皆で帰省
「ただいまー」
「お義母さんお久しぶりです」
「おばあちゃん久しぶり、ごめん急に大人数で」
「「「「「お邪魔します」」」」」
色々と落ち着いたため、みんなと前々からみんなで行こうと話していた叔母の家に来た。
「あらまぁ、別嬪さんばかりねぇ」
「おば様初めまして、彩雫くんとお付き合いさせて頂いております八重百合とお申します」
「ご丁寧にありがとう。今日はゆっくりしていってねぇ。と言っても周りに何もないから、ゆっくりするしかできないとは思うのだけれど」
「いやいや、それがいいんじゃん。というか、おばあちゃんだってそれが好きでここに住んでるんでしょ?」
車でコンビニまで15分、駅までは30分、夜はイノシシが出る。と言ったように自然が豊かなのもまたいい所だ。
「私はお爺さんについてきただけだからねぇ」
「そのおじいちゃんは?」
「今は畑仕事でもしてるんじゃないかねぇ。孫が彼女を連れてくると聞いてソワソワしていて邪魔だったから畑に追いやっちまったからねぇ。呼んでくるからくつろいでてねぇ」
「いや、いいよ俺が呼んでくるわ」
「じゃあ私も行く!」
「ん、行く」
「じゃーうちもー」
「んじゃあみんなで行くか」
ここら辺を歩くだけでもいい気分転換になるしな、簡単な観光ついでだ。
「あら、いいのぉ?それじゃあうちでお茶でも用意しておこうかねぇ」
「いや、遅くなるかもだしいいよ」
「あーお父さんのことだしそうかもね。じゃあ荷物はこっちで降ろしておくから子供は子供らしく遊んできなさい」
「ん、ありがとう」
「彩雫くんのおばあちゃん優しそうだった」
「優しいぞ。俺は怒ってる所見たことないし」
「そうそう、僕も見たことないな」
「そういえば、かえでっちは来たことあるんだっけ?」
「うん、あるよ。本当にいい所だからたまに彩雫についてね」
前来た時も花火大会の時だったな。
おばあちゃんの家の近くで行われる花火大会は結構伝統があるらしくいつもは人が居ないこの集落にもちょくちょく人が居る。
「ねぇ、彩雫くん、畑って叔父さん農家の方なの?」
「いや、そういうわけじゃなくて、老後に趣味でやってるんだよ。一応どっかしらに卸してはいるみたいだけど本職ってわけじゃないぞ。ってほら、その畑が見えてきたぞ」
「ん?見える範囲、全部?」
「全部だぞ」
「そうなんだ、え、彩雫くんこれ本当に趣味でやってるの?」
「そうだぞ」
「これは趣味の範疇を明らかに超えてますわよ?」
そうなのか?確かに他の畑と比べると広いけどな……
「趣味で合っとるよ」
おじいちゃんもこう言ってるしな。もちろん俺が言いくるめられてるよ可能性もある……って
「おじいちゃん!」
「遠いとこからよお来たな、待っとったぞ?」
「いやいや、そんな遠くないだろ」
「ならもっと気軽に来んかい」
それはごめん。
「それよりも、その、か、か」
「か?」
「彼女さんはどちら、か?」
「あー紹介するよ、こちら」
「八重百合です。彩雫くんとお付き合いさせて頂いております」
「お、おぉ本物!ごほん、失礼。私は三矢新治と申します」
「そんで、楓は知ってるだろ?その右から順にギャルが高宮鳳花、ちっこいのが椎名杏華、金髪ツインテ縦ロールが一条・セントレア・シアヌス」
「さいだっちのおじいちゃんよろ!」
「ん、おじいちゃんよろしく」
「こら、もう少し礼儀というものを!ご紹介に預かりました一条・セントレア・シアヌスですわ!是非セントレアとお呼びください」
「お、おおおおお!聞いたか彩雫!こんな可愛い女の子がおじいちゃんと!私のことをおじいちゃんと!あぁ、夢が叶ったぞ」
同じ男として気持ちは分かるけど、友達の前だからね?ちょびっと恥ずかしいな。身内の恥晒してるみたいで。
「大丈夫だよ、彩雫くん。まさに彩雫くんのおじいちゃんって感じだから」
「ねー、想像通り的な?」
「申し訳ないな、取り乱してしまった。詫びと言ってはあれだが、せっかく来てくれたことだし収穫して行かんか?」
「そんな……いいんですか?」
「もちろんだとも。この時期だとトマトにきゅうり。あとはトウモロコシとさつまいも。どれがよい?いや、この際だ全部やろう」
「やったーおじいちゃんまじ楽しみ!」
「そうだろう、そうだろう!さぁ早速畑に行こう!」
「これは立派なトマトですわね……本当に趣味でやってますの?」
「ついつい凝ってしまう性分なもんで」
「流石は、彩雫の、おじいちゃん。彩雫と、そっくり」
まぁそうかもな。俺はゲームオタクでおじいちゃんは菜園オタク。
「キュウリもすごい。いぼが凄いし、色もいい」
「きゅうりは自信作なものでね。土は水はけがよく、通気性もよいものを使い、そこに窒素、リン酸、カリを補充するために」
「おじいちゃん、それくらいで」
「おっと、すまんすまん。もし良かったら、そのまま、いや、そこのホースで汚れととげを取って食べてみて欲しい。気になるなら強制はしないが……」
「ん、食べる……美味しい!すごい、瑞々しい。味も濃い」
「ほんとう!すごくおいしい。新鮮なのもあるかもしれないけれど杏華が言った通りきゅうりならではの味をしっかりと感じれられる」
「おぉ、嬉しいね。寿命が10年は伸びそうだ」
「これ、買えないの?」
「売ってはいないもんで、一応料理人だったり知人には卸してはいるんだけども、買えはしない。が、欲しいなら上げるけ、好きなだけ持ってけ」
「それは、嬉しい。いっぱい貰う」
「……興味本位の質問なのですが、その卸している先を窺ってもよろしいですわ?」
「ああ、えー昨日は食事処食戟さんと大道寺さんが来よったぞ。今日は川端河童くんが朝にきゅうりを受け取りに来とったな。と言っても分からないと思うが」
「……本当に趣味でやってるんですわよね?」
「うん、やっぱ俺は全く分からないけど、セントレア知ってるのか?」
「川端河童さん?は存じませんが、食戟さんはこの間調理対決で真っ先に勝ち抜けした美食会では有名な方で、大道寺さんは美食四天王の方ですわよ?」
「あ、どっちとも分かるわ」
てか、川端さんも知らないけど知ってる気がするし、あれでしょ、人魚と仲がいいきゅうりオタク河童の方でしょ?
「なんにせよ?そんなやばめな人達がお客さんにいるとかさいだっちのおじいちゃんもやばいってことっしょ」
「俺はただ好きなことに全力で取り組んでただけなのだが、喜んでくれる方がいるというのは存外に嬉しいものでな。より一層励んでしまう。そういうものだろう?」
「だから、趣味なんですね」
「おうとも」
俺もこんなもんなんだなぁって深く考えていなかったけど、確かにおじいちゃんの送ってくる野菜はめちゃくちゃ美味かった。こういうのって家族だからこそ気が付かないものだよね、近すぎてそれが常識になっちゃうから。




