やっぱ主人公はこうでなくっては
鈴音と別れた私は再び警視庁に戻ってきた。なんでも、個別で話があるとの事らしい。
「あのガキには悟られずに済んだか?」
「なんとか誤魔化してきたよ」
そう言ってくるのは先程話をしていたクリス。
「あいつは昔から妙に感が鋭かったからな。下手に嘘をつくと勘づかれるかもしれん。」
どうやら彼とは昔からの仲らしい。それにしてはやけに仲が良くないみたいだけど。
「それで、私を呼んだ理由は?」
「九条鈴音、あいつを見張っていて欲しい」
すると言われたのは、彼を見張って欲しいとの事らしい。
「理由を聞いても?」
「あいつは《魔女会》と接点を持った。しかも唐突に怪物との戦闘も行った。基本的に《魔女会》は誰にも目をつけられず、裏から影響を与えてきた。しかしこの前の事件はそうでも無い。あいつを襲った怪物、もとい《魔女会》のメンバーは表社会に被害が出るのも厭わずあいつを襲った。基本的に裏を好む組織が、な。」
なるほど、確かに今までの《魔女会》の動きとこの前起きた事件での行動が違っている。表社会に存在がバレることを顧みず、彼を襲った理由…。
「《魔女会》は彼を狙っている?」
「その可能性が高い。そしておそらく俺の予想だか、まだ彼への執着は終わっていない。おそらく近いうちにまた狙ってくるだろう。」
だから私に見張っていろと。しかし、
「そこまでの事を考えている貴方は彼を見張らないの?」
クリスも鈴音のことを見張ることが出来たはず、しかし私にそれを頼んできた理由、
「生憎と他にもやるべきことがあるんでね。あいつに時間を割くと、そちらが疎かになってしまうかもしれない。しかも警察官という立場上、表社会での活動もしなくてはならない。」
「だから仕事をしていない私に?」
「……」
「……」
…無言
「いいよ分かった。彼のことは私に任せて」
「助かった」
「では早速、彼のことについて詳しく教えて欲しい」
「今まであいつが犯した犯罪なら教えてやってもいいぞ」
「彼って犯罪を犯したことあるの?あの雰囲気からは考えられなかったけれど」
「冗談だ。ただいつも事件を持ってくるからな、たまには罰があってもおかしくは無い」
彼は普段から警察と関係があった様子。
「じゃあそろそろ行くね」
「ああ、よろしく頼む」
彼のことを頼まれたけど、実は個人的に彼にお願いが…興味があったのはここだけの話。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…っ!」
なんだあいつ!?話通じなさすぎだろ!いきなり攻撃してきたと思ったら首狙ってくるし!回避してなかったら今頃死んでたわ!
「へえ、今のを回避するんだ。思ったよりやるじゃん」
なんか褒められてるが、ちっとも嬉しくない。ラノベで読んだ回避術が役に立ったぞ。
「《魔女会》ってことはさ、魔法とか使えないのか?」
「魔法なんて使ったら全部吹き飛ぶよ」
「さよか…」
なるほど、だから剣で襲いかかってきたのか。
「でもここだとやっぱり戦いづらいね。狭くて」
「当たり前だろ。リビングは戦うところじゃない。あと狭い言うな」
こんなことを話してる余裕が俺にあるってことは、あいつは手を抜いているか。やはり本気で《魔女会》のメンバーに入れようとしているらしい。
「そもそも俺は男だ。魔女になんてなれない」
「《魔女会》って名前をしてるけど、性別に制限なんてないんだよ」
唯一の可能性があったが、やはり無理だったか。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
そういうと《魔女会》のメンバーが一歩を踏み出した。
「…消えた!?」
踏み出した瞬間、目の前から居なくなった。あたかも瞬間移動をしたかのように音を立てずに。
「どこだ?どこにいる?」
俺は必死に当たりを見回したが影すらなかった。
「…っは!?」
突如後から視線を感じ振り返ると、天井に奴はいた。
「ようこそ、────《魔女会》へ」
そんなことを耳にした瞬間、反応できない速度でこちらへ向かってくる。
(あ、終わった)
ここで俺の意識は絶たれた。そう思ったが、
パリィン
「がはっ!?」
窓ガラスが割れた音がした直後、横へ吹っ飛んでいくやつの姿が。
「君は本当に《魔女会》に好かれてるわね」
そこに立っていたのは、魔法銃を持った何度観ても美しい容姿をしたシエルの姿が。
「シエル……助かった」
「探すのに時間がかかってしまってね、もう少し早めに来れればよかったんだけど」
「いや、1番いいタイミングだった」
「……もしかしてどM?」
「んわわけあるか」
つい口を滑らせてしまったがなんとか耐えれたようだ。
「…っ、痛いな、全く」
そう言うとフラフラしながら立つ《魔女会》のメンバーが。
「鈴音は私の後ろへ」
俺はシエルの後ろにまわった。
「貴方、誰?私の邪魔をしないで」
「《魔女会》のメンバーに入れさせようとしてたんでしょ。そうはいかないよ」
「そこまで知ってるのか。もしかしてこの前怪物を葬ったのは貴方だね」
合致した奴はどこから出したのか、先端が丸い近未来的な杖を出した。
「貴方は危険、《魔女会》を脅かす」
そんなことを言って前に杖をかざした直後、杖を中心に辺り一面が眩しくなった。
「貴方はここで倒しておく」
「…ここは」
「屋上だね」
辺りが落ち着き見渡すと、屋上にいた。どうやら俺たちを屋上へ転移させたらしい。
「私はあなたを倒し、彼を連れていく」
そういう彼女は凄まじい殺気を放っている。
「そう、なら私はあなたを倒す」
彼女に対峙するシエル
こうして、最後の戦いが幕を開けた。