように見る。

すると、ぬっと大きな手が伸びてきて私の頭を撫でた。

わしわしと子供にするみたいに撫でる手を払って、私は顔を顰める。


「……なんだか、嫌な予感がするの。油断するんじゃないよ?」

「あぁ、分かってる」

「まずいって思ったら仕切り直してよ。山登りなんてしたくないけど、必要なら行くから」

「だから担いでってやるって。あぁ、それともお姫様抱っこの方が……うぶっ」


 弟子のジョイスそっくりにしょうもないことを言おうとした男の頬を、両側から、えいと引っ張った。


「二日酔いは?」

「いてて……容赦ねぇなぁ。大丈夫だ。でも、昼飯は軽めがいいな」

「了解」


 そのまま地図を眺め作戦を確認し始めた様子を少し見てから私は厨房へと戻った。




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― 新着の感想 ―
リドルフィと弟子のジョイスは思考が似てきておるようじゃな!おばちゃんお姫様抱っこをそんなにしたいのかのう?グレンダおばちゃんは照れておるのか呆れておるのか、頬引っ張りの刑にしてやっておるのじゃな!この…
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