ふたりでイチャイチャ
「いやー楽しんだわ」
「ね、ちょっとおじさんには申し訳なかったけど……」
「落とすたびに顔が白くなってたからな。商品は全部返してその代わりに遊技代はタダにしてくれたのは助かったな。結構使っちゃったし」
「僕に感謝してもいいよ?」
「お前がおっちゃんに謝ってきたら感謝するよ。やりすぎだって」
「まぁ、僕だってあそこまでなのは想定外だったからね」
確かにそうかもだけど、おっちゃん見て可哀そうになってきちゃったからな。
「さて、次どうするか」
「ねー提案なんだけどさー花火の後灯篭流し見るわけっしょ?なら灯篭流しまで自由行動するっていうのはどー?」
友達同士で祭りに来て別行動するのには忌避感があるけど、「カップルで祭りを楽しんだらどう?」っていう鳳花の配慮だろうし、個人的感情で言えばありがたい提案だな。
友達とワイワイするのも楽しいけど、彼女……百合と2人で祭りを楽しみたい気持ちもある。それはみんなも同じだろうし色々な思惑があるようだからな?ここは乗らせて貰おう。
「じゃあ花火が終わり次第またここ集合にするか」
「おっけー」
「じゃあ行こうか百合」
「うん、みんなまた後で!ありがと鳳花……がんばってね」
「私達も行きますわよ!」
「ん、じゃね」
さて、どうしようかな。アクティブ系のことはやったしゆっくりするのがいいか、となると……
「よし、行くか」
「どこに行くの?」
「地元民しかしらない花火スポットがあってな。騒がしいほうが好きなら普通の方でもいいんだけど百合も落ち着いた雰囲気の方がいいだろ?」
「へぇ、そんなところがあるんだ。イチャイチャできるね?」
「まぁ、そうだな」
他の人もいるだろうけど暗いし花火が始まればみんなそっちを見る多少なら問題ないだろうな。
「ねぇ彩雫くん……手つながない?」
「え、いや、でもばあちゃんとかも来てるし知り合いもいるからな」
「むぅ」
「ま、いいか。ほら、行こうぜお・姫・様?」
「うん!」
家の中じゃよく手をつないでいるはずなのに緊張する。やべ、手汗かいてないよな?大丈夫なはずだ。
屋台のおっちゃんの野太い呼び込み声、楽しそうにはしゃぐ人々、夜のとばりを照らす提灯の光、どこからか聞こえてくる祭囃子。これらから作られる雰囲気もあるんだろうけど、そんなことが気にならないくらい百合がきれいで、めちゃくちゃ可愛い。
さっきまでももちろんきれいだったし、可愛かった。でも今はなんか気恥ずかしくて直視できないし、たまにこっちを見て微笑んでくる百合を見て心臓が破裂するんじゃないかってくらいドッキドキしてる。浴衣か?浴衣フェチなのか俺?!いや、ならさっきみんなで居たときもこうなってるはずだ!
「彩雫くん、さっきから静かだけど大丈夫?」
「お、おおう!だいじょびだもんだいない」
「ふふ、彩雫くん可愛い」
「ぐぬぬ」
百合め絶対に俺の心理状況を分かっていやがるな?俺のことならなんでもわかると豪語する百合だもしかしたらこの状況も百合に作られたものかもしれない。だが、いつまでもやられてばかりの俺じゃないぞ?
「可愛いのは百合だろ?」
「彩雫くんありがと」
な、効いていないだと?!
「ふふ、わたしそんなにちょろいと思われてるの?」
「いや、実際ちょろ、いや、なんでもないです」
いまは俺の方がちょろいからな、どんな反撃を食らうかは想像に易い。心のうちにとどめておこう。
「むぅ、私ちょろくないもん。そんなにちょろいと思うなら彩雫くん、私にキスしてみて?そしたらわかるでしょ?」
「そ、そんなの余裕に決まってるだろ!?家じゃいつもしてるし?」
「じゃあ、ほら早く、ね?」
「お、おう」
行け、行くんだ俺!いまさらただ少しキスするだけで緊張することもないだろ?いつもしてるじゃないか。なのにどうして百合まで残り数センチというところで止まってる?手足の感覚もなくなってきた。まさか、百合が無量空処的な能力に目覚めたわけじゃないよな?
だめだ、思考がまとまらない。いったん落ち着こう。
「ってなんでこんなところでキスしようとしてんだ?」
「しないの?」
「……したい。いーやだめだ!ここは我慢する!」
「もう彩雫くんは厳しいんだから」
「俺だって耐えるのに苦労してるんだからな?落ち着いたらお腹すいてきた」
三大欲求の1つが気にならなくなったからな、その分他の欲求が主張してきたんだろう。
「わたし、綿あめ食べたい!」
「いいねぇ、ならちょっとしょっぱいのも欲しいな。どれトルネードポテトでも買うか」
「とるねーどぽてと?」
「あれ、百合知らない?なんかなうで若い女子高生の間で流行ってるらしいけど。結構高いからこういう機会じゃないと食べないし」
お祭りだと値段高くても気にならないからな。ここで気にしてたら楽しむもんも楽しめない。というわけで買いに行くか。んで、早めに花火を見るためのとっておきの場所に移動しますか。ゆっくりご飯食べたいし。
「ほい」
「ありがとう、わたあめにも色々な味があるみたいで驚いちゃった」
「全部混ぜた宇宙綿あめなるものもあるらしいぞ」
「……気になるけど、私はこのイチゴ味の綿あめがいいかも」
「ま、懸命だな」
いろんな味がするのも微妙だろうしあれ、余りにも大きくて最後まで食べようとすると胸焼けしてくるからな。
「トルネードポテトも食べるか?はいあーん」
「あーん……美味しい!薄く切られているからほくほくなだけじゃなくてぱりぱりしていて人気になるのもうなずけるかも」
「そりゃあよかった」
「それにしてもすごくいい場所……」
「だろ?問題点はちょびっと遠いことだな」
川で花火が上がるがここは山だからなある程度歩かなきゃならない。でも、静かで周りも暗いため星がよく見えるし、何より空と近いから花火も大きく見える。彼女と来るなら最高のスポットだ。
「それで……さっきは人前だったから出来なかったけど、ここなら?」
「ん?なんのことだ?」
「さっき、キスするとき『ここは我慢する』って」
「あぁ……え、何あの話まだ続いてるの?!」
「もちろん!彩雫くんここなら人もいないよ、ね?」
「……確かに」
「だから我慢する必要なんてないでしょ?さぁ!」
はぁ、無駄に行動力あるわ、見通しも良いわで百合に勝てる気がしないな。なんだかんだ言って百合に押されてばかりだ。
でも最後はなんだかんだ俺が決断してるんだからこれがまた面白いよな。付き合うときだってそうだったし、結局今も決断権は俺にある。
「百合こっちむいて……」
「彩雫くん……」




