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告白

「おっす!いやぁ、あんな展開になるなんて思ってもなかったわ」


「おはよう、あんな展開?」


 朝、楓と顔を合わせるや否や自身の上がりに上がったテンションから繰り広げられるゲームの感想をぶつける。


 精霊王、なにか隠しているとは思っていたがまさか主人公がこんなことになるなんてな。タイトル回収がここでされるとはいやはや驚かされたわ。


「ふぅん、僕もやっぱりやってみようかな」


「マジでおすすめ出来るわ。ルートもいくつか用意されてるはずだし俺から話聞いてても楽しめると思うぞ」


 俺も他のルート早くやってみたいな。とはいえ……


「今日からイベントか……しばらくはFFやる時間は無いな」


「あーそういえばそろそろだったね」


「そうそう。モンハルの肉祭り、明日からだからなぁ」


「モンハルの肉祭り?それは一体どういうものなの?」


「MonsterHuntingAnotherLife通称モンハル、名前の通りモンスターを狩るゲーム何だけど、明日からギルド対抗でモンスターを多く狩ったほうの勝ちって言うイベントが始まる……って八重さんいつの間に」


「むぅ、私が居たらダメだっていうの?」


「いや、全然。もしかして八重さんモンハル興味ある?イベント中は無理だけど今度貸すからやってみる?」


「やる!」


 そう言いながら、自身の感情のままに彩雫の腕をとる。好意を寄せている相手から遊びのお誘いが来たのだ。教室の一段階下がった温度とは反対に八重のテンションが上がってしまうのも無理は無いだろう。


 もちろん男子高校生である彩雫も学年1とも言われる女の子と遊ぶ約束をしただけでなくボディタッチまでされて舞い上がらないわけが……


「いやぁ、まさか八重さんが興味持ってくれてるなんてな」


 普通ではなかった。八重百合、好意伝わらず。


「はぁ、これだから彩雫は」


お?楓がなんか呆れた顔でこっち見てるぞ、なんかイラつくからあとでどつこう。そんなことよりも……


「彩雫くんがそんなこと言ってくれるなんて、思ってなかった!」


「いやぁこっちもだよ、噂は噂だな。そういやかばんの中に……」


 昨日しっかりと洗ったからな。万が一にも汚れが残ったりしないようにいつもより念を込めて。


「ほい、弁当箱。昨日忘れてっただろ?洗っておいたから」


 ん、なんか教室寒くなった気が。そろそろ夏だし冷房の点検でもしてるのか?


「ありがと!じゃあそろそろSHR始まるし教室戻るね、また後で!」


 あ、今日はちゃんと歩いて出て行った。思い返してみると毎回走り去っていたし。


「お、おい。今日はもう時間ないぞ?裁判とかしてる余裕ないからな?」


 じわじわと距離を詰めてくるな。あ、止まった。なぜ?


「あはは、皆席に座ろうか」


 異常に笑顔な楓が怖いです。



 昼休み、ルンルン顔で教室に入ってくる八重さん。昼休みどころか授業間の休みも毎回来たため教室の皆も慣れた様子であぁまたかと自分の作業に入る。


 俺が言うのもなんだけどさ……慣れるの早すぎね?裁判とか起こして騒いでたやつら今もう普通に勉強してるもん。というか4限家庭科だったよな?そんな熱心にノート取ることあるか?


「今日もお弁当持ってきたから一緒に食べようね」


「いや、大丈夫って言ったのに……というか、楓も一緒に食べるだろ?」


「え、僕いやだよ?」


「ナンデウラギッタンディスカー!」


「いや目立つじゃん?」


「そうですか。それじゃあ彩雫くん2人で食べよ?」


「いや、うーん、でもこいつすました顔してやがるけど案外寂しがりやだからな」


「2人で食べよ?」


「うんうん、彩雫俺僕もそっちの方が面白いから気にしなくていいよ。本当に」


「そうそう俺らのことなんて気にしなくていいからさ!」

「っく三矢相手なら手を引くぜ!」

「ハゲが加速するなぁおい!」


 元からお前らなんて気にしてねぇ。というかハゲ云々は知らん。


「ほら!みんなもそう言ってるよ?ね?」


「はぁ、わかったわかった。ここじゃうるさいし、さっさと行こうぜ。あ、楓わかってるよな?駄目だぞ」


 と言っても絶対覗き見しに来るんだろうがな。こいつ楽しんでやがるからな。目を見たらわかる。





 屋上


「はい、じゃあお弁当」


 昨日と同じく手作り弁当を手渡してくれる。こういう仕草や休み時間話をただ聞いているだけでもどこか気品さを感じさせる。八重さんから話しかけてくれなければ俺もそのオーラに気圧されていたかもしれない。でも、そんなオーラ漂わせた八重さんが……


「休み時間毎に来てる……」


 心の声がついつい漏れてしまったが、八重さんが昼休みにご飯食べるどころか毎休み時間、1限終わりも、2限終わりも、3限終わりも俺らのところに来るのは……まぁ、客観的に見て普通のことでは無いだろう。


「駄目?」


「駄目というか……」


 教室で友達いないの?とか、なんでわざわざ俺らのとこに話しに来るの?何か深い理由があるのか?とか言えるわけない。


「心から話せるような友達はいなくて」


あ、駄目だ千年眼(読心術)持ってる。


「あーなるほどね。つまり噂の良く聞く完璧超人で高嶺の花的な感じのやつは外面だったと?」


「外面……何事も難なくこなし皆に好かれる完璧な優等生。彩雫くんこちらの私の方が良いですか?」


 俺がずっと拒否ってたせいかどこか不安げな顔をして。どこか見定め……期待するような目でこちらを見て聞いてくる。


「俺は……」


 正直その外面の八重さんを全然知らない。だけど……


「今の方が俺は話しやすいよ。それに外面という仮面を付けていようが八重さんには変わりないでしょ?仮面に操られるならともかくね」


「彩雫くん……」


「弁当断ってるのだって別に俺だっていやなわけじゃないし、なんならお前の弁当マジでうまいから楽しみではあるんだけどさ……その、本当に何もできないからな?」


 与えられるだけの関係というのは人によるかもしれないが俺は気を使う。こっちも何かを与えてこそ中立の関係でいられると思うからだ。


「私が、私が―――彩雫くんが好きだからやってるの!」


 長い髪をばさりとはためかせばさりと立ち上がり勢いよく言う。


「え?」


 今、彩雫くんが好きと……はっきりといった……な。昨日はもしかしたらという言葉だったが、今のは鈍感系主人公でもその気持ちを認識出来るはっきりとした言葉(俺に対する告白)


「あっ、いや……ううん、私はあなたが―――好き。彩雫くんのことをもっと知りたい……もっと、もっと!私の頭の中に彩雫くんが常にいるの。彩雫くん私と付き合ってください!!」


「……」


 正直告白される可能性を考えなかったわけじゃない。だってそうだろう?普通好きでもない相手にお弁当を持って行かないし、露骨に態度を変えることもない。俺自身は恋愛経験なんてないが楓のとなりで見ていたのだ。それくらいわかるし鈍感系主人公はフィクションの中だけの存在だ。


 だから、こうなった時のことを真剣に、それはもう真剣に考えていた。


 そう、答えは既に用意されている。


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