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子どもたちのみるもの5


 翌日。

いつものように夜明けの少し前に朝食の準備をしていたら、リドルフィが欠伸をしながらやってきた。朝食は四人でとることになった。

元々この人も早起きの部類だけど、どうやら昨夜話していた朝稽古のために張り切って、いつもより早く起きてきたらしい。

朝稽古っていうと朝食前にやるイメージが強いが、うちは朝食も出している食堂な手前、どうしても自分たちの食事は開店より前の、かなり早い時間帯になってしまう。それよりも更に前に朝稽古なんて言ったら、夜明け前の真っ暗な時間になってしまうからね。なので、ごはんの方が先だ。

 どこまで分かっているのか、楽しみ過ぎて勢い余ったリチェがコップのジュースを丸ごとひっくり返すなんてこともあったけれど、エマもリチェも、ついでにリドルフィもしっかり朝食を食べて元気に食堂を出て行った。

広場でやるとのことだったので、私もやってきた村人たちに朝食を出しつつ窓から様子を見る。少し遅れてデュアンとジョイスも合流して、ジョギングを始めていた。

なぜかエマまで一緒に走っているし、走っているリドルフィの肩の上にはリチェが乗っている。皆、楽しそうだ。

時々ジョイスとデュアンの悲鳴が聞こえる気がするけれど……。多分、気のせいだろう。



 朝食の営業時間が終わる頃、エマが一人で帰ってきた。


「おかえり。疲れたんじゃないかい?」

「ただいま。ううん、全部一緒にやってたわけではないから」


 そこそこ楽しんできたっぽいことは表情から分かった。

今までそんな風に感じたことはなかったけれど、もしかしたらエマは運動も好きなのかもしれないね。そのうちもっと動きやすい服も用意してあげたら喜ぶだろうか。


「そういえば、リチェは?」

「まだリドさんに肩車されてます」

「あらまあ。そうしたら昼までリドに任せといて大丈夫だよ、きっと」

「いいんでしょうか……?」

「いい、いい。リドは子ども好きだからね。あれで世話焼きだからちゃんとみていてくれるよ」


 少し申し訳なさそうに言うエマに、笑う。

なにせリドルフィが世話焼きなことは、四十年も間近で見てきているからね。自信を持って太鼓判を押せる。

 エマは手早く浄化魔法を使って自分の衣服などを綺麗にし、彼女専用のエプロンを丁寧につけた。うちに来た日に私が作ってやったものだ。

気に入ってくれたようでとても大事に使ってくれている。

エプロンなんて汚れてなんぼな物なのにね。なんだか私の方が照れてしまう。

髪もしっかり三角巾につつんで、最後に手を洗ってから私に訊く。


「準備できました。何をしますか?」

「んー、そしたらお昼用に野菜を準備してもらおうかな。今日はサンドウィッチだから挟むレタスとトマトの準備をお願い」

「わかりました。それが終わったらパンに切り込みも入れておきますね」

「うん、ありがとう。使うものはそこね」

「はい」


慣れてきたのか、こちらが頼みたくなるようなことを先回りして、でも、けして勝手にやらずに確認を取ってからやってくれる。とてもありがたい。


「私、このパン好きです。毎日焼きたて食べられるようになるの、楽しみ」

「そうだね。秋ぐらいになるって話だよ」


 以前にリドルフィが言っていたパン職人が村に来る話も、着実に進んでいる。

半月ほど前から、広場沿いの空き地にパン屋の家屋を作っている。

モーゲンの村は元々計画的に作られた村なので、現在の村の規模に対して広場も大きいし、まだまだ店などを増やせる空き地はたくさんある。

パン職人に一度村に来て貰って、候補地の中からどれがいい?と選んでもらったところ、食堂からもすぐ近くの場所を選んでくれた。なんでも、食堂で焼き立てを出して欲しい、だって。とても嬉しい言葉だ。

 ちなみに、食堂で出さない分のパンはダグラスが売るらしい。

パンを作りながら販売までやるのは大変だからね。

その代わり、前にハンナたちと話していたパスタを乾燥させたものも、パン屋で作って王都に下ろせたらいいなんて話も出ている。夢が広がって、楽しくていいね。

今はまだパン焼き窯どころか家屋も出来てないので、パン職人は王都の元の店にいる。ダグラスは、王都に行くたびに、彼の作ったパンをたくさん持って帰ってきてくれる。

もちろん材料はモーゲンで収穫された小麦だ。しっかり大地に根を張って力強く育った村の小麦や他の食材。それで丁寧に作って焼き上げたパンだ。美味しいに決まっている。

村人たちはみんな、彼が移住してくる日を心待ちにしている。


「あぁ、そうだ。エマ」

「はい?」

「午後も良かったら遊びに行っておいで。星送りの日までは今日みたいな過ごし方で良いよ。デュアンもいるし、たまには羽を伸ばしておいで」

「え、えぇぇ……そしたらグレンダさん大変じゃないですか!」

「大丈夫。元は私が一人で回してた食堂だからね。エマは日頃からいっぱい頑張ってくれているから、ちょっとだけど休暇だよ。せっかくだから村の色んなところを見てきたらいい」


 ここで、やったーと喜ばずに、申し訳なさそうにする辺りがエマなのだと、一緒に暮らすようになって覚えた。

妹のリチェはそのままはしゃいでしまうけれど、エマは慎み深いというか遠慮がちというか。でも、顔を見るとちゃんと喜んでいるのも分かる。


「あぁ、でも、デュアンが森に行こうって言っても子どもだけで行ってはダメだよ? 必ず誰か大人にもついてってもらいなさいね」

「わかりました」


 村の近くの森は、昔から子どもたちの遊び場だ。デュアンなら絶対に行こうと言う。

でも、大熊の魔物が出たのも、まだ最近の話だからね。用心は大事だ。






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