旅行2日目
「ふあぁー眠い」
「彩雫くん、凄く張り切ってたから」
「ん、寝たいのに、寝かせてくれなかった」
「ですわ、痛いのもありましたわ……」
「彩雫に手加減って言葉はないからね。にしても、もうちょっと優しくても良かったと思うけど」
「それはすまん、ちょっと意地になってたわ」
昨日の夜、寝る前に始まった運動会、種目は枕投げ一種のみ。杏華があまりにも強くてついつい熱中してしまった。投げるのはむしろ弱いくらいなんだけど、いくら投げても避けられるからその間に他の人に狙われてやられるんだよな。集中砲火してもなんか当たらないし。おかげで夜遅くまで遊んでしまった。
え?それ以外なんもなかったよ、うん。朝起きたらみんな雑魚寝してたからね、何もなかった。
「にしてはゆりっちなんか異様にてかってるし?」
「絶対何かしたね。あと、見えちゃいけないものとかもたくさんあったと思うんだけど、それすら気がついてないのって男としてどうなの?」
「かえでっちがエロいだけじゃねー?」
「いや、気が付かない彩雫が異常なんだよ」
「だよねー」
「なんか言った?」
「いや別に」
なら、いいけど。
「皆さま、おはようございます。朝食をお持ちしました」
「お、確かにいい匂いが……やべぇもう目覚めたわ」
「ん、今は睡眠欲より食欲」
「セバスありがとうですわ」
さてさて、匂いじゃわからないがどんな料理なんだ?
「本日の朝食はオムレツでございます」
オムレツ、ふむ、朝ごはんのテンプレだな。ちょっと拍子抜けだけど。もっとなんじゃこりゃっていうのかと思った。でも、何だこの美しいフォルムは。
「ふっくらしてて、ぷりぷりしてて、美味しそう」
「いやーセバスさんさすがっしょ」
「セバスの料理はおいしいに決まってますわ、頂きます」
「「「「いただきます」」」」
うめーなんかダシが入っててうめー。
うん、脳内が幸せ物質に包まれるくらいうまい。単純な料理なはずなのに、俺は今感動を覚えている。
「うぅ、私のより美味しい……」
「ゆりっちが負けを認めるほどのオムレツ……そりゃ美味いに決まってるっしょ」
「僭越ながら卵料理は私の得意料理でして」
「ですわね、セバス以上の卵料理は見たことがありませんわ」
「ありがとうございます」
一条家のご令嬢が言うくらいってことは世界一の卵マスターと言ってもいいわけで……え、今俺たち卵料理の頂点食べちゃったってこと?わお、もう全部食べちゃったよ。もう少し感慨深く食べたがったな。
「で、今日の予定はどんな感じ?」
「もちろん、海行きますわよ!そのための旅行じゃないですの」
もとは杏華の海行きたいって提案から始まった旅行だ。
「それはそうだな。と言っても昨日楽しんだっちゃ楽しんだろ?」
「いやーさいだっちまだ忘れてるものがあるっしょ?」
「ん?」
「マリンスポーツしてないっしょ!」
「確かに!」
「流石ですわね……というわけでマリンスポーツしますわよ!」
「「「「海だー!!」」」」
「この光景昨日も見た気がする」
「ゆりっちー細かいこと気にしてちゃ楽しめないっしょ」
「ですわ!ということでバナナボートしますわよ!」
「あー、細かいことで悪いんだけどさ、そのバナナボートを引っ張る水上バイクって運転するのに資格いるよね」
「大丈夫ですわ!セバスが持ってますわ!」
「はい、安心してお楽しみください」
一家に一台セバスさん。
「じゃーん、これがバナナボートですわ!」
「お、これか。確かにバナナだな」
「ねぇ彩雫くん。バナナボートってこれに乗るの?」
「そうそう、乗って落とされないように何とか耐えるって遊びかな」
「危なくないの?」
「その点は安心してくださいまし。一条家の全力を持ってリスクを無くしてますわ!」
なら安心だな。
「さっそく、やる」
「いえーい!やってみたかったんだよねー」
「高宮さんやったことなかったんだね」
「中々タイミングがなくてねー。かえでっちは?」
「僕はあるよ」
「ほー、ということは最後まで掴まってられるってことっしょ?」
「任せてよ、ほら彩雫たちも乗って」
このサイズなら全員乗れそうだな。よいしょっと、意外とバランス悪いな。
「きゃ」
「大丈夫か百合。まだ落ちるには早いぞ?しっかり掴まっとけよ?」
「うん、彩雫くん掴む」
「ボートの紐掴んだ方が……まあいいか」
百合がそうしたいならね。それになんかカップルみたいじゃん?
「それではスタートいたします」
座る順番は前からセントレア、杏華、鳳花、楓、俺、百合となっている。
「海風が気持ちいいな」
「うん、意外と楽しいかも」
「ん、でもやっぱり物足りない」
「ですわね!」
お、スピード上がってきた。ここからが本番か。
「ぷは!凄い勢いで水が掛かりますわ……」
「ん、気持ちいい」
「うぉ、めっちゃ揺れるじゃん!こりゃ楽しいわ」
「おっとっと、ふふっ楽しいかも」
カーブで慣性が掛かったのか百合が抱き着いてくる。可愛いかよ。てか、普通に考えたら後ろの方が慣性が乗って揺れるよな。前は前で水がダイレクトでかかるし大変そうだけど。
あれ、つまり真ん中が一番安全じゃん。真ん中に楓堂々と乗ってるけど?
「おーっほっほ、まだまだですわよ!」
さらにスピード上がってきた!これは……キツイ。水しぶきで目開けられないし、慣性に引っ張られて体が持ってかれそうだ。でもまだ耐えたぜ?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
おい、楓のやつ落ちたぞ?!
だが、俺も声を出している余裕はない。口を開いた瞬間に楓と同じ境遇をたどるだろう。だって水が凄いんだもの、口がおぼぼぼってなるよ?
「ふぅ、直線だと多少楽だな」
「誰が落ちましたの?」
「楓」
「ふふっ、経験者とか、言ってたのに」
それな?
っと、またカーブが来るぞ?こりゃやばい、一人ならまだ耐えられるけど、百合の慣性も加わってッ
「うぉお!」
「きゃあ!」
『バッシャアア』
「ぷはぁ!百合大丈夫か?」
くっそぉ、耐えきれなかった。
「うん、すごい勢いだったからちょっと痛かったけど大丈夫」
「それな、でも一瞬空飛んだ感じがして楽しかったな」
「ん、楽しかった、でも悔しい」
「杏華も一緒に落ちたのか」
「大丈夫、ケガしてない?」
「ん、大丈夫」
今残ってるのは鳳花とセントレアだけか。俺に引っ張られて百合は落ちちゃったが運動能力高い2人が残ったな。
「どっちが残るか」
「私は、セントレア、負けず嫌い、強いと思う」
「俺は鳳花だな、やっぱギャルは強いだろ」
「私も鳳花かな」
さてさて、どうなるか。
流石にさっきのがトップスピードだったみたいでスピードは上がっていない。だが、動きは苛烈さを増してきた。正直めっちゃ楽しそう。さっきまではカーブするくらいだったけど、今は蛇行したりブレーキが少しかかったりとバリエーションに富んだ動きをしている。
「よく落ちないな、すご」
「ん、凄い握力と、バランス」
そのUターンはまず、あ。
「「キャー」」
同時着水したな。よし、合流しよう。
「うぅ、引き分けでしたわ」
「いや、2人とも勝者でいいだろ」
「ん、あんな激しいの、耐えられない」
だな。セントレアは少し不満そうだけど。どれだけ勝負に飢えてるんだよ。
「」
「てかさ、ぷっ!あっはっは!かえでっちまじ即落ちしてたっしょ?」
「それな!あいつ真ん中でお姫様みたいに守られてたのに即落ちですよ?どうなんだろうねぇ?」
「ぐふっ!」
「やめて、もう月城くんのライフはゼロですわ!事実ですが!」
「ぐはぁ!」
「ん、経験者とか、イキってたのに」
「ぐべぼほぁ!」
人間から出ちゃいけない声出しながらふきとんでったぞ?なむさん。
「よし、もっかいやるか!」
「さんせー!」




