共に勝利を
シエルが先制に魔法銃を放つ。砲弾は相手を直撃した。
「…やっぱり」
「まじかよあいつ」
煙が消えると傷ひとつ無く立っているアリーの姿が。
「はい残念でしたー、私に魔法は効かないよ。じゃあこっちから行くよ」
そういうと、魔法を行使し始めた。後ろからいくつかの玉が浮かんだ。
「ここで魔法なんて打ったらここら辺吹き飛ぶんじゃなかったのか?」
「屋上だし問題ないよ、事実さっきそっちも使ってたし」
確かにシエルも魔法銃を撃っていた。展開が急すぎて頭から抜けていた。
それにしても、アリーは最初から魔法を使うつもりだったのか。
「さーて、やりましょうかね」
「うわっ!?」
危な!問答無用でこちら側に飛ばしてくるし、回避してなかったら黒焦げになってるって。
「どんどんいくよー」
「……っ、く、近づけない」
撃っては魔法でまた撃つ。シエルは銃を使いながら辛うじて回避しているが、それで精一杯。敵に向かうまでの余裕は無い。
「シエル…」
シエルが敵の注目を集めてくれてるおかげで、俺への被害は無い。しかし、そのせいかシエルもなかなか攻めに攻めきれていない。
(くそっ、どれだけ俺は守られてるんだ。シエルもこのままだとやられるかもしれない。何か攻略の鍵となるものを探さなければ、)
なにがある?今までのことを思い出せ。あいつの弱点になりそうなもの。なんでもいい、何か……あれだ!魔法を使う奴に効くか分からないが、賭けてみるしかない!
「あっ!」
シエルの魔法銃が飛ばされた!?くっそ、このままじゃあ撃たれる!
「やっと弾けたよ、さようなら」
アリーはシエルに向けて全ての魔法を打ち込んだ。
「……っ、」
「…………鈴音?」
「はぁはぁ、まじで死んだかと思ったわ」
(あっぶなー!あとコンマ数秒遅れてたら今頃塵一つ残らなかったわ!)
シエルに魔法が当たる直前、俺はシエルを飛ばし魔法の軌道からずらしたのだった。
「見捨てても良かったのに」
「今ここで見捨てたら一生後悔すると思うんだよね」
とりあえず作戦を伝えないと
「そんなことより、俺に考えがある。一か八かだけどあいつを倒す為にはやるしかない」
俺は耳元で作戦を伝えた。
「本気?」
「ああ、本気だ。もし良いなら頼む」
「…わかった。それで行こう」
よし、なんとかシエルはその作戦を飲んでくれた。
「作戦会議は終わったかな?」
「ああ、ここから第2ラウンドといこうか」
「その作戦が通用するといいけど」
アリーは魔法を行使した。
「それじゃあ、作戦通りに」
「ええ」
俺とシエルは二手にわかれた。
「あはははは!作戦って逃げることだったの?」
まてまてーとシエルに打ち込むアリー。よし、予想どうりだ。俺は影から攻めていくことにしよう。
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「本気?」
シエルはその作戦を聞いた時、耳を疑った。
「ああ、本気だ。もし良いなら頼む」
それでも彼の目には勝利が見えているような、この作戦を信じているような、そんな風に見えた。
なら私もやらないとね。
相手の魔法の威力からして私なら耐えれそうだけど、彼はどうなるか分からない。そのためにも注意は引いとかないと。
シエルは魔法を避けながら、自分の銃まで走っていた。
「取らせると思う?そんな甘くないよ」
(ッチ、やっぱり取らせてもらえないね。武器がないと防御するのも大変だよ)
彼の作戦を信じて動くかない…!
「何か作戦が来るかと思ったら、…そろそろいいや」
アリーが魔法の出力を高め始めた。
「遊びもここまで、そろそろ倒す…ん?」
アリーは見た。絶望的展開にも関わらず口元が笑っているシエルを。
「なに笑ってるの」
「いや、ただ貴方は勘違いをしてるんじゃないかって」
「勘違い?…ふはは、何をいきなり?死を目の前に怖くなっちゃった?」
「いやそうじゃない。ただ」
「ただ?」
「死ぬのはあなただってこと」
なんだこいつ、早く倒そ────
「アリー!」
「!?」
背後から名前を呼ばれたアリーは、驚いて振り返ってしまった。そこに居たのは鈴音だった。
「これでもくらえ」
パシャ
屋上に鳴り響いたものとはカメラのフラッシュだった。え?フラッシュ?フラッシュでどう変わるっていうんだ────
「ああああああああ!目がああああああ!」
なんとそこにいたのは、フラッシュで目をやられて悶絶してるアリーの姿がありませんか。
「シエル今のうちに!」
コクッ
シエルはこのタイミングを逃さず銃を拾った。
「ヨシっ、ならあとは」
悶絶中のアリーに近づいた。やることはあとひとつ。
「ああ来るな!来るな!」
目がまだ光の影響を受けているのか涙目になっており、魔法の制度が著しく落ちている。
「その杖を離してもらおうか!」
杖に向かって特大の蹴りをお見舞した。
「!?杖…杖が!」
杖は屋上から下まで落ちていった。
「逃がさないぞ」
「……っく!」
俺はアリーが逃げないように捕まえ自由を封じた。
「離せ!離せ!」
じたばたと抵抗するが力の差があるため無駄である。
「お前を倒す方法を考えてひとつの結論を出した。お前一人では何も出来ないということ。杖さえどうにかなれば生身のお前だけなら勝算があるってことだ」
「………!!」
「さっき魔法は通じないとか言ってたが、それは杖が魔法を吸収、つまり杖を持っている自分には通じないってことだ。杖さえ無くなれば魔法は効果ありというということ。お前の言い方が妙に引っかかったから賭けてみたが、どうやらその表情を見るに当たりのようだな」
アリーは驚愕の表情をしてた。なんでバレた!?と言いたげな顔だ。実際俺もよくあるラノベのシーンからその可能性を見つけたに過ぎないが…それは置いとこう。
「鈴音、最高だよ」
「ああ、このままバシッとやってくれ」
「ま、待て!それにこの状態で撃ったらお前も巻き込まれることになるぞ!」
「?そうだが?」
「は?」
「俺は最初からこの展開を望んでたんだよ」
「(え?こいつM!?動きを封じるとしてもここまでするか!?)」
「終止符を打とうか」
シエルは魔法銃をチャージし準備が整っていた。
「ああ、かましてくれ」
「ちょっ、ちょっ───」
バンッ!
直撃。撃たれたアリーは跡形もなく消滅をした。
「ゲホゲホッ。シエルがアリーだけに当たるように調整してくれて助かった」
俺に直撃はしなかったが、爆風で後ろに飛ばされたのだった。
「もっと考えればより良い方法が見つかったかもしれないけど、時間もなかったしね」
「ああ、生きてることが勝利の証だな」
2人は笑い共に勝利を分かち合った。