5年一緒にいた仲間と雪山クエスト ~幼馴染みは努力をしなければ続かない~
戦士視点の雪山クエストです。
『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作品のため、短いです。雪山/5年/クエスト/の3つを使用しています。
幼馴染みというのは、努力をしなければ続かない。
俺は、雪山の中で痛感する。
とにかく寒くて痛い。
仲間と選んだ少し背伸びしたクエスト。雪山に住む雪嵐鷹のたまごを取ってくるもの。だが、考えが甘過ぎた。
洞窟で、俺一人だけが寒さで震えている。
歯が噛み合わない。
5年一緒にいた仲間は、俺を残して魔方陣で転移してしまった。
魔法使いは、小さな村で育った俺の幼馴染みだ。
いつもにこにこと笑って、俺の意見を受け入れてくれたあいつ。
―――なあ、置いていくくらい、俺のこと嫌いだったのか?
思い返せば……5年って長いのに、一度だってあいつとは喧嘩したことがない。それって、ずっと不満を我慢していたってことだろう。
項垂れる。
目の端に移る外の景色は猛吹雪。
俺、一人で死ぬのか……
ぐすん。
涙を堪えてのろのろと装備を点検する。
きっと助けに来てくれると、信じて。
信じたい。
でも……
う、う、う。
情けない呻き声を上げながら、背負っていた大きな鞄を下ろして蓋を開ける。
綺麗に区分けされている中味。
いつもあいつがブツブツ言いながら整えてくれていた。反省。
俺は食料が入っている袋をのろのろと解く。
口を紐でくくってあるのを外して開けば、光。
「へ?」
にゅうっと手が出てきて「ぎぃいえぇぇ~~!!」汚い悲鳴が上がる。
「開くの、遅いのよバカ!!」
目の前には幼馴染み。
「ほらっ、すぐに戻るよ!」
「う゛ぁあ~!!」
「痛い! 冷たい! ちょっ、鎧が頬にくっつくでしょっ!!」
「う゛ぇぇえ~!!」
「……もう、相変わらず泣き虫なんだから」
幼馴染みはテキパキと荷物と俺の手を取ると、魔方陣を展開する。
こいつの魔法は綺麗だ。
三日月のような輝きを纏う魔法。
見惚れている間に、拠点にしている宿屋の食堂に着いた。
「へ?」
驚いている間に仲間に囲まれる。全員泣いていてわかりにくいが、一度に転移できるのは三人が限度。俺の装備に魔方陣が仕込んであるし、丈夫だから後回しにされたという。なんだ……安堵した俺は……風邪を引いて寝込んだ。
幼馴染みが剥いた林檎を頬張りながら、ごめんなと呟いた。
「何がよ」
「……いろいろと、努力が足りなかったと思って」
俺の言葉を聞いて、幼馴染みは「ばーか」と笑った。
おしまい