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崖と壁


『なんか、よう?』


『ガキは大人しく帰んなって言ってんだよ』


『ガキじゃない、し、帰らない。帰るのは、そっち。私は絶対、優勝する』


『ほぉ?言うじゃねぇか。甘ったれたガキなら怪我する前に帰そうと思ってたんだがな?嬢ちゃんはバカなガキだったようだ』


『そっちこそ、ただのヤの人かと思ったら、ただのお人よし』


『っは、お人よしか。なら、お人よしから一つ教えてやるよ。石が飛んできてんのはわかんだろ?だがそれだけじゃねぇ。約100本丸太の橋がある。だが、この丸太……それ以外はやめとけ。よくねぇ気配がする』


『ん?どうしてわかる?』


『修羅場をいくつも経験して来たからな、死の気配がなんとなくわかるってだけだ。そんじゃ、邪魔したな、頑張れよ』


「とか言ってるけど、石は偽物だし、崖から落ちてもスポンジで守られるんだよな」


「彩雫くん、この人は知らないんだから可哀そうでしょ?」


「実際この人の感は死の気配かどうかは知らないけど当たってるから。ほら、見て?」


お?うわぁ、丸太に油塗ってあるじゃん、こっちのは途中から細くなってるし、折れているのもあるな。でも、ヤの人と杏華が渡っている丸太には何もない。


【脱落者続出だー!】


【うふ、滑って落ちたり、一か八か、となりの丸太に飛び移ろうとして失敗する。見ていて面白いわねぇ】


【一応これ、娘さんの伴侶を決める大会ですからね?】


【わかってるわよ。ただ、脱落者はいくら笑ってもいいでしょう?】


【そうですね、盛大に笑ってやりましょう!さぁ、笑われないためにも頑張れよ?】


『ただ石をかわしながら、丸太を渡るだけ、余裕』


『けっひっひ、あいつは厄介そうだ、ここで……』


『はっ、ヤの人、危ない!』


『けっひっひ、あーつまずいちまった』


あいつ、わざとヤの人を落とそうと!


『ッ!』


『させない!っく!』


なっ、杏華が落ちていくヤの人の手をつかんだ?!それは流石に無茶だろ、体重3倍くらいあるし丸太の上だぞ?杏華が落ちかねないぞ?


【おっと!数多くいる出場者の中でも珍しい女性、それも少女が何と!今にも落ちそうなヤの人を腕一つで支えています!】


【あの子はセントレアちゃんの、お友達の……】


【何か言いました?】


【いえ、彼女には頑張ってほしいわね】


【だが、流石に腕がもう限界そうだ!手を離さないと自身まで道ずれになってしまうぞ?】


そう分かっていても、杏華はここで見捨るなんてことしないだろう。


『ガキ、手を放せ』


『離さない、さっきの礼が、ま』


『ガキ、いや嬢ちゃん……!』


『あ、まずい。もう、きつい。これはお腹に負担が、このままだと、将来、子供が産めない体に。男の子1人と、女の子2人の、家庭を築く、私の夢が』


『こ、怖いぞ?!降ろしてくれ、今すぐに!』


『パっ!』


『っは?!』


『お嬢ちゃん、よく頑張ったな。あとは俺らに任せな。ちょっと横にずれてくれ。引き上げるぞ?せーの!』


【なんと!丸太で後ろから続いていた人も救援に入ったぞ!】


『助かった、礼を言わせてくれ』


『ん、さっきの礼。それに結局、何もできなかった』


『俺は嬢ちゃんに影響されただけだからな、礼はいらないぞ。俺たちは敵同士だろう?』


『……そうだったな』


『ん、これで、貸し借りは、チャラ』


【敵同士にも関わらず救いあう、素晴らしい光景ね】


【個人的にはこういう人が優勝してほしいものですが、このセントレア争奪バトルロワイヤルに情は不要!すでに多くの人が先に進んでいます!】


途中はどうなるもんかと思ったが、何とか崖越え成功したな。


【さぁ!続いての障害は!そり立った壁だ!】


うん、どこかで見たことある。さっきはたけし城、次はサスケってか?


「いや、流石に先頭集団は簡単に超えていくよな」


「まーそりゃそうっしょ」


「でもこれ結構高いし、杏華まずくない?」


「……やばいな」


【続々と壁を越えていく!おっと?一度壁を越えた修一選手が戻って来たぞ!こ、これは!】


【詰まっている人を助けて回っているわね】


「テレビで見た修一の通りね、ちょっと暑苦しくて苦手かも」


「俺は好きだけど。でもまぁ、こういうのは少し違うよな……っと杏華も付いたみたいだな」


『……はぁはぁ。何とか、ここまで来れた、でも、これは、サスケ?てい!……無理。でも、セントレアのためにも、超える!』


「いけ!あー惜しい!」


「杏華、頑張って!」


「やっぱり、運動神経ってよりも身長が無いのがきつそうだね」


『はっ!……てい!……とう!』


っく、やっぱり厳しいのか?いや、相棒なら何とかしてくれるはずだ!


『お嬢ちゃん、手を貸そう!』


お、修一が杏華にも声をかけたか。


『必要、ない。敵から、受ける、施しはない』


『遠慮するな、さぁ!』


『いい、自分で、乗り越える』


『ふむ、それは失礼!じゃあ、頑張ってくれ!』


修一、お前はいい奴だ。今だってチャレンジをし続けているが超えられない人の手を引っ張って助けている。でもな、それをよしとしない人種もいるんだよ。見てる感じ、杏華以外にも意地を張ってか断ってる人が多いけど。


【さぁ100人ほどが現在そり立った壁で躓いております!】


【あら、残ってるのは全員デブじゃない】


【そういう障害ですからね!】


なるほど、本来はそのための障害なのか。


【ん?あれは……】


【どうしました?おっと、さきほどの少女はいまだクリアできていないようだ!他の人はもう既に諦めているようだが、一人、勇敢にもチャレンジを繰り返す!】


『……てい!』


【だがしかし、壁には手が届かない!】


やっぱり厳しいのか……杏華!


『てい!……無理』


『でゅふ、お嬢ちゃん、そろそろ諦めたらどうだい』


『そんな選択肢、ない』


くそ、モブおじが変に絡んでくる!お前らも頑張れよ!


『でゅふ、そんなこと言ったって手が血まみれじゃないか』


『そんなの、諦める、理由には、ならない』


『でゅふふ、強情なお嬢ちゃんだ。でゅふ、おーい、皆良いか』


『『でゅふ!』』


な、モブおじ何する気なんだ?!


「な、なんか太ったおじさんたちがピラミッドを作ってるね」


「だな、下の人大丈夫か?顔面地面についてるけど」


「まーその分支点が増えて安定してるし?」


「でも何のために?あ、まさか!」


『でゅふ、僕たちを踏み台にして超えるんだ!』


『でも……』


『僕共はあなたの心意気に惚れました。だから、進んで欲しい。それじゃだめですかな?』


『ん、わかった。ありがと』


モブおじ……いいやつらじゃねぇか。


『臭い』


『でゅふふ、それは申し訳ない!』


杏華、肉の屍を超えて行け……

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