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子どもたちのみるもの18


 早朝。まだ空が暗い内に、私の部屋にリチェがやってきた。

どうやらお祭りが楽しみで、早くに目が覚めてしまったらしい。

目覚まし時計を見たら、普段よりまだ半刻は早い。リチェがいないのにびっくりしたエマがちょっとだけ遅れてやってきて、まだもうちょっとだけ眠い私は二人を自分の布団の中に招いた。

大喜びで入ってくるリチェと遠慮しがちなエマ。

二人が使っている部屋の物よりも小さい普通サイズのベッドなので三人入ったらぎゅうぎゅうだ。あまりの狭さについ笑ってしまって、結局起きてしまった。

 二人を子供部屋に行かせて自分も着替えて。着替えて戻ってきた二人の髪をいつもとちょっと違う形に整えてやる。

リチェはいつもの三つ編みを輪っかにしてリボンを付けてやった。

エマは髪を編みこんでくるりと巻き、三つ編みをカチューシャのようにしながら後ろでまとめた。

どちらも照れながらも大喜びで、私はその様子に幸せな気分になった。

後は衣装だけど、こればかりはもうちょっと後までオアズケだ。昼間は家事やら何やらやらねばならないから、まだ着せてやれない。二人には見せてもいないので反応を楽しみにしつつもう少しだけ内緒だ。


「おっ。今日は一段と別嬪さんだな!」


 階段を降りていったら、すでにリドルフィが来ていた。

彼は食堂の鍵を持っているのでいつでも入ってこられる。真っ先に階段を駆け下りて行ったリチェを見つけて言えば、リチェはきゃらきゃら笑いながら壮年マッチョに抱きついた。


「リドのおっちゃん、おはよー!」

「おう、リチェ、今日も元気だな。おはよう」

「おはようございます」

「エマもおはよう」

「早いね。おはよう」

「グレンダ、おはよう」


 エマは若干照れつつ挨拶をし、リドルフィはリチェを抱き上げながら返事を返す。髪色や瞳の色も含めてどこも似てないのに、人懐っこいリチェのおかげかちゃんと家族に見えるのが不思議だ。

なお、リドルフィはエマにも来るか?と手を広げて見せたが、流石に断られていた。エマは十二歳。お年頃だからね。そんな壮年マッチョに抱きついたりしないよね。

ついでに私もどさくさに紛れて手招きされたが行くわけがない。夫婦でもないのに。

そんな残念そうな顔をされても困るんだけども。


「それでは、今日はチーズオムレツを作ります」

「はい、頼むね」


 厨房でエプロンをしながらエマが言った。

少し前から、私たちの朝の玉子料理はエマが作ってくれている。まだまだ焼き過ぎたり形が崩れたりしているが、こういうのは何度も練習するのが大事だからね。一生懸命に作ってくれているのが分かるからか、普段自分が作るものより美味しく感じられる。

真剣な顔でフライパンに向かい一人分ずつ作っているエマを横目で見ながら、私は昨夜のうちに仕込んで置いたスープを温める。リチェがフォークやスプーンを用意してテーブルに並べ、リドルフィはその様子をにこにこしながら見守っている。

その様子に、ふと子どもの頃の実家の様子が重なって、私は何度か瞬きした。


「グレンダ?」

「……ううん、なんでもない」


 先日リドルフィとあんな話をしたからかしらね。

懐かしい、もう見ることができない光景が見えた気がして、軽く頭を振ってからお皿を用意する。

ちょうど一人分焼き終わったエマに渡してあげれば、彼女はふるりと揺れる黄色い玉子をフライパンから上手にお皿に移した。


「上手だね。美味しそうだ」


 声をかけたら、エマは嬉しそうに笑った。


「二個目もがんばります!」


 そこで、そう返すこの子だから愛しいと感じるのかもしれない。

エマは、その後の三人分も綺麗にちょうどいい加減で玉子を焼き、リチェのオムレツにはトマトソースでお花を描いてあげていた。中々器用に描かれたお花は可愛くて、リチェは大喜びだった。

もしかしたら絵を描くのも好きなのかもしれないね。

日常の他愛もない出来事から、どんどん二人のことを知っていく。こうやって人は家族になっていくのかもしれない。



迷ったのですが今回は文字数少なめです。きりの良い所にしようとしたらこんなことに。すみません。(平伏)

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