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食堂の聖女  作者: あきみらい
第1章
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食堂のおばちゃん12



 私たちが言う魔物とは、本来あり得ない状態で存在しているモノたちのことだ。



 魔物には大きく分けて三種類ある。



 一つめは、獣や人など元々この世界に存在していた生物が何らかのきっかけで変質してしまったモノ。

いわゆる呪いや戦場跡に残る澱み、時折自然発生する魔素が溜まったところ。人々が忌み地と呼ぶような場所に運悪く入り込んでしまった獣などが、その力を受けて異形と化して狂暴化し人や他の生物を襲う。

ベースとなるのは生きた獣に限らず、死して強い念を残してしまった結果に変質したモノもこの分類に入る。獣がベースになった魔物は魔獣と呼んだりすることも多い。

また、非常にまれなケースだが獣ではなく人が魔物と化してしまうこともある。その場合は魔人と呼んだりもする。

ちなみに、魔族や人でも怪しげな術をつかう連中が生み出し使役するのもこのタイプの魔物だ。

冒険者たちが依頼を受けて狩る魔物のほとんどはこの類である。



 二つめは、何らかの負の力が凝って生まれ落ちたモノ。

先に説明した魔素溜まりでは、獣などが踏み入れなかった場合でも自然発生的に魔物が生じることがある。

獣などがベースになっている一つめに比べ自由な形態をとり、中には実体をもたないモノも時々いる。よく見るのは小さな蝶や蝙蝠に似た黒い影だ。これは比較的倒しやすいが数えきれないぐらい大量に群れていることが多い。私は、空中を飛ぶ魚のようなモノとかにも遭遇したことがある。

このタイプで大きなものは、既存の生物とは全く違う姿をとりやすいため、倒すのに手間取ることも少なくない。自由に伸び縮みする触手をもつモノとか、腕らしきものが何十もあるなんて異形の魔物も過去には出没したそうだ。

どんな攻撃をしてくるか分からないことも多く、討伐は大抵熟練者が数人から多い時には二十人程度のパーティを組んで行う。


 三つめは……正直、魔物と呼んで良いのか悩む。

異界との裂け目からこの世界へと入り込んだモノ。

歴史上もそう何度も現れたことがあるわけではないが、大きさ強さに関わらずこれが出てきた場合の被害や影響は大きく、酷い時には国が滅ぶレベルの話に発展する。

私も流石に遭遇したことはない。

おそらく現在生きている者で、遭遇したことがある者はほぼいないだろう。

いるとしたら歴史の生き証人であるエルフの長老とか、絶大な魔力により何千年も存在し続けているという魔族の王たちといった、長寿種のほんの一握りに限られるはずだ。



 余談になるが、先の戦いでこの国の人たちが相対することになった魔族は、魔物ではなく人に近い存在だ。

人間やエルフ、ドワーフや獣人といった、人と分類される種族たちに比べ、魔族はその名の通り魔力に秀でており純粋な力関係で立場の上下が決まる。

魔族には、婚姻という概念が存在せず、既存の魔族が気に入った獣や魔物などに力を与えることで新たな魔族が生まれる。魔族に気に入られた結果力を与えられ、人から魔族になった者も過去にはいたようだ。

寿命はその持っている力によって違い、中には何千年と生きているものもいるという。

 外部から力を与えられることにより生まれ落ちるところは魔族も魔物と同じだが、一つ決定的な違いがある。

魔物はベースとなったものがなんであれ意思の疎通はできないが、魔族とは会話することが出来る。状況次第では交渉も可能だし、友となった例もある。



 今回、うちの村の近くに出た魔物はどんなモノだろうか。


先に討伐した小型の魔物はイノシシが変化したものだった。

ジョイスの話によると、その魔物も少しばかり巨大化していたが、戦い慣れているリドルフィは一撃でしとめたらしい。

詳しく確認していないが、恐らく人より多少大きい程度の魔物だったのだろう。

このぐらいのサイズであれば他所から流れてきたりなどで今でも時々出くわすこともある。

戦乱期が終わったとはいえ魔物が絶滅したわけではないのだ。野良で徘徊している魔物は今でもそれなりにいる。

……だが、痕跡が残っていた魔物は四メルテ近いサイズではないかとの話だった。

その高さに痕跡を残せるとしたら、熊やヘラジカ、もしくは実際にはもう少し小さなサイズで木に登れる猿や飛べる鳥をベースに変容したモノ辺りだろうか。でなければ二つめの既存の生物とは全然違うようなモノ。

どちらにせよ厄介な相手であることには違いない。



 考えを巡らせて至った結論に、私はふうとため息をつく。思わず身に染み付いた仕草で祈りの印を切るのだった。


そろそろ真面目に舞台設定をちゃんと考えなきゃなぁと思い始めました。(←今更)

こうふわっとした感じには既にあったのですが、文字にして私自身が、あーなるほどと頷いているなんて事が起きています。

不思議ちゃん扱いされそうですが、構想を練って書き始めるタイプではなく、お話が降りてきてしまうタイプなのでこういうことになってしまうのですよね。


先に投稿したエピソードも、主に誤字修正や登場人物の口調の調整等で少しずつ訂正したり加筆したりしています。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
世界観が分かってきてドンドン面白くなっていくのじゃ!この魔物の発生は何かの予兆なのか、悪いことの起こり始めなのか、ドキドキするのじゃ!また『先の戦い』のような大変な事態になってしまうのじゃろうか?
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